文字から生まれる物語。手紙にまつわる文庫たち

ダ・ヴィンチニュース / 2014年6月23日 7時20分

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『手紙』(東野圭吾/文藝春秋)

 年々減少傾向にあるという年賀状。原因は言わずもがな携帯やPCによるメールの普及だ。だが手で書いた文字だからこそ伝わる心というものもきっとある。懐かしい人や大切な人へ送る手紙はもちろん、仕事上のお礼、プレゼントに添えるメッセージ、留守中に家族へ残す書き置きなど、ちょっとしたときの一言も手書きで伝えるだけで格段に変わるはずだ。一方で手紙には、マイナスの感情も存在する。詫び、怒り、憎しみ……。人の感情がこもるからこそ生まれる物語もある。『ダ・ヴィンチ』7月号ではそんな手紙にまつわる文庫を特集・紹介している。ここではそのうち6冊を紹介。

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■『手紙』 東野圭吾 文春文庫 640円(税別)
剛志は強盗殺人を犯した。弟・直貴を大学に入れるために。剛志は刑務所に入り、毎月直貴に手紙を出す。直貴は……人生のあらゆるところで、夢を諦め、捨てる。兄が殺人者という理由で。だから直貴は兄を捨てることにした。自分は一人っ子なのだと。しかし剛志からは、毎月必ず手紙が届いて……。

■『往復書簡』 湊 かなえ 幻冬舎文庫 600円(税別)
物語は4編。高校時代の友人が、披露宴で再会したことから回想する5年前の事故の真相。小学4年生のときに起きた悲しい事故とその顛末を、当時の担任から教師になった大場が託された理由。恋人が国際ボランティア隊に参加し、手紙を交換することで過去の出来事にけじめをつける話など、どれも秀逸。

■『クレイとフィンと夢見た手紙』 友野 詳 KADOKAWA メディアファクトリー MF文庫J 580円(税別)
白に近いほどの金髪、華奢な体格のフィンと、真っ黒な髪にしなやかな肉体をもつクレイ。彼らは〈郵便屋〉だ。さまざまな時代、さまざまな土地に、届かないはずの手紙を届けて絆をつなげている。届け先は5人の美少女。彼女たちが紡ぐ5つの世界、5つの物語にはどんな夢、願い、祈りがある?

■『手紙魔まみ、夏の引越し(ウサギ連れ)』 穂村 弘/著 タカノ 綾/絵 小学館文庫 762円(税別)
まみが「穂村弘先生」に宛てた歌=手紙を、つらつらと掲載した一冊。「のぞきこむだけで誰もが引き返すまみの心のみずうみのこと」など、その歌はどれもまっすぐであり、ぐにゃりと曲がってもいる。これって愛かも。キュートでエロティックなイラストが、さらに想像力と構想力をかきたてる!

■『王への手紙』(上・下) トンケ・ドラフト/作 西村由美/訳 岩波少年文庫 上巻800円、下巻760円(税別)
見習い騎士のティウリは、ある男から「白い盾の黒い騎士に届けてほしい」と、手紙を受け取る。ティウリは騎士を探し出したが、罠にはまり瀕死の状態だった。彼はティウリに、国王へその手紙を届けてほしいと言い息絶える。ティウリはいくつもの陰謀や障害に阻まれて……果たして手紙は届くのか?

■『三島由紀夫レター教室』 三島由紀夫 ちくま文庫 520円(税別)
登場人物5人が好き勝手に、そのときの出来事を手紙にしたため、それを読者に読ませる小説。嫉妬、借金、恋、悪巧み。三島由紀夫が描く人の心の機微は、なかなかどうしてひと筋縄ではいかない、だけどちょっと笑えるものばかり……。いかに感情をぶつけた手紙が滑稽で、ナンセンスなのかも教えてくれる。

 同誌では小説だけでなく、手紙における故人の眼差しから見えてくる歴史など、ノンフィクション作品も多数紹介している。

取材・文=大久保寛子より/ダ・ヴィンチ7月号「文庫ダ・ヴィンチ」

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