次々と洗脳されてゆく家族 衝撃の“一家乗っ取り”サスペンス【『寄居虫女(ヤドカリオンナ)』櫛木理宇インタビュー】

ダ・ヴィンチニュース / 2014年9月7日 5時50分

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『寄居虫女』(櫛木理宇/KADOKAWA 角川書店)

 タイトルは「ヤドカリオンナ」と読む。縁もゆかりもない家庭に言葉巧みに入りこみ、洗脳し、服従させ、暴虐のかぎりを尽くして去ってゆく、まさにヤドカリのような女性犯罪者・山口葉月の恐怖を描いたサスペンス長編である。

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「日本って知らない人が家庭に入りこんでくることが、まずないじゃないですか。その分、一度入りこまれてしまったらもろいと思うんです。家に入れるからには入れるだけの理由があって、その時点で心を許してしまっている。海外の有名なシリアルキラーより、日本人にはこういう犯罪者の方が身につまされて、怖い気がするんですよ」

 と、作品テーマである“一家乗っ取り”について分析した櫛木理宇さん。こうした犯罪を絵空事と切り捨てるわけにはいかないのは、よく似た事件が現実に起こっているからだ。一昨年世間を騒がせた〈尼崎連続変死事件〉はまだ記憶に新しいし、2002年に発覚した〈北九州監禁殺人事件〉では、支配された一家が家族同士で殺し合うという凄惨な結果を招いた。本作も過去のこうした事件がモチーフとなっている。

「北九州事件の犯人は、男手がある家でもお構いなしに乗りこんで、家族を思うがままに操っています。被害者の中には元警察官もいたんですが、歯向かうことができなかった。洗脳はそこまで人を自由にできるものなのか、と衝撃的でしたね。これまでにも新堂冬樹さんや誉田哲也さんがモチーフにされていますが、私はまた違った角度からあの事件を描いてみたかった。コンセプトは“若い女性でも読める北九州事件”。だから、心理的な洗脳の怖さが中心になっています」


■洗脳の過程をどう描くか それが作品の肝でした

 溺愛していた息子を突如交通事故で失い、抜けがらのようになっていた主婦・皆川留美子。ある朝、彼女の前にがりがりに痩せこけた幼い子ども・山口朋巳が現れる。風呂にも入らず、食事もとっていない様子の朋巳に、同情心と母性本能を刺激された留美子は、家族の猛反対を押し切って、朋巳をしばらく保護することに決める。それが巧妙に仕組まれた罠だとも知らずに──。

「この作品はすごく早く書けたんです。全部で530枚くらいあるんですが、400枚までは約2週間で書けた。私的にも最速のペースです。書いていて楽しかったんでしょうね。先の展開がすべて頭の中にできあがっていたので、あとは書くだけという感じでした。3章まで一気に書いたので、ちょっとクールダウンしようと思って、1週間時間をおいて第4章を書き上げました」

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