橋本 愛「頭で理解していても、実は知らないことってたくさんある。それを実感したロケでした」

ダ・ヴィンチニュース / 2014年8月10日 5時50分

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『生きてるだけで、愛。』(本谷有希子/新潮社)

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある1冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。今回登場してくれたのは、主演映画『リトル・フォレスト 夏・秋』が公開間近の橋本愛さん。四季を通しての東北ロケから彼女が受け取ったものとは?

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 映像が、音が、ずんずん身体に沁み入ってくる。みずからが育て収穫した作物で調理した食事を、橋本さん演じるいち子がもりもりと胃袋におさめていくシーンは観ているだけで気持ちがいい。きっと心の栄養にもなっているだろう。

「1年にわたる東北ロケに入ったときは何事もすごく新鮮で。歳をとったら、自給自足の生活をしてみたいと思っていたほど田舎が好きなので、いち子の家を初めて見た時はあまりに素敵で興奮してしました。けれど、小さな頃からこの暮らしに馴染んでいるはずのいち子を演じるためには、そういう浮き足立った気持ちは取り除いていかないとなって。あの場所が大好きだったので時間はかかったのですが、美しい景色に飽きてきた頃に、“馴染んできた”という感触が生まれてきました」

 ひとり暮らしのいち子の場面は、ひとり芝居が多い。

「独り言のセリフは難しかったですね。でも、以前は私も多かったんです、独り言。謎ですよね。言葉が自分からこぼれたあとで考えても、独り言ってよくわからない。どういう隙間に言っちゃうんだろうって考えながら演じていました。自然に穏やかな感じで口から湧いてきてるように」

 自然の恵みが満ちた集落での暮らしは憧れにもつながっていく。“言葉はあてにならないけど、私のからだが感じたことは信じられる”という、いち子の言葉がそこに重なる。

「頭で理解していても、実は知らないことってたくさんある。それが響いてくる言葉ですよね。一方で、私は言葉が好きだし、自分の身体が追いついていないことでも、言葉で知って言葉で想像して生きていくというのも好き。どちらが正しいということもないけれど、“からだが感じたことは信じられる”という言葉からは、生身で生きることの強さを感じました」

 四季を巡る4部作は、五感を刺激するさまざまな誘惑に満ちている。

「料理の場面で“私も作ってみようかな”と思ったり、自然の雄大さを感じてどこかにでかけたくなったり。観た方の生活に少しでも変化が生まれたらうれしいですね。自分の居場所を探し続けるいち子の人生に、私はすごく愛着があるので、彼女は何を選ぶのか、そこも見届けてほしいなと思います。来年2月に公開される『冬・春』編のラストでは、神楽を舞ってます。あの場面はほんとにほんとに頑張ったので、どんなふうに撮れているのか楽しみです」

 そんな橋本愛さんがおすすめする1冊は、『生きてるだけで、愛。』(本谷有希子/新潮社)。――鬱から来る過眠症で引きこもり気味の寧子は、津奈木と同棲して3年になる。人とも社会ともうまくいかず、適応できない25歳の自分に不安と苛立ちを抱える日々─そこに割り込んできたのは津奈木の元恋人。その女は寧子を追いだすために、執拗に自立を迫るが……。途切れることのない愛の叫びが胸を突く衝撃作。


取材・文=河村道子

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