熟女キャバ嬢の母、BL好きの長女、ぱんつを売る次女、こじれた家族の物語

ダ・ヴィンチニュース / 2014年6月16日 14時40分

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『ただいまが、聞こえない』(坂井希久子/KADOKAWA 角川書店)

「ぱんつ、譲ってくれませんか?」そんな衝撃のフレーズで始まる家族小説『ただいまが、聞こえない』(坂井希久子/KADOKAWA 角川書店)。

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 第1章は彼氏にフラれた女子高生、次女の杏奈が主役。“ぱんつと足”が好きという変わった性癖の中川に最初は嫌悪感を抱くが、結局はぱんつを譲り心を許していく話。第1章だけ読むと中川の変態っぷりを受け入れてしまう杏奈の様子から官能小説? 家族小説じゃないの? などと思ってしまう強烈なインパクトがあるが、第2章からはBL好きの長女、元芸者の祖母、熟女キャバクラで働く母など個性的なキャラクターが主人公となって家族の物語を繰り広げてゆく。

 一見バラバラな家族だが、この家族に共通しているのは、本当はお互いを思い合っているのにどこかこじれているところ。特に熟女キャバクラで働いている母親 万千子のこじらせっぷりはすごい。長女の沙良が中学時代に仲良くしていた佐藤くん。彼のことをよく知りもしないのに、娘にふさわしくないと決めつけ「沙良に近づくな」と遠ざけた過去を持っていた。しかし、そんな過去もすっかり忘れてしまい外務省に勤めだした佐藤くんを沙良にぴったりの男性だと家に連れてきてしまう。

 その後も沙良と佐藤くんの仲を応援しているのか別れさせようとしているのか、いろいろと面倒な行動を起こす。それも沙良のことを思っているからこその行動なのだけど、読んでいる方はわかっていながらもイライラしてしまう。しかし、万千子が熟女キャバクラでバイトを始めたのも、夫 徳雄の浮気が発覚してからだと言うし、美熟女コンテストに出場するために豊胸手術をしたいと言いだすのも徳雄が自分のことを見てくれないからかと思うとなぜだか憎めない。

 万千子だけじゃない。杏奈が変態の中川に心を許すのも、沙良がBL好きになったのも、徳雄が浮気してしまうのも理由がある。上手く繋ぎ合わない家族の心、そのねじれが家族をおかしな方向へと導いている。けれど、元々が思い合っているのだからこの家族は強い。母親に関係するある出来事によって家族は一気に収束してゆく。

 最近では、母親の過干渉により娘との関係がこじれるなどという話題もよく聞く。しかし、こじれるのはお互いが相手を思い合っているからこそ。本書を読むと、そんな家族はきっかけがあればすぐに絆が結ばれるのではないかと思わされる。

 何かしら家族の中に問題を持っている人は、ぜひ読んでほしい。こんなに互いを思い合っていても家族はこじれるんだと思うと、少しだけ問題解決の糸口が見つかるのではないだろうか。

文=舟崎泉美

ダ・ヴィンチニュース

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