読ませて衝撃を与える、脱・形式美のとんがりマンガ<園子温監督で映画化>

ダ・ヴィンチニュース / 2014年9月13日 5時50分

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『TOKYO TRIBE2』(井上三太)

 今回ご紹介する『TOKYO TRIBE2』の話をはじめる前に、原点の『TOKYO TRIBE』の方について少し語りたい。2の方が全12巻なのに対して、こちらは1冊のハードカバーとなっている(電子書籍化はされていない)。

【本文画像あり】『TOKYO TRIBE2』をチェック!

 作者の井上三太氏が93年に書き下ろした作品だとWikipediaにはあるが、手元の単行本の初版は96年だ。はっきりいって絵は上手とはいえないし、マンガとしての演出が優れているかというと疑問だ。なんだか渋谷駅の落書きが、そのまま動きだしてマンガになったみたいだと思った。だけど、途中まったく手が止まることなく1冊読み終えた。

 ストーリーは、シヴヤSARUという不良集団(TRIBEと本作では呼ぶ)とシンヂュクHANDSという集団の抗争劇だ。そこに目新しさはないが、すべてのページが新鮮に見えた。おそらく井上三太氏の持っている文化は、私の知っているものとは全然違うのだろう。

 井上三太氏の経歴を見ると、デビューのきっかけはヤングサンデーの新人賞とある。しかもあとがきでは手塚治虫の言葉を引用するなど、硬派な漫画家のようにも思える。だが、『ビー・バップ・ハイスクール』のような不良はファンタジーと斬り捨て、『TOKYO TRIBE』の世界をぶつけてきたわけだし、『TOKYO TRIBE2』にしても漫画雑誌ではなく、ファッション誌での連載だ。マンガ表現は好きだが、今のマンガの延長に自分を置くことには違和感があったのかもしれない。

 とはいえ、『TOKYO TRIBE2』を読むとだいぶ“マンガっぽく”なっていることに気づく。『TOKYO TRIBE』ラストの暴動を受け、シヴヤは空白地帯とされ、シンヂュクと新たにブクロとムサシノが加わる。

 ストーリーはというと、ムサシノSARUの海とブクロWU-RONZのメラの複雑な人間模様を描きつつ、やっぱり抗争する。だが、そこには『TOKYO TRIBE』の時のような、マンガ好きの読者を突き放すような表現はない。やや饒舌に語り、キャラクターたちは感情を表に出し、怪人のようなヤツまで出てきて大立ち回りでアクションをする。エンターテインメントとして、読者に優しくなったように感じる。

 映画が劇場公開されているが、なるほど映画向きだと思う。見て衝撃を受けるのは『TOKYO TRIBE』の方だろうが、読ませて衝撃を与えるのは『TOKYO TRIBE2』の方が上手だろう。絵柄やテーマで食わず嫌いはもったいない作品だと思った。

文=松浦迅徹

ダ・ヴィンチニュース

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