Z世代の衝撃#4 Z世代を追えば敗北必至!取るべきトーキョー・ショールーム・シティ戦略とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2022年1月3日 20時55分
過去3週に渡って解説してきた「Z世代の衝撃」も今回で最終話。この「Z世代の衝撃」を読み、あなたは何を感じたか。「次の10年を生き残るため、Z世代攻略法のヒントが見えた」あるいは、「そんなことはわかっていたことばかりだ」などと感じている人は、いわゆる古代哲学の「イデアの洞窟」に閉じ込められている「囚人」だ。イデア論を知らない人は論外。一般教養を学ばないから「アパレル村の住民」などといわれ、業績悪化の原因を「天気」と「トレンド」の責任にしかできない。
Z世代の衝撃の結論をかみしめ、理解し、ぜひ具体的な戦略の実行へと移して欲しい。もしあなたがこのまま進めば、敗北は必至なのである。
Z世代を取り込みたいあなたにとって、不都合な真実とは
私がこの連載、「Z世代の衝撃」で言いたかったのは、第一話では、まことしやかに語られる「ライブコマースが勝利の方程式」などという的外れな論調、第二話ではZ世代の多くはBTSやBLACKPINKなどにシビれ、インスタのコンバージョンも韓国企業であるDholicや中国Sheinなどアジアの新興勢力にすでに支配されていることだ。
今から10年後、SDGs教育により買い換えサイクルが長くなり、古着マーケットは拡大すると見られている。その一方で今の日本を代表するアパレルのターゲットである50-60代の中高年は現在人口構成比で60%を占めるがこの割合が約7ポイントも減少する。
そこで第三話では、古着マーケットの可能性を探った。だが、日本のオジさん、オバさん向けのアパレルの古着などいくら売ってもZ世代は買ってもくれないことを解説した。
さらに、政府が湯水のように貸してきたコロナ融資が手のひらを返したようにストップした一方で、2021-22秋冬は在庫の仕入れすぎで現金は減少。このコロナ融資は10年後に一括返済しなければならないのだが、この時産業界に爆弾が落ちる。さらに、PLMなどデジタルツールに対して、アパレルや商社が戦略無く、無駄な投資をあちこちで行うものだから、バリューチェーンの流通コストが膨れ上がった。もはやファーストリテイリングやグローバルSPAに勝とうなどということも不可能になってきた。
つまり私は、あらゆる統計や公開資料を見ながら、Z世代を分析し、このセグメントに入ることは死を意味することを伝えてきたつもりなのだ。
以上の環境要因から、今後10年でアパレル小売市場は10〜15%減少し、5兆円程度になると私は見ている。こんな世界があと10年でくるのだから、この先5年は既存事業と新規事業を同時に稼働させ、複数の事業に濃淡をつけ、投資をしたり止めたりすることで、会社全体のバランスをとるプロダクト・ポートフォリオ・マネジメント(PPM)戦略を採用すべきだ。
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人口のわずか13%!Z世代の取り込みに、うまみはあるのか?
Z世代のマーケティング分析を複雑に語る前に、そもそも、このセグメントを日本のアパレルが狙い勝てるのか、事業としてうまみがあるのか、という視点がすっぽり抜け落ちている。多様な分析が横行しているが、アパレルもアナリストもコンサルも局所的視点から抜け出せていない。私の答えは上記通り「NO」だ。
考えて欲しい。ユニクロは銀座の旗艦店限定で品川の自社工場で生産された「Made in Tokyo(メイド・イン・トーキョー)」の3Dニットを販売した。これは、「ホールガーメント」という無縫製横編機を導入した、おそらくファーストリテイリング初の自社工場なのだが、私はあれば「冗談」ではないかと思っていた。理由はシンプルだ。日本のアパレル市場はすでに8兆円を割り込んでいる(矢野経済研究所によれば7兆5000億円)。そして、その98%がオフショア生産だ。
このようにいうと、必ずでるのが「それは数量でしょ、金額はもっと少ないよ」という反論だ。ちなみに金額ベースでは約80%で、国内生産は20%しかない。例えば、アパレルの仕入は売上のおよそ半分、ユニクロのようにライトオフまでの期間が長い商品の場合はもっと多いかもしれないが、暫定的に2兆円とおいて売上の半分にすれば1兆円である。つまり、同社は毎年約1兆円を調達することになる。7.5兆円の20%は、1.5兆円だ。つまり、ユニクロが国内生産を開始したら、ほぼ国内に存在する工場がすべて埋まる計算になり、これはMDバランスや同社の価格などを考えれば不可能である。国内では、ニットのリンキングができないため、ユニクロからニット商品が消滅し、すべてが縫製によるカットソーとなるということからも現実性がない。
ユニクロがこんな簡単な計算をしていないはずもない。だから、「メイド・イン・トーキョー」の意味は、来るべきESG経営時代に備えた生産のトレーサビリティだという論調は、全く的外れとなる。
トーキョー・ショールーム戦略以外、論理的な解はない!
私が再三 TOKYO BASEを例に持ち上げていることに対し、違和感を感じている人が多いようだが、考えて欲しい。同社は、コロナ下においても40%
両社に共通する戦略は、来るべき10年後に備え、日本市場に見切りをつけ、むしろ日本 それも東京(Tokyo)をアジアのファッションリーダーシティとして、中国の富裕層や成長著しい東南アジアからマネタイズするポートフォリオを組んでいるということなのである。これは私が提唱する、Tokyo showroom city(トーキョー・ショールーム・シティ)戦略と完全に一致する。
日本市場は10年後には人口の1/3が65歳、つまり、退職者となり、2050年に人口は1億人を割る。日本は戦前・戦中に、戦闘兵士を量産するため「昭和35年までに人口を1億にする」という国家戦略で、国民に「産めよ増やせよ」という標語をすり込ませ、今に至っている。つまり、一人あたりGDPは現在2021年で韓国に抜かれ30位に下落している(IMF統計)にも関わらず、単に人口が多いというだけでGDP世界第3位となっているのである。その唯一の強みである人口ボーナスは、少子高齢化により子供を産まない夫婦、そもそも結婚しない人が増え老人国家の道をまっしぐらに歩んでいる。
人口構成比でいえば、Z世代など総人口の13%しかいない。そんな小さなセグメントを狙い、すでに韓国、アジア企業にがっちり心も財布も押さえ込まれていて、学校教育により「無駄な消費を控えよ」と教えられている世代をあなたたちは本気で狙い、またアパレル企業同士で潰し合いを続けるつもりなのか、というのがこの「Z世代の衝撃」の最後を締めくくる言葉だ。
論理的に考え、日本のアパレルが生き残る手立てはトーキョー・ショールーム・シティ戦略しかない。売れない店舗をショールームにし世界観の「体験場」
2万社のアパレル企業は、
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プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)
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