人間よりも賢い? 驚くべき昆虫の生態

ダ・ヴィンチニュース / 2014年11月10日 18時0分

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『昆虫はすごい』(丸山宗利/光文社)

 生まれ変わったら、ミノムシになりたい。お気に入りの木の枝にぶら下がって、ぬくぬくと何もせず、ただ春だけを待ちわびたい。部屋の中では何でも好きなことし放題。これぞ最強の高等遊民。煩わしい感情に振り回せることなく、仕事に縛られることなく、そんな日々を送ることができたら、どんなに幸せだろうか。そんなことを言ったら虫マニアの友人に「ミノムシのメスは死ぬまで外に出ることなくミノの中で死ぬんだよ」と嘲笑われた。人間が勘違いしているだけで、もしかしたら、虫の世界も大変なのかもしれない。

【画像あり】『昆虫はすごい』中面をチェック

 九州大学総合研究博物館助教授の丸山宗利『昆虫はすごい』では、地球上で最も多種多様な生命体である昆虫たちの生態に迫っている。どうしても私たち人間は、虫を下等で気楽な生き物だと勘違いしてしまいがちだが、人間よりも先に昆虫は、社会や文明を作り上げていたらしい。狩猟採集や農業、牧畜、戦争、奴隷制…。昆虫たちが生み出した知恵の数々に自然と「昆虫はすごい」とつぶやいてしまう。作者の思うツボにどーんと嵌まってしまう。人間と昆虫とどこに違いがあるのだろう。そういう視点で見ると、共通点の多さに驚かされるに違いない。

 やはり興味深いのは、繁殖行動。ヒトの恋愛においては、贈り物はなかなか有効な手段であるが、実は昆虫の繁殖行動においても、贈り物を行うものがいるという。特に有名なのはオドリバエというハエの「婚姻贈呈」という現象。贈り物とする餌は種によって異なり、他種のオドリバエまで捕まえてしまうものもいるし、クモの巣からクモを捕まえるものもいる。そして、その獲物を前脚から出る糸でくるみ、包装してから渡すものもいるというから面白い。

 ヒトの恋愛には、不安や嫉妬がつきものだが、昆虫はそんな面倒な感情を持たない代わりに、自分の遺伝子を優先的に残すためには手段を選ばない。一番直接的な方法は、自分が交尾したあとに、ほかのオスと交尾させないこと。マイマイガやオンブバッタ、甲虫がその例にあたるが、他のオスを警戒し続けるという。まるで嫉妬深い人間のような行動には面白さを感じる。

 昆虫はフェロモンによって相手を見つけ出すというが、人間は近親相姦を避けるために思春期の娘が父親の匂いを嫌悪すること以外では、その能力がほぼ退化しているというのも何だか悲しい。人間のどこが高等な生き物だといえるだろうか。勘違いも甚だしい。読めば読むほど、昆虫の社会も大変そうな気がしてくる。宇宙の壮大さを知るよりも、昆虫達の世界の深さを知る方が、「もしかしたら、自分の悩みなんてちっぽけなのかも」と思わされるに違いない。

文=アサトー ミナミ

ダ・ヴィンチニュース

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