【離婚後300日問題】いまだ苦しみが続く「無戸籍者」の生まれる理由とは

ダ・ヴィンチニュース / 2014年10月24日 11時0分

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『離婚後300日問題 無戸籍児を救え!』(毎日新聞社会部/明石書店)

 日本国民でありながら、いわゆる「一般的な生活」を送ることができない人たちがいる。その根底にあるのは、民法第772条に規定された離婚後300日問題。すなわち「無戸籍者」たちの存在である。先月から今月にかけても、神戸家裁や大阪家裁で成人して数年後にようやく戸籍を認める判決が相次いで出された。

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 明治31年に施行された民法の一部は、現在に至るまで幾度かの改正を経ている。ただ、第772条の内容は大正、昭和、平成と年号がどれほど変わろうとも、元のままである。

(1)妻が婚姻中に懐胎(妊娠)した子は、夫の子と推定する。
(2)婚姻の成立の日から200日を経過した後又は婚姻の解消若しくは取消しの日から300日以内に生まれた子は、婚姻中に懐胎(妊娠)したものとする。

 上記は、無戸籍児たちの問題を毎日新聞社会部が明るみにした書籍『離婚後300日問題 無戸籍児を救え!』(毎日新聞社会部/明石書店)から抜粋したものだ。今から約6年前、2008年に刊行されたものだが、いまだ問題の根本的な解決には至っていない。

 そもそもなぜ、生まれてきた子どもが無戸籍となるのか。同書で取り上げられた2才の少女は、以下のような家庭環境を抱えていた。

 少女の母親は、前夫との婚姻関係を結んだまま実父との付き合いを続けていた。結婚を考えた実父が確かめたところ、母親はあわてて前夫との離婚届を提出したが、離婚成立から226日後に少女が生まれた。そのため、出生届を出すにあたり、裁判で前夫に「自分の子ではない」と説明してもらう必要があったが、その後、母親は行方不明となり、前夫の所在も分からぬまま、実父と少女は父子家庭になってしまったという。

 戸籍がなければ、住民票を得られない。住民票が発行されなければ、様々な弊害が生じてくる。運転免許の取得や健康保険への加入、銀行での口座開設など、ほとんどの人たちが当たり前のようにやっていることが、子どもたちが大人へと成長する中で、できなくなってしまう。「この子は10年後、20年後に一体どんな人生を送るのだろうか」という記者の一文が同書には綴られているが、やるせない感情も湧いてくる。

 解決の糸口の一つとして、2007年に、離婚後の妊娠を医師が認めた場合に限り出生届を受理するよう法務省が各自治体へと働きかけた。しかし、いずれにせよ子どもが生まれてからの手続きに負担が生じてくるのは明らかだ。

 家庭内暴力に耐え切れず家を飛び出した母親など、無戸籍児たちが生まれる背景には、個別に様々な要因が考えられる。また、事例によっては親子代々で戸籍のないケースもあるようだ。必ずしも親が悪いとはいいきれないものの、何よりも不幸となるのは生まれてきた子どもたちである。本来は早いうちに父子関係を安定させることで子の利益となるよう作られた条文だが、弊害の浮かび上がる現状をふまえると、やはり抜本的な解決へ1日でも早く進むのを願いたい。

文=カネコシュウヘイ

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