まだ始まったばかり。チェルノブイリはあと10万年は続く 【異色のグラフィック・ノベル『チェルノブイリ 家族の帰る場所』ブックレビュー】

ダ・ヴィンチニュース / 2014年9月21日 5時50分

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『チェルノブイリ ― 家族の帰る場所』(フランシスコ・サンチェス/朝日出版社)

 2011年の3月、地震によって引き起こされた未曾有の津波に襲われ、大惨事となった東日本大震災。その影響で爆発した福島の原子力発電所。あれから3年が経ちました。ある漫画で放射能の影響表現がどうこうと、一時的な話題になっても、すっかり忘れられた雰囲気の漂う昨今。そうではないと、まだ終わるどころか始まってすらいないのではないかと、私たちに示唆してくれる本があります。

【画像あり】『チェルノブイリ ― 家族の帰る場所』中面をチェック

 『チェルノブイリ ― 家族の帰る場所』(フランシスコ・サンチェス/朝日出版社)は原発のメルトダウン事故として先達にあたるチェルノブイリの、当時の様子と現状を、ある1家族3世代を3部構成のグラフィック・ノベル(マンガ)で描いています。著者のあとがきにある「主題は述べるというより暗示する」という言葉の通り登場人物たちは一見、黙々淡々と過ごしているように見えます。しかし、人気のない沈黙の廃墟と化したかつて過ごした町並みや、開園することもなく閉鎖された遊園地を見つめる彼らの眼差しが、言葉よりも雄弁に事故の理不尽さ、凄惨さを訴えかけてくるのです。

 第1部は「帰還者」である老夫婦の話。帰還者とは、放射能汚染により放棄された土地に戻り、そこで採れる作物を食べて生きる人達のことを指します。見知らぬ土地で物資不足の飢え死にをするくらいなら、故郷で死にたいと戻った人たちです。彼らは見えない放射能に怯えながらも、その土地を耕して失った生活を取り戻そうとします。

 第2部は老夫婦の娘家族の話。原発直近3キロにあるプリピャチに住んでいた彼女たちは、「ほんの2、3日」という話で住み慣れた町を離れます。そして彼女の夫は原発作業員として、事故の初動活動に従事することになり…

 第3部は娘家族の中の息子の話。事故から20年後の2006年、かつて住んでいたプリチャピがどうなっているのかをその目で見るため、故郷を訪れる決心を固めます。見回った最後に、彼が祖父母(第1部の老夫婦)の自宅を訪ねてみると、そこにいたのは…

 チェルノブイリの事故が起きて、もうすぐで30年。燃料棒の放射能が収まるまで、まだ10万年はかかると言われています。チェルノブイリが始まったばかりなら、福島の原発事故も決して終わっていません。日本人は過去を水に流す文化に親しい民族ですが、こればかりは決して忘れぬよう、私たちひとりひとりが意識しておくべきことなのでしょう。

文=猫梳なりや

ダ・ヴィンチニュース

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