震災後さらに格差が広がる“新幹線事情” とは

ダ・ヴィンチニュース / 2014年12月25日 12時0分

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『思索の源泉としての鉄道』(原武史/講談社)

 単なる交通機関というよりも日本固有の文化のひとつ、といっても過言でない鉄道。列車だけでなく、その駅や鉄道にまつわる地域に対する思いをつづったのが『思索の源泉としての鉄道』(原武史/講談社)。

【画像あり】『思索の源泉としての鉄道』中面をチェック

 「テツオタ」は数あれど、著者のように鉄道を主軸に歴史や社会を観察できる人は希有なのではないでしょうか。確かに、日本国内には鉄道にまつわる物語には事欠きません。地方の小さな街や村にとっては鉄道の存続はそのまま地域社会の生死を決めてしまうほど重要な問題です。ことに震災後の鉄道復興は地元にとって非常に深刻なテーマ。新幹線の開業は東京や遠い人間にとっては喜ばしいことでも、実際地域では新幹線が通らないがための劣勢が必ず存在する、それが震災後に更に格差を広げていると著者は警鐘を鳴らします。

 東北地方の在来線でも太平洋沿岸で全線復旧したのは八戸線だけで、小さなローカル線の紡ぐ景色は単に廃線という話だけで消え去ってしまう。そうした著書の主張は非常に説得力があり、日本人が大好きな鉄道旅行の醍醐味が失われてしまう危険があります。旅の叙情は新幹線の便利な旅だけでは実現できないはず。鉄道好きな国なのに、効率と経済だけでローカル線の存続が決まってしまうという残念さ。

 普段あまり思いを馳せることがないこうしたテーマを深く考えさせてくれる好著の後半は、沿線文化の妙や、天皇家と列車の関係も日本ならではの逸話がつまり、秀逸。テツオタでない方々にもおすすめです。


文=ワイコブ

ダ・ヴィンチニュース

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