さいとうちほが描く大怪盗! 『VSルパン』が発売

ダ・ヴィンチニュース / 2014年5月16日 7時20分

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『VSルパン』(さいとうちほ:著、モーリス ルブラン:企画・原案/小学館)

 古典ミステリーのリメイクでいま最も熱いのはシャーロック・ホームズだ。ベネディクト・カンバーバッチ主演の現代版ドラマ『SHERLOCK』は新シーズンが放映されるたびに話題騒然となるし、アメリカでは舞台をニューヨークに移し、ワトソンを女性に変更したドラマ『エレメンタリー ホームズ&ワトソンin NY』が製作されるなど、世界各地でホームズ旋風が吹き荒れている。

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 ところでホームズと双璧を成す古典ミステリーのヒーローと言えば、フランスの作家モーリス・ルブランが生み出した怪盗アルセーヌ・ルパンである。ホームズに比べ、ルパン関連のリメイク作品は少ないのでは、と思った貴方、甘い。コミック雑誌『HEROS』では森田崇によるルブラン原作のマンガ化『怪盗ルパン伝 アバンチュリエ』が連載中であり、2013年には近年発見されたシリーズ最終作『ルパン、最後の恋』が宝塚でミュージカル化されるなど、ホームズに負けず劣らず様々な表現方法によってルパンの物語はいまも甦っているのだ。

 そしてまたひとつ、装いを新たにしたルパンの冒険譚が誕生した。

 『少女革命ウテナ』を手がけたさいとうちほの『VSルパン』(モーリス ルブラン:企画・原案/小学館)である。

 さいとう版ルパンの特徴は、ずばり秀麗眉目なロマンチスト。時には狡猾でワイルドな表情すら見せる『アバンチュリエ』の森田版ルパンと違い、さいとうはソフトな紳士のイメージで人々を魅了する男としてルパンを描こうとする。

 その姿勢は第1話に「プリンセスの結婚」(原作は『ルパンの告白』所収「ルパンの結婚」)をさいとうがチョイスしたことからも明らかだ。これはヴァンドーム侯爵の娘、アンジェリック姫との結婚をルパンが勝手に宣言し、新聞社を利用して騒ぎを大きくする、という話である。30歳を越えて恋愛に奥手で、本の世界に閉じこもっている女性が、突如現れた大胆不敵な男性との恋に目覚めるところが肝。これはミステリーというより、完全にロマンス物語として鑑賞すべき作品なのだ。

 続く第2話「伯爵夫人の黒真珠」(原作は『怪盗紳士ルパン』所収「黒真珠」)ではルパンの宿敵、パリ警視庁のガニマール警部が登場する。原作では渋い老刑事として描かれているが、さいとう版ではスキンヘッドに口髭という出で立ちで、厳つく精力的な雰囲気をまとった人物だ。ごっついガニマールと流麗なルパン、という対比が効いていて面白い。伯爵夫人の黒真珠を奪おうとアパルトマンに侵入したルパンだったが、見つけたのは夫人の死体で黒真珠は何者かに奪われてしまい……という基本ストーリーは原作と変わらずだが、さいとう版では独自のひねりが用意されているので原作既読の方も必見である。

 そして第3話「王妃の首飾り」(原作は『怪盗紳士ルパン』所収「女王の首飾り」)。ルパンという人間を知る上で欠かせない初期の重要な作品であるが、さいとうはこの物語に原作にはない、ある登場人物を加えている。ルパン物語の愛好者なら、この人物の名前を目にして「おお!」と快哉を叫ぶに違いないだろう。

 さいとうちほの手によって、より華やかな怪盗紳士として現代に復活したアルセーヌ・ルパン。ぜひその活躍を原作小説のみならず、他のコミック・映画・舞台とも比較しながらご堪能あれ。

文=若林踏

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