中谷美紀「普段の私は、コートのボタンがとれても自分ではつけないタイプです(笑)」

ダ・ヴィンチニュース / 2015年1月8日 11時30分

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『繕い裁つ人』(池辺 葵/講談社)

 毎月3人の旬な有名人ゲストがこだわりのある一冊を選んで紹介する、ダ・ヴィンチ本誌の巻頭人気連載『あの人と本の話』。映画『繕い裁つ人』で、頑固で真っ直ぐな洋裁店の二代目・市江を演じた中谷美紀さんが考える「洋服」の持つ意味とは……。主演映画『繕い裁つ人』について「自分が決めた限界を超えたい、自分を縛っている何かを壊したいと思っていらっしゃる方には、何かしら感じていただける作品ではないかなと思います」と語る中谷美紀さん。

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 洋裁店のお話だけあって、劇中では、ファッションクリエイター・伊藤佐智子さんの手による数々の美しい洋服が登場する。なかでも印象的なのは、市江のブルーの仕事服だ。

「実は、生地も結構硬くて、着て作業しやすいかというとそうでもないんです。彼女にとって、あの服は接客業としてお店に立ち、また職人としてミシンを踏む時の鎧だったのかもしれません。私たちは、どんな人間でも社会の中で与えられた役割を演じているものだと思います。洋服は、その与えられた役割を表現する手段の1つで。自分に欠けているものを補う鎧であったり、あるいは何かを隠すためのものでもあったり……。私自身も普段の自分と、主演として人前に立つ時と助演として人前に立つ時と、ある程度着るものは異なります。劇中にもなかなか外に出られなかった少女が、一枚の洋服によって気持ちが変わるというエピソードが出てきますが、人を動機づける大きな力を洋服は持っている。その代わり、自己顕示欲を表すような空虚なものにもなりがちだとも思うので、気をつけたいですね」

 洋裁店店主として、勢いよくミシンを踏んだり、鮮やかに裁ちばさみを使ったりする姿が美しかったが、やはり中谷さんは以前から裁縫が得意だったのだろうか。

「いいえ、まったく(笑)。テイラーにうかがってボタンつけをさせていただいたり、洋服を作っている友人のところに行って作業を一日眺めたりして、勉強しました。練習段階ではだいぶ布を無駄にしてしまいましたね。普段の私は、コートのボタンがとれても自分ではつけないタイプです(笑)」

 そんな中谷美紀さんが選んだ一冊は、『陰翳礼讃』(谷崎潤一郎/中央公論社)。――厠については「昔風の、うすぐらい、そうしてしかも掃除の行き届いた厠へ案内される毎に、つくづく日本建築の有難みを感じる」、羊羹については「あたかも室内の暗黒が一箇の甘い塊になって舌の先で融けるのを感じ」……暗がりの中に美を見出す、日本独特の感覚について谷崎が語り尽くす。昭和8年初出。

取材・文=門倉紫麻

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