レシートは語る第6回 「オーケー」の強さの実態 購入データから見えた周到な戦略
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2021年12月12日 20時55分
ソフトブレーン・フィールド(東京都/木名瀬博社長)は、全国に約80万人の協力モニターを擁し、日本初のレシートによる購買証明付き・購買理由データベース「マルチプルID-POS購買理由データPoint of Buy(ポイント・オブ・バイ:以下、POBデータ)」を有している。月間1100万枚のレシートを収集し、リアル消費者購買データベースとしては国内最大級の規模となる(提携サイト含める)。
このPOBデータと協力モニター(以下、POB会員)へのアンケート調査を活用すれば、消費者から見た小売りチェーンの実態を明らかにすることができる。本連載では毎回、業界で関心の高いテーマを設定して独自調査を実施し、その結果をレポートする。
連載第6回目は、「高品質・Everyday Low Price」を掲げ、成長を続ける食品スーパー(SM)大手のオーケー(神奈川県/二宮涼太郎社長)にクローズアップ。大手食品小売チェーンである「イオン」「ライフ」「ヤオコー」との比較対により、その購買動向を分析した。
オーケーの死角は
「総菜のおいしさ」にあり!?
まずは消費者アンケートで、各チェーンのメーン利用者に「支持する理由」を尋ねた(全国エリア:2021年8月20日~23日実施、N=オーケー272人、イオン551人、ライフ224人、ヤオコー82人、計1129人)。
その結果、「オーケー」は他チェーンと比較して、「商品全般の価格が安い82.7% (平均29.2%)」が最も多く、価格に対する満足度が抜きん出ている(図表1)。モニターのコメントを見ると「圧倒的な安さで他店と比較しないで買物できる」などのコメントがあり、「他店より安い」というイメージが消費者に醸成されている。
また、「買いたいと思う商品がある(25.6%)」という項目では、「欲しい商品がいつもあり20年以上通っている」という声もあがっており、利用者のニーズ・利便性を意識した店づくりができていることがうかがえる。
一方、オーケーは「生鮮品の品質がよい(9.9%)」や「総菜がおいしい(8.8%)」は、同じ食品スーパーの「ライフ」「ヤオコー」を下回っており、消費者から未だ高い支持を得られていない部分と言える。現在、積極出店中のオーケーに対して、競合チェーンが対抗できるポイントとも言えるかもしれない。
進む名物商品の育成と
水産商品の冷凍化
次に、購入レシートにおけるカテゴリー出現率を分析した。
図表2は、各チェーンの購入レシート枚数に対するカテゴリー出現率を表したものだ。「オーケー」は、「パン・シリアル類(27.4%)」「水物※豆腐や納豆などの大豆加工食品(21.9%)」、「乳飲料(21.9%)」、「ヨーグルト(16.0%)」といった購入頻度が高い日配品のレシート出現率が高い。また、「畜産(26.8%)」もよく買われている。
先ほど、ライフやヤオコーと比較して「おいしさ」の点では支持が高くなかった「総菜類」だが、レシート出現率は29.3%と低くない。モニターからは「お弁当が安くて助かる」や「手作りピザがワンコインで買える」といったコメントが挙がっている。
レシートデータから購入商品をみると、「8品目のキャベツとレタスのサラダ(平均単価106円)」「おにぎり(平均単価57円)」「ロースかつ重(平均単価273円)」など、驚くほど低価格な特定商品の名前が多く挙がっており、目的買いされる商品が育成できていることがわかる。
近年オーケーが売場を広げている「冷凍食品」も、出現率は17.7%とやはり高い。出現率の高い商品を順にあげると、「日清フーズ ママー(4.8%)」「ニチレイ ブロッコリー(3.7%)」「イートアンド 大阪王将(3.6%)」とナショナルブランドが占める。
一方で、「シーフードミックス」や「冷凍塩サバフィレー」といった冷凍水産加工品も一定のシェアがあり、業界全体で魚離れが叫ばれるなか、冷凍加工品で水産の売上を獲得できると言える。
調査結果で強さ歴然!
低価格を実現し全体売上高を伸ばす
さらに21年1月~10月までのレシートデータを分析し、購入状況を比較した(図表3)。
オーケーのレシート1枚あたりの平均単価は198円と最も低い。一方で平均購入点数は8.3個、平均購入金額は1647円で、3チェーンを上回っている。
このようにオーケーは、他チェーンよりも低価格を実現し、それが消費者からの支持につながり、購入点数・金額で競合に差をつけていることが調査結果に表れている。
そして今回の調査結果からは、購入頻度の高い日配の訴求、精肉の高い支持、名物商品の育成、消費ニーズの高まる冷凍食品ニーズへの対応なども強さの理由となっていることがわかった。同業他社はこれらオーケーの強さの実態を把握したうえで対策を講じるべきであろう。
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