ムーミンだけじゃない! 大人のためのトーベ・ヤンソン作品

ダ・ヴィンチニュース / 2014年10月12日 21時10分

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『ムーミンの生みの親、トーベ・ヤンソン』(トゥーラ・カルヤライネン:著、セルボ貴子、五十嵐 淳:訳/河出書房新社)

 ムーミン谷の飛び切り愉快なキャラクターたちにも負けないほどのユニークな個性を発揮した人、それがトーベ・ヤンソンだ。日本ではもっぱら『ムーミン』シリーズの作者として知られているが、故国フィンランドでは20世紀を代表するアーティストとして、国民的な人気と尊敬を得ている。
彼女が大人に向けて書いた物語の数々には、人間という存在への冷徹な分析とあたたかな視線が共存する。『ダ・ヴィンチ』11月号のムーミン特集では、トーベの生涯を紹介するとともに、ムーミンだけじゃない彼女の作品群も紹介している。

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■『トーベ・ヤンソン短篇集』
トーベ・ヤンソン/著 冨原眞弓/編・訳 ちくま文庫 880円(税別)
訳者である冨原眞弓が「まさに珠玉である。ほとんど駄作はない」と賞賛する数々の短編の中から選りすぐった20編。ひとりの人間の成長と子供時代との決別を、トーベに心酔する日本人少女からの手紙という体裁で綴った「往復書簡」、反発から理解、友情へと心を通わせていく老人に人生の機微を感じる「植物園」など、無駄を削ぎ落としたシンプルな文体で、良くもあり悪くもある人生の真実を垣間見せてくれる。また、多彩なトーベの小説の魅力を俯瞰できるセレクトになっているので、どのタイプの作品が自分の好みかを見つけるのに最適だろう。

■『旅のスケッチ トーベ・ヤンソン初期短篇集』
トーベ・ヤンソン/著 冨原眞弓/訳 筑摩書房 1600円(税別)
若き日のトーベが旅したヨーロッパ各地の様子を、文字通りスケッチしたように描いた短編集。処女小説である「大通り」など、8つの小品が収められている。将来に迷うヴァイオリン弾きの一日をペーソスたっぷりに追う「ヴァイオリン」、都会で一人老いる男の小さな嘘が切ない「手紙」、新婚旅行中のカップルが価値観の違いに翻弄される「カプリはもういや」など、20世紀前期のスノッブな欧州人の姿を、20代のトーベがユーモアと若干の皮肉を込めて切り取っている。比較的起承転結がはっきりしている作品が多いので、トーベ小説初心者におすすめ。

■『トーベ・ヤンソン短篇集 黒と白』
トーベ・ヤンソン/著 冨原眞弓/編・訳 ちくま文庫 880円(税別)
仕事のインスピレーションを得るために、無秩序な外観の別荘で過ごす男。彼が求める闇とは。近代化がもたらした人間性への無意識の圧迫を描く表題作、思い出を乗っ取ろうとするかつてのルームメイトの言動に現代人の病理が透けて見える「記憶を借りる女」、意識の高いタイプが陥りがちな言動を皮肉っぽく描写する「夏の子ども」など、トーベのちょっと黒い一面を覗かせてくれる短篇集。ムーミン・シリーズに潜む闇を敏感に感じ取れるあなたに読んで欲しい一冊。

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