救いようのない、生きることを諦めた女の子、ミーツ、すごいブス

ダ・ヴィンチニュース / 2014年11月2日 5時50分

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『トモちゃんはすごいブス』(森下裕美/双葉社)

 『トモちゃんはすごいブス』――なかなか衝撃的なタイトルである。「ブス」という単語がそれ単体でものすごい攻撃力を持っているところを、さらにそれに「すごい」をつけてしまうことによって、その殺傷能力的なものは飛躍的に増大する。このタイトルは全国の「トモちゃん」というあだ名を持つ人を戸惑わせ、もしかしたら敵に回すかもしれない。

【画像あり】『トモちゃんはすごいブス』中面をチェック

 しかしそれでも。このマンガに出てくる「トモちゃん」は、「すごいブス」と形容するしかないような見た目をしている。しかし、本人は別にそれを気に病むでもなさそうで、あくまで「個性の一つ」ぐらいとしかとらえていなさそうだ。

 そしてこの物語の主人公はトモちゃんではない。中学1年からずっと不登校のまま7年ぐらいを過ごしていて、たった一人の身寄りである父親を亡くし、香典の残りの5万円を使い切ったら死のう、と考えちゃうような、すべてにおいてやる気をなくしてしまっている、チコちゃんという女の子だ。

 葬儀終わりにお金の無心に来た知り合いのおばちゃんに5万円を投げ渡し、疲れ果てたチコちゃんは居眠りをする。そして眠りから目覚めたチコちゃんの家にいつの間にか上がりこみ、父親に線香をあげていたのがトモちゃんだ。トモちゃんはチコちゃんに朝食を作り、にこやかに味噌汁を差し出す。なぜ、と問うチコちゃんに、トモちゃんは「アナタのお父さんに、チコちゃんと友達になってと頼まれた」と事もなげに言い、あまりにも生きる力に欠けるチコちゃんのサポートをする。一緒に仕事を探し、一緒に働く。お金を稼ぎ、ご飯を食べ、生きていく術をふたりで模索していく。

 たかが、携帯のサイトで知り合っただけの、面識もないただのおっさんに、「うちの娘の友達になってほしい」と頼まれただけで、ほいほいとその人の家に訪ねていき、その人自身が死んでいても「びっくりしちゃった」というコメントのみで済まし、やる気も生きる気力も、一般的な知識すらも欠けるその娘の社会復帰を手伝ってやるなんて――と、トモちゃん自身にも謎は多い。バイタリティはものすごいけれど、トモちゃん自身も文無しに近い。チコちゃんに会うまで彼女も何をやっていた人なのか、まったくわからない。それでも彼女のバイタリティはものすごい。生きる、という力を具現化したみたいなパワーに満ちている。そのパワーの影響か、チコちゃんもじわりじわりと生きるようになってきている。

 いろいろな謎はあるけれど、そして一筋縄ではいかなさそうな気配もそれなりにあるけれど、やっぱり働くことって大事だよなあ、と思う。働くことを覚えて、生きる力を少し身につけたチコちゃんは、この後そう簡単に死ぬとは言わなくなるだろうか。言わなくなってるといいなあ。

文=kujira

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