『深夜食堂』著者のデビュー作! 「耳かき」という官能的行為が人に快楽を与え、本性をあぶり出す

ダ・ヴィンチニュース / 2014年2月27日 15時20分

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『山本耳かき店』(安倍夜郎/小学館)

 じつは、耳かき(耳掃除)はほとんど必要ない、ともいわれます。現に海外では耳かきの習慣がない国もあるそうです。そもそも、耳あかというのは、しぜんと耳の外に押し出されるようになっているらしく。耳あかが湿る湿潤気候の日本では、多少は事情が違ってきますが、それでも耳かきは、年に数回でよいといわれています。では、なぜ日本人は、これほどまでに頻回に耳かきをするのか。それは、ひとえに快楽のためであるといわれます。

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 さて、本作『山本耳かき店』(安倍夜郎/小学館)は、「耳かき」と「耳かき店」と「耳かきを極めた女性店主」を巡る人間ドラマを描いた、究極の耳かきコミック。前述のとおり、耳かきは人間に快楽を与えます。本作は、耳かき店を訪れた子どもから高齢者までの登場人物たちが、次々と女性店主に耳を委ね、さまざまな快楽に溺れていくさまが官能的に描かれます。

 ちなみに、登場人物のセリフによると、耳かきというのは「耳の内側にあたる竹の感触が、丹念に磨かれたツメの先で、指の股のところをコチョコチョとひっかくような感じで、喜びのとり肌を全身にたてる」ほどキモチイイもの。この表現で、耳の奥が痒くなったり、耳かきをしたくなったり、気持ちがモヤモヤしてきたアナタ。ぜひ、本作を紐解いてみてください。カクジツに新しい耳かきの世界が開かれます。

 人間の器官のなかでも、もろい耳奥を他人にあけすけに任せるというのは、相手を信頼していなければできないこと。耳奥を任されるほうも、その信頼に応えねばなりません。母親が子どもにしてやる、恋人がパートナーにしてやる耳かきというのは、行為自体の快楽もさることながら、精神的な信頼関係も深めていく高度な官能的行為だといえるでしょう。

 本作を描くのは、テレビドラマ化もされた、あの『深夜食堂』の安倍夜郎。じつは『山本耳かき店』(第1話)は、作者のデビュー作でもあります。紆余曲折あり、出版までに思いのほか時間がかかった本作は、その分、非常に丁寧に描かれています。オススメ。

文=ルートつつみ

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