原発問題、民族紛争を小学生が解決!? 小4が「世界平和」を目指す驚きの授業

ダ・ヴィンチニュース / 2014年3月31日 16時0分

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『小学4年生の世界平和』(ジョン・ハンター:著、伊藤真:訳/KADOKAWA 角川書店)

 「国防大臣による傀儡政権が暴走し、侵略しようとする傭兵部隊へミサイルを発射したところ狙いが外れて油田に命中、深刻な環境汚染を引き起こす」「少数民族が古からの民族の土地で独自の宗教国家設立の動き」「戦争で他国を征服して世界制覇を狙う独裁者に、閣僚によるクーデターが勃発」「ある海洋国が津波に襲われて産業の大半が崩壊。さらに海洋汚染、ハリケーン、原発での炉心溶融まで発生し、壊滅的打撃を受ける」「貧国の国防大臣が、首相の命令に逆らって軍事作戦を展開。隣国の油田地帯へ派兵し、これを占拠する」…といっても、これは現実のニュースではない。これらを引き起こしたのは、すべて小学4年生。アメリカ人教師ジョン・ハンター氏が、1978年に考案した「ワールド・ピース・ゲーム」という世界平和を目指すゲームを使った小学校の課外授業での出来事だ。

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 「ワールド・ピース・ゲーム」とは、1.2メートル四方のアクリル板4枚が4層のタワーになったボードゲームだ。一番上の板は宇宙空間、次は大気圏、その下は陸地と海面、一番下は海中になっていて「地球」を表している。そこには4つの国があり、4人の元首と各国の閣僚がボード上の兵士や飛行機などの駒を動かしながら国家を運営する。国土には少数民族も存在し、さらには世界銀行や国連の担当者、武器商人、破壊工作員、気象や株式市場など無作為に変動する現象を司る気象の神がいて、それらの役割を子どもたちに与え、週に1回、7~8週間かけて危機の解決とすべての国家の資産価値の上昇を目指す、というのがルールだ。

 しかし富める国や貧しい国があり、さらには民族間の軋轢や領土を巡る問題、紛争、利権争い、景気変動、環境破壊、気候の変動など実際にありそうな50件もの問題がゲーム開始時に与えられるため、そう簡単に平和にはならない。彼らは国内、そして国家間で交渉をして問題を解決していくのだが、時に破壊工作員(その正体は秘密で権力を持つ閣僚などが工作員の場合もある)が罠を仕掛けることもあり、交渉が決裂したり疑心暗鬼も生じたり、解決は一筋縄ではいかないのだ。

 ハンター氏はこのゲームで成功を収めるためには、正確な答えと正しい解決策である「知識」、試行錯誤を通じてしか得られない「創造性」、より深く幅広い理解である「英知」が必要と言う。そして「私は既知の当たり前の知識などより、時間をかけて形を成してくるような知識を重視する」と語っていて、掛け算や歴史の年号といったようなテストで正解するための知識を詰め込むのではなく、まだ見えていないもののために場所を空けておく(ハンター氏はこれを「エンプティ・スペース」と呼ぶ)べきだという。そこは可能性や潜在能力が生まれたり、新しいことを考えついたりする場所なのだという。子どもたちは数多くの問題に困惑し、失敗を重ねながらやがて理解して仲間と協力し、解決策をひらめき、その流れに乗って理解を実践に変えていく「学習の7つの段階」を経て、最終的に世界平和を獲得するという。そこでの数々の生徒のエピソードが本書『小学4年生の世界平和』(ジョン・ハンター:著、伊藤真:訳/KADOKAWA 角川書店)で紹介されているのだが、その大人顔負けの行動には驚くばかりだ。

 自分の知識や経験だけでは乗り切れない想定外の問題に対し、仲間と力を合わせて解決していくワールド・ピース・ゲームのような授業は、柔軟な発想や思いやり、仲間を信頼するために役立つ力を育てる。つまりそれは、複雑に問題が絡み合っている現実の世界で生き抜く力になるものだ。中国春秋時代の孫子『兵法』から多大な影響を受けているというハンター氏の言葉は、受験をクリアするための勉強が幅を利かせていて、少々閉塞気味な日本の教育問題にも大きなヒントを与えてくれるのではないだろうか。そして少々凝り固まってしまった大人の考えにも、大きな風穴を開けてくれることだろう。そして未だ平和にならない世界が抱えている問題について、考えてみるきっかけにしてみてはどうだろう。

文=成田全(ナリタタモツ)

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