こんな設定あり? 「半沢直樹」シリーズの池井戸潤が描くハチャメチャ政治コメディ『民王』

ダ・ヴィンチニュース / 2014年8月24日 5時50分

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『民王』(池井戸潤/文藝春秋)

 本作『民王』(池井戸潤/文藝春秋)は、『鉄の骨』と『下町ロケット』の間、2010年に発表された政治小説。しかし政治コメディというべきコメディ部分の量の多さで、電車などで読むには注意が必要です。

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 武藤泰山が首相になるところから物語はスタートします。前首相がねじれ国会に音を上げて任期半ばで辞任してしまい、前々首相の安西氏も所信表明演説後に突如辞任している(あっ、これはあの方ですね)ので、彼が所属する民政党の評判はすこぶる悪い。そんな逆風のなか、国会で質問を受けている最中に泰山の頭脳が息子の翔と入れ替わってしまいます。翔は大学生とはいえ留年2回、シーズンスポーツサークルで遊び回っているドラ息子。新聞に載っている程度の漢字も読めず、喋り方はチャラい。必死でフォローする秘書や官房長官たちですが、官房長官もスキャンダルを暴かれピンチに。

 しかし、根は男前な翔。真の政治家が大事にすべきこととは、社会で必要とされる大人とはどういう人物なのか、ストレートに問いかけることで周りを変えていきます。一方、翔の就職面接を代わりに受ける泰山は、銀行や製薬会社、農業ビジネスの管理職たちに社会の暗黒面をたっぷり見せつけられ、逆説教。ここでも日本の職業人のあり方が問われます。どたばたコメディが、なめらかに社会批判に移行する、著者一流の風刺小説。

 ほかにも人情と女に弱い官房長官や対立野党党首と入れ替わった美女、いつもピンチのときに現れる凄腕の公安刑事など濃いキャラクターが満載で飽きさせません。児童書を出版してきたポプラ社より発売されたせいか、ラノベのような取っ付きやすさと爽快感に満ちた作品。現実もこんなふうにすっきり行きたいものですが…。

文=遠藤京子

ダ・ヴィンチニュース

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