あの『バンビーノ!』の作者が描く激烈アクション! 『火線上のハテルマ』

ダ・ヴィンチニュース / 2014年2月13日 11時40分

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『火線上のハテルマ』(せきやてつじ/小学館)

 日本から遠く離れたロサンゼルスに降り立った元警察官の青年、梶恭司。刃物を持った通り魔を前に恐怖で動けず、8人もの死者を出してしまう失態を犯した彼は、世間の糾弾から逃れるべく警察を辞め、L.A.へとやって来たのだった。

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 己の弱さで多くの命を救えなかったことに苛まれる梶は、偶然迷い込んだスラム街でひとりの謎多き日本人男性と出会う。男の名は波照間猛(はてるまたけし)。梶に襲い掛かってきた暴漢をなぎ倒した波照間はこう言う。

「羊の来る街じゃない。死ぬぞ?」

 せきやてつじの最新作『火線上のハテルマ』(小学館)はこうして幕を開ける。

 やがて梶は、自身の心の傷と対峙するような事件に巻き込まれことになる。ドラッグストアで買い物をしている最中、いきなり自動小銃で武装した覆面の男たちが乱入し、目の前にいた父子に向けて発砲し父親を殺害したのだ。覆面の男たちはエルサルバドル人のギャングで、身内を更生させた父親とその息子を抹殺しようと目論んでいたのである。かろうじて息子を助けることができた梶は、彼をギャングの手から守るためにスラム街で会った波照間に助けを求める。

 もう二度と自分の弱さのせいで人を死なせたくない。梶の切実な願いを聞き入れた波照間は、彼に本格的な銃の扱いを指導する。そして非道なギャングに追いつめられ生命の危機を迎えた梶のもとに、波照間は圧倒的な戦闘能力を持った男女を突如引き連れ現れるのだった。
 
 波照間猛は何者なのか。そして、波照間が率いるチームの正体とは。多くの謎を孕みながら、血と硝煙の舞う銃撃戦と、肉体の躍動感がひしひしと伝わってくる格闘場面が展開する、実に骨太なアクション漫画の秀作だ。

 自動小銃を持ったギャングからの逃避行、波照間のトンファー(沖縄の古武道で使用される武器)を駆使した格闘術などなど多彩なアクションを、せきやはキャラクターたちのキレある動きとともに見せる。

 せきやてつじは最高のイタリア料理人を目指す青年を描き、嵐の松本潤主演でドラマ化もされた料理マンガ『バンビーノ!』(小学館)の作者である。料理マンガからアクションマンガへ、というのは一見かなりの作風転換のように思えるが、さにあらず。『バンビーノ!』では殺人的な忙しさに追われる厨房を、まさに料理人たちの怒号と熱気が銃弾の如く飛び交う戦場のように表現したマンガであった。そう、せきやは「戦場」を描くのに非常に長けた作家と言って良いのだ。その意味で、実弾の中を駆け抜ける者たちの姿を描いた『火線上のハテルマ』はせきやてつじというマンガ家の本質が詰まった作品なのである。

 『火線上のハテルマ』は青年の成長物語でもある。主人公の梶は痩身で坊ちゃんカットに眼鏡と、わかりやすいくらいにひ弱な文化系男子として描かれている。だが、人命を救えなかった過去を克服すべく、梶は波照間たちが生きる死と隣り合わせの世界へと自ら飛び込んでいく。克己=己に打ち勝つために足掻く主人公の姿もまた、本作の読みどころなのだ。

 第1巻のラスト、物語の舞台はロサンゼルスから世界へと飛び出していくことが予告される。壮大なスケールを持った冒険譚になりそうな気配のこのマンガ、ぜひ今の内に手に取っておくことをおすすめする。

文=若林踏

ダ・ヴィンチニュース

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