岡田准一主演の2014年大河『軍師官兵衛』完全ノベライズ 人間味溢れる官兵衛の生涯とは?

ダ・ヴィンチニュース / 2014年5月13日 18時20分

写真

『NHK大河ドラマ 軍師官兵衛 一』(前川洋一、青木邦子/NHK出版)

 「一匹いたら二十匹いると思え」と殺虫剤をまき散らすように、少しでも黒い感情を抱えた人間を見つけ次第、次々と殲滅させていく無慈悲な時代が、戦乱の世だと思っていた。だから、「人は殺すよりも使え」ということを信念とし、刀や槍で人を殺すのではなく、知力で敵を倒す戦国武将がいたとは思いも寄らなかった。誰よりも人間臭いその武将の名は黒田官兵衛。信長、秀吉、家康の三英傑に重用された軍師だ。

【紙面の画像あり】関連情報を含む記事はこちら

 『NHK大河ドラマ 軍師官兵衛 1』は岡田准一主演の2014年大河ドラマの完全ノベライズ本。シリーズ1作目のこの本では、幼き日の官兵衛の様子から彼が秀吉とともに二人三脚で播磨平定を成し遂げるまでをありありと描き出している。物語は淡々と進められるが、ここから感じられるのは、人間味溢れる官兵衛の深い息づかいだ。

 播磨・姫路城主の嫡男として生まれた官兵衛は、14歳で母を亡くして以降、学問に励み、武芸の鍛錬に打ち込んでいた。22歳で結婚と同時に家督を継ぐこととになると、官兵衛は早くから織田信長の将来性を見抜き、主家を織田方に導く。信長の命で羽柴秀吉の播磨平定を助けることとなった官兵衛は巧みな弁舌と戦略で秀吉を支えることになる。官兵衛は一体どのような軍略で天下を統一しようというのか。「智将」と呼ばれた彼の姿に真に迫っていく。

 「戦のない新しい世をつくるために、信長の天下布武の夢に加わった」と官兵衛は言う。彼は軍略の天才でありながらも、戦を好まず、平和を望んでいる。「命を無駄にするな。お前は命の使い道がわかっておらぬ」。初恋相手を自分の腕の中で亡くし、自暴自棄になったこともあるが、祖父の言葉が彼の生き方を定めた。彼にはあまり欲も感じられない。ただ、大事に思う者を守るために策を練っているようにさえ見える。多くの大名の欲が蠢く戦国の世としては珍しい家老の姿は知れば知る程、多くの人を惹き付けていく。

 岐阜の町の盗人に困り果てた秀吉が、見せしめに一人の首をはねようとした際には、人間生きていれば使い道もあるのだから、罰として昼間は働かせ、夜は牢に入れればよろしいと言ってのける。祝言を挙げたその夜、妻の光に亡き初恋相手の話を聞かせ、「これから先、われらの間で隠し事はしない。約束だ」と告げ、側室を持たずただひとりの妻と添い遂げた律儀さや誠実さも持ち合わせている。だが、迷いの一切ない強い人間というわけではない。焦りを感じる時には信長方に付いて正しかったのかと揺れる場面もあり、つくづく人間臭い男だ。

 戦いは極力しない、犠牲は出さない。太公望『三略』や孫子『兵法』に基づきながらも奇抜な軍略で彼は秀吉の天下統一を支えていく。大河ドラマとともに見れば、官兵衛という男を深く知ることが出来るこの本は、今一番読んでおきたい1冊だ。

文=アサトーミナミ

ダ・ヴィンチニュース

トピックスRSS

ランキング