人材入れ替えと組織再編で「戦う集団」に!アパレルの雄・ワールド復活の戦略とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2021年12月9日 20時55分
アパレル大手のワールド(兵庫県)が11月に発表した2022年3月期中間決算の連結業績は、売上高が773億3300億円(対前期比2.2%減)、本業の稼ぐ力を示すコア営業利益は対前期比で64億8300万円の大幅改善となったものの、計画には30億円及ばず、19億700万円の赤字だった。
セグメント別では、主力のブランド事業が構造改革に伴うブランドの終息や不採算店閉鎖の影響もあり、対前年同期比で売上はわずかに減ったものの利益は大幅増益。デジタル事業は、ネオエコノミーの先行投資により、外部売上が二ケタ成長となったものの、損益面では赤字が拡大。プラットフォーム事業も減収減益となった。
「強いアパレル」を復活させるとともに、デジタル事業、プラットフォーム事業というワールドの強みを活用した新たな事業の伸長を進める、ワールドの戦略をまとめた。
復活へ向け課題ごとに分類し設定したロードマップ
![ワールド、ブランド事業復活へのロードマップ(同社22年3月期中間期決算説明資料より)](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2021/12/e365f5970da8560d7f0be11f54fd9a89.png?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=3e659f1caea72db11f4235906fe13686)
復活へ向け、ワールドは課題事業を状況ごとに3つに分け、ロードマップを設定。それぞれ「コロナ禍以前から課題のある事業」「コロナ禍で急激に業績が悪化した事業」「コロナ禍で悪化して回復傾向が鈍い事業」とカテゴライズし、課題を明確にすることでより踏み込んだ改善を推進していく。
具体的には、コロナ禍以前から課題のある事業に対しては、社外人材を積極登用し、「血を入れ替え」て構造改革を断行する。外部人材を「自燃性人材」とする一方で、既存の変革マインドのない人材を「不燃性人材」とし、「総入れ替えも辞さない」覚悟だ。キッチン用品専門店の212KITCHEN STOREはすでに復活し、アパレルのDRESSTERRIORも成果が出始めているという。
コロナ禍による業績悪化は、人流に直接的な影響をもたらしたいわば“災害”であり、自然回復も見込める。だが、それ以前からの課題事業は抜本的な改革以外に復調は考えられない。それだけに、源泉となる人材への期待感は自ずと強烈になる。
コロナ禍で急激に業績が悪化した事業、コロナ禍で悪化して回復傾向が鈍い事業については主に既存人材を投下。併行して、構造改革の断行とマネジメント人材、ミドル人材への外部採用を積極的に行うことで推進力を高め、停滞を脱する。
こうしてみると、課題状況別のロードマップは、極めて実践的な人材育成も兼ねており、その成果はそのまま同社の復活への進捗状況とリンクする。
体質改善で人的リソースを最大化
低迷の元凶を「かつての成功モデルへの固執」と据える鈴木信輝社長。それだけに、改革へ向けては「妥協」の二文字はない。「戦う集団への再生に一切の聖域はなく、躊躇なく舵を切る。成果を出した事業には投資を再開する」と抜本変革を語る言葉には力がこもる。
ポイントは、決して外部人材頼りではなく、あくまでも体質改善が軸であるという点だ。
「いろんな外部の人材に入ってきていただいているが、我々が常識だと思っていること、お店の作り方と見せ方とか、彼らから見ると古かったりちょっと違ったりするということをどんどん指摘いただき、リセットして欲しい」と鈴木社長は、既存人材にも期待するからこそ、起爆剤としても外部人材に期待を寄せる。
その上で、鈴木社長は「アパレルブランドの復活なくして、ワールド復活なし」と力説。あくまでもブランド、ファッションが同社復活のコアであることに変わりないことを繰り返した。
鈴木社長が目指す「戦う集団」は、ライバル企業はもちろん、消費者、そして社会とも戦える熱量にあふれる人材の集まりを意味する。そうなって初めて、先行きが読めない情勢でも生き残れる、強い企業体への脱皮を果すことが可能になる。
新生ワールドで再び、アパレルの雄として存在感を
![中期ビジョンで、雑貨、EC、新規事業を新たな収益源の3本柱に](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2021/12/7e1c4ba76ec04edb8103afc5bcf2686c.png?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=d7d126fc5bbd1a11188a358b3febedd4)
中期ビジョンでは、新たな収益源として「雑貨」「EC」「PF(プラットフォーム)外販」を3本柱に掲げる同社。これら事業にも外部人材が積極投入される。加えて、M&A(合併・買収)やシステム投資も状況に応じて行い、低迷脱却へ経営資源を最適かつ最大限に分配する。
60年以上前に卸からアパレル事業に参入し、変革しながら成長を続けてきた同社。かつてない危機ではあるが、歴史を振り返れば、ピンチを着実に進化につなげ、ステップアップを実現している。
大量リストラなど、痛みを伴う構造改革には一定のめどがついた。下期ではコア営業利益の黒字転換を見込み、いよいよ復活へ向け、アクセルを踏み込む。
アパレル業界の勢力図は、いまや強大な一強を除けば、多様性に富む群雄割拠状態ともいえる。もはやかつての地位は揺らいでいるが、それだけに、過去との決別覚悟で復活を期する同社が、どんな姿で復活を遂げるのか?そのプロセスも含め、注視しておくべきだろう。
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