暴力はかくも簡単に自我を奪うのか!? X JAPAN・Toshlが洗脳の12年間を告白!

ダ・ヴィンチニュース / 2014年8月31日 5時50分

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『洗脳 ― 地獄の12年からの生還』(Toshi/講談社)

 ついに、あの洗脳事件のすべてを、Toshlが自ら書き下ろした。X-JAPANボーカルのToshlが。ビジュアル系ロックの元祖的存在で、一世を風靡したバンドが、人気絶頂期に突然まさかの解散、それに続くメンバーの不可解な死、そして本人自ら出演して否定したカルト洗脳事件で、一時お茶の間の話題を独占、それこそ毎日ワイドショーで取り上げられていた。まわりからみたら絶対変なのに、「自分は洗脳などされていない!」と激高するToshlの姿が異様で、見た後ひどく不安になった事を思い出した。

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 プロローグではいかに父を大切に思っていたかが綴られる。ただ父だけ。まるでほかに家族はいないかのように。実際には母と2人の兄もいるのだが…。このちょっとセンチメンタルな回想が、本編への伏線になっている。

 淡々と綴られる、洗脳集団によって自我を失っていく過程は、まさによくある話だ。執拗な暴言と終わらない暴力で、自分がダメな人間と思い込まされ、自我を失い、言いなりになっていく姿、それは、DV被害者やカルト教団の拉致監禁事件に巻き込まれた人たちが繰り返し語るストーリーと相通じる。こんなに情報はあふれているのに、どれもどこかで聞いた話なのに、なぜ人は巻き込まれてしまうのだろう。自分のなかの覚めた理性は、危ない、関わってはいけない、と言っているのに、どうして一線を越えてしまうのだろう。

 確かに彼のまわりには、目を背けたくなる問題がたくさんあった。家族や仕事上のパートナーとの金銭的ないざこざに加え、自分に対する深い劣等感が重なり、名声と金は手に入れても不信感、絶望感にさいなまれていた。心のガードがゆるくなっていた。とはいえ、である。

 カルト集団の、まさに真綿で首をしめるようにゆっくりと獲物をからめとっていく手口は、芝居顔負けの見事さだ。なにせ偶然出会ったと思っていた妻が、実は洗脳集団の主催者と元々関係があったというのだから。オーディションの末、同じ舞台に立った時から仕組まれていた罠だったとしたら、へたなミステリーよりよっぽど衝撃的な真実だ。

 12年間もの長い間、洗脳による絶対服従状態にあったToshlが我に返ったのは、わずかな疑念の芽生えだった。疑いを抱くことで,洗脳を自分で解くこともできる、それこそ虐げられた自我に残る理性の力だと思うと、人間捨てたもんじゃない、と妙に安心した。我思う、ゆえに我ありといったところか。タレントの告白本というより、カルト教団の手口を知る上で、興味深く参考になる1冊。

文=yuyakana

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