ノムさんがひょう変! あの大谷翔平を絶賛「老い先短い人生の、新たな楽しみ」

ダ・ヴィンチニュース / 2014年12月29日 11時30分

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『強打者列伝』(野村克也/KADOKAWA 角川書店)

「外野手出身に名監督はいない」

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 広島カープのみならず、WBC日本代表の監督をも務めた山本浩二を指して、こう語るのは野村克也、そうノムさんである。

 その理由は「たいがいの外野手が守っているときに考えるのは、せいぜい守備位置くらい。(中略)外野手という人種は、隙を見て相手の嫌がることをするという発想が乏しい」から。外野手出身の山本浩二は、だからこそ監督として成功できなかったのだという(監督山本は、カープでは10シーズン戦って優勝1回のみでBクラス7回、WBCでは準決勝で敗退)。

 この論が正しいのなら、イチローが、松井秀喜が、監督をやったらどうなるだろう? その答えはまだ知る由もないが、一つ、野球を見る楽しみが増えるというものだ。

 さて、ご紹介したくだりはノムさんの新著『強打者列伝』(野村克也/KADOKAWA 角川書店)の一節である。同書は「プロ野球史上最強の打者は誰か?」をテーマに、あらゆる時代、あらゆるタイプの強打者を技術や人物など様々な面から、ノムさんが評していく一冊だ。

 本書で「強打者」とするのは「タイトルを獲得している」「クリーンナップの一角を10年以上務めた」「チームの中心選手として他の選手の手本となる」といった条件を満たしている打者のこと。

 そういう意味で、強打者と評するのを「正直いって、ためらいがある」とノムさんに言わせるのが、番長・清原和博だ。ノムさん自身、清原の才能を高く評価していたものの「才能をフルに開花させることなく終わった」という。清原が歴代5位の通算本塁打数525本を放っているのにも関わらず、期待以下とは…。

 なぜか。その理由を清原自身の“勘違い”“勉強不足”だと指摘する。

 現役時代の清原といえば、野茂や伊良部らと繰り広げてきた力対力の勝負が印象的だが、それすらもノムさんに言わせれば「勘違い」。そもそも、その力とは体力だけではない。知力、気力の力でもある。事前にデータを集め、研究した上で相手と戦うことこそが真の力対力なのである。繰り返し「清原にもっと勉強意欲があれば…」と残念がるノムさん。

 確かに、(野球のプレーで)もっとスゴい清原、見てみたかった…。そう思う野球ファンは少なくないだろう。

 そこで気付くのだ。ノムさんは偉大な野球選手であり、監督であり、人気の野球評論家だが、同時に彼は、愛情深くプロ野球を見つめ、期待し、応援する偉大なるファンでもあると。だから、彼の言葉は面白い。ボヤキ、ネタミなどが入り交じる毒舌に、不思議な魅力が宿るのはそのせいだろう。人々が、ついその言葉に耳をかたむけ、文章に読みいってしまうのは、プロ野球が好きで好きでたまらないという愛情が端々からにじみ出てくるではないか。

 そんな野球ファン野村克也が、見事なくらいに現れているページがある。本書の最後「大谷翔平」の節だ(本書では複数の現役選手についても言及している)。投打の二刀流について「プロをなめるな」と語っていた評論家・ノムさんがひょう変し、いつの間にか大谷の未来に対して素直にワクワクドキドキしているのだ。そしてそれを隠そうともしない。その口ぶりは、まるで憧れの選手のことを嬉々として語る野球大好き少年のようだ。もう、読んでいるこっちが嬉しくなるくらいである。その口ぶりはぜひ本書で確かめていただきたい。

 現在、プロ野球はオフシーズン。未来の強打者たちはその称号を得るべく圧倒的で血の滲むような努力を、今も続けているだろう。そんな選手たちに思いを馳せながら読んでほしい一冊である。

文=仁藤留

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