憧れのヒーローに変身! でもその姿が「魔法少女」だったら…?

ダ・ヴィンチニュース / 2014年12月3日 11時30分

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『俺とヒーローと魔法少女』(九段そごう/ほるぷ出版)

 人は誰しも、多かれ少なかれ「変身願望」を抱いているように思う。今年ブレイクした「ざわちん」の整形メイクに憧れる女子たちや、「男の娘」と呼ばれる女装男子たち…彼らに共通するのは、「自分ではない何者か」への変身欲求だろう。でも、これは何も特異なことではない。ぼくも、「ドラえもん」や「○○レンジャー」になりたいと、半ば本気で思っている時期があったものだ…。

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 でも、「変身すること」は叶っても、それが自分の理想像とかけ離れていたら…? そんなテーマをギャグテイストに落とし込んで描いたマンガが『俺とヒーローと魔法少女』(九段そごう/ほるぷ出版)だ。本作は、ニコニコ静画やpixivにて公開され人気を集めた作品。その人気ぶりを受け、このたび書籍化が実現した。

 物語の舞台となるのは、「マグロ怪人」や「ヤギ怪人」など、ちょっとマヌケな怪人たちがはびこる世界。そんな怪人たちを退治するために必要不可欠なのが、ヒーローの存在だ。街には、ヒーローに変身するための道具を扱う「ヒーロー道具店」が存在し、素質のある者はヒーローになって怪人たちと戦うことができる。

 主人公の十文字ハヤト(仮面ライダー好きにはたまらないネーミングだ!)も、怪人たちと戦うヒーローのひとり。ただし、彼が変身するのは、なんとキラキラの「魔法少女」なのだから、思わず吹き出しそうになる。

 街中で暴れる怪人の前で変身すれば、「大の男が魔法少女に変身!ってか? ウケるー!」「やっだー! かわいい、なにこれー!」と舐められ、助けだした人々からは「女の子に変身した? …コスプレ?」「ちょっと…反応に困るな」などとヒソヒソ耳打ちされる始末。そう、誰も彼を「カッコいいヒーロー」として見てはくれないのだ。戦いが終わるたび、「もうこんなヒーロー辞めよう…」と涙を流す十文字の姿は、滑稽でありながらも少し可哀想でもある。

 とはいえ、愚直なまでにも正義感が強い彼は、変身することを辞められない。怪人に襲われている人の姿を見れば、その後の展開など気にせず魔法少女になり、戦いに身を投じるのだ。その姿は、まさに「ヒーロー」そのものだろう。…ちょっとウジウジ悩みすぎ、という気もするが。

 第1巻のラストでは、華麗に戦う女子高生ヒーローとの共闘も描かれる。が、その女子高生がクセモノだ。魔法少女姿の十文字を見て、「仲間ができた」と喜ぶ彼女は、大の「男のヒーロー嫌い」。十文字に対し、「男のヒーローはプライドが高い割に、肝心な時に使えない」と吐き捨てる。もちろん、魔法少女の姿とはいえ、十文字もれっきとした男。もしも正体がバレてしまったら、どんな目にあわされるかわかったもんじゃない。なんとなく危険な展開を察知し、すぐに立ち去ろうとするが、偶然にも女子高生の前で変身が解けてしまう。間接的にではあるが、女子高生を騙してしまった十文字の命運は…。あー、先が気になる!

 人は必ずしもなりたいものになれるわけではない。そうなった時に、一体どうするのか――。理想のヒーローになれなかった十文字と、思い通りの人生を歩むことが難しい現代を生きるぼくらは、きっと似ている。そう思うと、全編ギャグテイストに彩られた本作も、違う読み方ができるような気さえしてくる。「ドラえもん」にも「レンジャー」にもなれなかったぼくとしては、十文字のこれからを全力で応援していきたい。

文=前田レゴ

ダ・ヴィンチニュース

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