短いからこそグッとくる、リアルラブ短編マンガ

ダ・ヴィンチニュース / 2014年5月10日 7時20分

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『ノストラダムス・ラブ』(冬川智子/小学館)

 多く巻数を重ねて長期連載してこそヒットにつながる、昭和の時代、マンガ界にはそのような常識があったように思う。しかし近年、コミックスの形態は非常に多様化している。とくに目を引くのが、短編作品の隆盛だ。短編を得意とする若手作家が多く現れ、秀作が次々と生まれている。ラブストーリー、SF、ファンタジーと内容も多彩。『ダ・ヴィンチ』6月号では、ショートショートから1巻ものまで、注目作家の豊穣な短編マンガを紹介している。

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 近年、短編集が注目を集め、いきなりスター作家の地位を獲得する若手マンガ家が幾人も現れている。筆頭は、九井諒子(『竜の学校は山の上 九井諒子作品集』)や穂積(『式の前日』)だろう。いずれもデビュー単行本であり、二人の登場は非常に鮮烈であった。

 冬川智子もそんな作家の一人で、2011年には『マスタード・チョコレート』で第15回文化庁メディア芸術祭マンガ部門新人賞を受賞している。最新巻の『ノストラダムス・ラブ』も傑作だ。懐かしさと恥ずかしさが同居したような1999年の時代感、主人公が抱える自己存在と死に対する葛藤、そして穏やかな恋の行方。多様な心象風景が集積した冬川らしいラブストーリーだ。

 次期スターとして期待されるのが、谷和野だ。『いちばんいいスカート』は、スカートの中の秘密、足だけの霊など少し不思議な感覚を取り入れながら、恋模様を丁寧に描いている。勝田文の『小僧の寿し』も、食べ物を題材に男女の出会いを綴った印象的な作品集だ。
 一つの出会い、一つのきっかけ、短編はそんな小さなことを大切に描いている。だからこそ、そこにはキャラクターの愛情と心の内が凝縮され、愛おしく私たちの心に染みる。短編には、短編にしか描けないことがあるのだ。

 同誌ではそんな、心の機微がつまったリアルラブ短編ほか、不意に異世界に足を踏み入れる日常型SF短編、世界の秘密が潜んだネオ・ファンタジック短編を紹介。また、第18回手塚治虫文化賞短編賞を受賞した施川ユウキのインタビューを掲載している。

■『ノストラダムス・ラブ』 冬川智子 小学館IKKI C 690円(税別)
1999年7月。大学2年の夏休みを、桜は憂鬱に過ごしていた。理由は「ノストラダムスの予言」。子どもの頃から予言を信じていた桜は、すべてに意味を感じることができないでいた。しかし、アパートの隣人・森に突然交際を申し込まれ、それを受け入れて……。

■『小僧の寿し』 勝田 文 集英社マーガレットC 419円(税別)
小僧みたいな職人のいる寿司屋にふらりと入った亜紀。結婚を取り止めることになり、彼とは音信不通。亜紀は、いつも不運に見舞われる“ついていない”彼が大好きだったのだが……。寿司におでんにスイカ、美味しいものと幸せが見つかる短編集!

■『いちばんいいスカート』 谷 和野 小学館フラワーCα 429円(税別)
太一はデザイナーの母から女の子のスカートがふくらんでいる“理由”を聞き、その秘密に魅せられ!? 表題作のほか、“足”と同居するトゲ子や長すぎる三つ編みをしている緋沙子の物語6編を収録。少し不思議な秘密が隠れた恋の出会いを描く、デビュー短編集!

構成・取材・文=松井美緒/ダ・ヴィンチ6月号「コミック ダ・ヴィンチ」

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