河原雅彦「なんでも俯瞰で見ちゃうんです。だから、人間観察にはちょっと自信がありますよ」

ダ・ヴィンチニュース / 2014年7月6日 7時20分

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『消された一家 北九州・連続監禁殺人事件』(豊田正義/新潮社)

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、現在上演中の舞台『カッコーの巣の上で』の演出を手がけた河原雅彦さん。「人間観察が大好き」と話す河原さんが学生時代に実践していた驚きのエピソードとは――?

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 役者、脚本家、演出家と多岐にわたって活躍する河原雅彦さん。とりわけ演出家としての活動の幅は広く、商業演劇からパンクオペラ、さらには大人のラブコメミュージカルまで、ジャンルを問わず手がけている。

 その河原さんが演出をする上で心がけていることは、「俯瞰の目を持つこと」だという。

「作品に対してどっぷり感情移入したり、のめり込んで考えるタイプじゃないんです。『消された一家』のようなルポを読むときでも同じで、人間の行動や心を観察するように追っている。これはもう、クセですね。普段の生活でもそうですから」

「取材で語って得することはまるでないですけど、人間観察には昔から自信がありますよ(笑)」と河原さん。それを証明する、あるエピソードを教えてくれた。遡ること、学生時代の話だ。

「高校卒業後に実家のある福井県から大学進学のために上京し、そのとき心に決めていたのが、この4年間は遊びつくすぞ! ってこと。だから授業もさぼり、レポートも書かないというのが僕の中で決めたルールでした。でも、それだと卒業できませんよね? ですから、科目ごとに最初の1~2回だけは授業に出て、そこで女の子を観察するんです。で、僕の代わりにレポートを書いてくれそうな子を探す(笑)。それで実際、本当にレポートを一枚も書かなかったですね。あ、でも唯一、卒論だけは書きました。大好きな寺山修司さんについてだったので、それだけは自分で書きたかったんです(笑)」

 その逸話を聞き、程度の差こそあれ、相手の心理を上手く利用する姿は『消された一家』の犯人と少しだけダブって見えた。そのことを伝えると、「まぁ……近いところはあるかな」と苦笑い。

「僕はあくまでコミカル版ですけどね(笑)。それに、『消された一家』の松永(主犯格)の恐ろしいところは、逮捕されるまで一度も失敗していないってことなんですよね。僕は何度も失敗しています。女の子に包丁を振り回されたこともありますから(笑)。その意味では、いくら人間を観察するのが得意といっても、松永ほど人の心を掌握できない。言ってしまえば、僕は凡人ですよ(笑)」

 それでも、河原さんが今日の日本の演劇界を支えるクリエイターの一人であることは間違いない。

「今思えば、演劇があってよかったです。だって、僕にとってこれほど打ち込めるものは、この人生でほかにないですもん。もし、演劇がなかったから結婚詐欺師みたいな犯罪者になっていたかもしれないって、本気で思う時があるんですよね。いやぁ、あぶない、あぶない(笑)」

取材・文=倉田モトキ

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