恋愛、事件、超自然現象! エンタメ要素てんこ盛りのお仕事時代小説

ダ・ヴィンチニュース / 2015年1月7日 11時30分

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『貸し物屋お庸 江戸娘、店主となる』(平谷美樹:著、げみ:イラスト/白泉社)

「あれ、朝宮さん、平谷美樹も読まれるんですか?」
 平谷美樹の新刊をレビューすることが決まった直後、編集者にこう声をかけられた。
 知っている人はほとんどいないだろうが、私は日本でも数少ない(って他にいるのか?)「怪奇幻想ライター」だ。ホラーや怪談なら専門分野である。当然、平谷美樹をスルーする手はない。
「読んでますよ。「百物語」シリーズ、『ヴァンパイア 真紅の鏡像』、『呪海 聖天神社怪異縁起』。どれも面白いですよね」
「なら、『××××』も読んでますよね」
 どうやら彼も平谷美樹ファンらしい。ある作品タイトルをあげて尋ねてきた。
「あ、それは読んでません」
「残念ですねー、傑作なのに。じゃ『××××』は読んでますよね?」
 別の作品をあげてくる。なかなか詳しいじゃないか、編集氏(汗)。そちらも読んでいませんと応えた瞬間、編集氏の目に「ホントにファンなのかい?」という疑惑の色が浮かんだのを、私は見逃さなかった。言い訳をするようだが、私がこれまで中心に読んできたのは、平谷美樹のホラー・怪談系の作品。編集氏が好きなのはSF系や時代小説だったので、こんな行き違いが起こったのである。

まったく新しいキャラクター時代小説シリーズ「招き猫文庫」創刊

 この例からも分かるように、平谷美樹はジャンルを横断して、旺盛な執筆活動を展開している小説家だ。デビュー作は小松左京賞受賞のSF『エリ・エリ』だが、今やホラー、伝奇、時代小説、怪談実話、さらには釣り小説まで、手がけないジャンルはないのではという多才ぶりを発揮している。しかも、いずれもエンターテインメントとして手抜きのない安心の高クオリティ。執筆ペースの速さも含めて、これは驚くべきエンタメ職人ぶりといえるだろう。

 今回発表された『貸し物屋お庸 江戸娘、店主となる』(平谷美樹:著、げみ:イラスト/白泉社)は、江戸で人気の貸し物屋・湊屋の出店(支店)を任されることになった少女・お庸を主人公とした時代小説だ。といっても、そこは作者のこと、ファンタジーやミステリ、ホラーの要素を盛りこんで、にぎやかでぜいたくな、娯楽性の高い世界を作りあげている。
 あらすじをざっと紹介するとこうだ。
 主人公のお庸は、大工の棟梁・儀助の一人娘として育てられていた。ある夜家に強盗が押し入り、儀助夫妻は殺されてしまう。背中に重傷を負いながらも一命を取りとめたお庸が向かったのは、「よろず貸し物 無い物はない」がうたい文句の貸し物屋・湊屋だった。風変わりな店主・湊屋清五郎の力を借りて、両親の仇を討つことに成功したお庸。彼女は力を借りた損料(レンタル代金)として、湊屋の出店を任され、そこで働くことになる。

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