がんの闘病記ではない! ひとりのアラサー女子の生きざまを描く

ダ・ヴィンチニュース / 2014年2月12日 11時40分

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『彼女失格 恋してるだとか、ガンだとか』(松さや香/幻冬舎)

 決してがんの闘病記ではなく、恋愛や仕事の中で自分の生き方を模索しつつ自分らしい生き方を見つける、強い女性が主人公のエッセイ。『彼女失格 恋してるだとか、ガンだとか』(幻冬舎)は、著者の松さや香さんが『ELLE ONLINE』(ハースト婦人画報社)に掲載していたブログを書籍化したもの。『彼女失格』なんてタイトルがついているけれど、読み終わる頃には、こんなにたくましい女性はいない。自分が男だったら、こんな女性と付き合いたいと思ってしまうだろう。

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 29歳の時に乳がんを告知されてしまう、松さん。彼女はそのちょうど1年前に、父親をがんで亡くしていた。本当だったら、ここからお涙ちょうだい的ながん闘病記になってしまいそうなところだが、この話には全く持って涙はない。むしろ笑いが溢れ、ユーモアセンスたっぷりの文章で読者を引っ張ってゆく。

 彼女の一番たくましい部分は、がんだからといって誰にも甘えない強い気持ちを持っているところ。付き合っている彼に助けてもらう場面や、共に働く仕事仲間からの支えもあったのだが、彼女自ら、がんを理由に甘えたことはない。そんな強い女性だからこそ、仕事を辞めずに治療費もすべて自分で賄ってしまう。

 とはいえ、がん治療と仕事を簡単に両立できるスーパーウーマンはいない。毎月の給料は治療費と生活費に消えてゆく。医療保険に入っていなかったために自転車操業に陥ってしまうのだが、20代で自分ががんになる可能性はまず考えないため仕方ないことかもしれない。そう思うとがんは年齢性別関係なしに、いついかなる状況で自分に降りかかってくるかわからない。

 周囲だっていつも支えてくれるわけではなく、彼氏の浮気騒動や会社での部署異動など、社会はがんの患者だからって容赦はしないのだ。きっと誰かに甘えていたら、どこかで崩れていいただろう。自分自身と戦った彼女だからこそ、がんを乗り越えた時に強い自分が見つかったように感じられる。

 そんな強い女性だって恋はしたいのだ。このエッセイにはがんとの戦いとともに、揺れる女の恋心が描かれている。毎日を必死に生きて行くには恋愛のような甘い要素も必要なのだと改めて実感する。恋愛は癒しといっても過言ではない。闘いには休息がいる。恋愛は自分を女性らしくしてくれるもの。女性としては胸であったり、髪であったりは失いたくない。命からしてみればちっぽけかもしれないけれど、本人にとっては大きな乙女心といえるものも描かれている。女はいつだって女であるということを感じさせてくれる1冊。

文=舟崎泉美

ダ・ヴィンチニュース

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