不覚にも涙。スーパーモデル「冨永愛」の憎悪と痛み、そして“再生”の半生

ダ・ヴィンチニュース / 2014年11月14日 12時10分

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『Ai 愛なんて 大っ嫌い』(冨永愛/ディスカヴァー・トゥエンティワン)

 「冨永愛」といえば、ファッション界では特別なアイコンだ。17歳で単身渡米、その日本人離れしたスタイルであっという間にスーパーモデルに上り詰め、世界の名だたるメゾンのコレクションに出演。モデルの頂点を極めた、まさに「選ばれたる者」の一人だ。コレクションを離れ、生活の拠点を日本に移してからも、その活躍はめざましい。

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 こんな「超セレブ」の半生記、となれば、普通なら輝かしい成功の日々を綴った、誰もが憧れる「シンデレラ・ストーリー」が相場だ。『Ai 愛なんて 大っ嫌い』(冨永愛/ディスカヴァー・トゥエンティワン)を手に取るまではそう思っていた。

 が、予想はまったく外れた。表紙からしてそんな気配はまったくない。刺すような目をした殺伐とした表情のモノクロのアップ。真っ赤なタイトル。そして「ぶっ殺してやる」から始まるエピローグ…。始まりから「ドン引き」の連続だ。背が高いということ、それがいじめの的になり、それから逃れるため、短所を長所に生かすためにはじめたモデルの仕事が、さらにやっかみを生み…。そこに複雑な家庭環境が追い打ちをかける。凶暴な怒りに満ちた、惨めで暗い少女時代。普通なら封印してしまいたくなる過去、そして当時の感情を、著者はそのまま文章にぶつけている。

 そしてニューヨークでの生活。世界最先端のファッション業界で生き抜くための過酷な戦いの日々。きつい毎日だけれど、著者が感じた特別な高揚感、充実感と共に、華やかな世界で頂点を極めて行く様が綴られ、ここまでなら芝居を地でいく「強い女のサクセスストーリー」といった趣だ。

 それが息子のある言葉、「僕なんて生まれてこなければよかった」という一言でがらがらと崩れていく。息子の言葉の重さに、同じ親として思わず涙してしまった。こんなことを言わせてしまったなんて、感じさせてしまったなんて。ここで初めて彼女は立ち止まるのだ。自分以外の「他者」と真剣に、愛を持って向き合い、関係を繋ごうと奮闘し、その結果の入院…。

 突然の空白の時間、彼女は自分の過去を丹念にふり返り、それがいかに今の自分と繋がっているのか再発見し、一種の感謝の想いと共にそのすべてを受け入れた。自分を見つめ直すその過程で生まれたのがこの本だった。だからこそあれほど赤裸々に、その時その時の気持ちが綴られていたのだ、と改めて納得。彼女にとってこの本は、新しく生き直すための出発点だったのかもしれない。いま幸せだという彼女の最後の言葉、そして表情に救われた。有名人の自伝というより、ある一人の人間の「破壊と再生の物語」として味わいたい一冊。

文=kawapara

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