体の欠損を武器に、異形の一座は力強く逞しく戦時を生き抜く『五色の舟』

ダ・ヴィンチニュース / 2014年11月16日 5時50分

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『五色の舟』(近藤ようこ:著、津原泰水:その他/KADOKAWA エンターブレイン)

 『五色の舟』を読み切ってまず一番に思ったのは、これはとんでもない漫画だな! というものでした。身体欠損のある「異形」の男女5人が一座を作り、自分の体を「見世物」として渡り歩く。こうして文字だけで表すと、頭の固すぎる人が読めば口角泡を飛ばして非難されかねないモノのようにも見えてしまいますが、ところがどっこい。一座が過ごす日々は悲惨さよりもむしろ凛々しさ、力強さが伝わってくるものとして描かれています。

【画像あり】『五色の舟』中面をチェック

 時は第2次世界大戦末。広く一般庶民も食べるに事欠くありさまで、見世物一座などではとても食っていけない時代。…かと思いきや、むしろそんなご時世だからこそ、ひっそりと「異形の一座」の見世物を望む金持ちがおり、食べるに困るということはなかったのです。肩から直接指が生えている手無しの少年・和朗(かずお)、シャム双生児だったのを分離手術で生き残った少女の桜、体が子ども以上に大きくならない代わりに無双の怪力を持つ昭介、足の関節が逆に曲がるようになっている女性の清子、そして両足を脱疽で失った、一座の主であり家族の父でもある雪之助。彼らは岩国へ「くだん」を買いに旅にでます。くだんとは人の顔をした牛で、そして未来を予知する力をもつという化け物。一座に迎えれば一生食うには困らないはずだ、と向かった先で彼らに待ち受けるのは…

 異形であるがゆえに生まれてすぐに捨てられたり、人前に出ないように座敷牢に閉じ込められていたりと、一座の皆はそれぞれ辛い目にあっています。そんな日本のムラ社会の闇を抉るように描きつつも、彼らの家族としての絆は眩しいほど強いものでした。追い詰められて、切羽つまったときに、彼らが「家族」の幸せを叫ぶように願った姿にはひどく胸を打たれます。本当に幸せとはなんだろう、と考えたくなる見事な1冊でした。

文=猫梳なりや

ダ・ヴィンチニュース

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