アパレルをオワコン化させているのは「人災」であるこれだけの理由
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2022年3月14日 20時55分
世界のアパレルビジネスについて、海外のアナリストと意見交換をしてゆくと、日本が「周回遅れ」どころか、なんど回っても追いつかないほどその差は離れていることが分かる。今回は、日本の市場もさることながら、ビジネスモデルそのものも世界で競争できる状況ではないこと、また、産業界は大きな転換点にありながら「既得権益」によって、産業界の新陳代謝が全くすすんでいない実態を解説する。
余談だが、先日、私はIFIビジネススクールで卒業生を送り出した。彼らに半年かけて教えたことはたった2つだ。一つは、「既成概念を疑え」ということ。もう一つは、「すべてを最終消費者にとっての満足度を基準に考えよ」ということだ。今期の卒業生は、私の考えをよく理解し、そして、全く既成概念に捕らわれていない素晴らしいビジネスモデルの骨格をつくってくれたようだ。私が最後に彼ら、および、彼らの会社に送った言葉は、あなたたちの戦略立案スキルは自分がおもっている以上に素晴らしいものだ。決して、ビジコンのテレビゲームに興じるが如く、概念設計のみを行ってリアリティのある感覚を忘れないでもらいたい、だった。まだ荒いとはいえ、彼らのつくった「次世代を生き残るためのビジネスモデル」をたたき代に、「30代プロジェクト」を立上げ、現実化することを、彼らの企業の経営者は手伝ってもらいたい。
アパレル産業界の参謀になる人を募集!
やや営業的な内容になるが、本意はそうではないことをくみ取って頂きたい。
今回、IFIビジネススクールの別組織、IFI総合研究所で私が主幹を持つFB(ファッションビジネス)委員会で「DXとD2CによるESG経営」研究会を立上げる。
この研究会の目的は、政策立案、企業のデジタル戦略、D2Cモデルや世界最先端のビジネス潮流、Zoomによる海外識者や専門家との直接ディスカッションを通し、10人程度の少人数で、産業界の参謀ともいえる集団をつくることだ。さらに、研究成果をYouTube、書籍出版、雑誌や新聞、メディアへの論考掲載を通し、世の中に発信してゆくプロジェクトも立ち上げる。必要とあればリスクマネーも呼び込み実現化への道程を歩んで頂く。すくなくとも3年は続けたいので、ぜひ応募いただきたい。
対象は、アパレル・小売(プラットフォーマー含む)、商社、工場(海外可)、物流会社、金融機関、報道メディア、デジタルベンダー、コンサルなど。全てオンライン形式で運営する。この論考の最後のページにある「お問い合わせ先」から、企業名、あるいは個人名と役職をご記入頂き、応募をお待ちしている。議論は完全クローズで、完成するまで外に公開されることはない。
ロシア営業継続を取り消したユニクロに何があったのか?
私は前回、ZARA、H&Mは、資本主義2.0の世界の新しい「勝ちの定義」をつくる一方でファーストリテイリングは方針が出しにくく板挟みの日本政府、そして、米中などイデオロギー戦争の狭間に翻弄されると予想したが、それが早くも現実のものとなったようだ。3月10日、事前の営業継続方針を覆し、ファーストリテイリングはロシア国内50店舗の営業を一時休業することを発表した。一時は営業継続を表明していたため日経新聞によると、欧州の売上に占めるロシアの割合は40%に達するという。日本、グレーターチャイナでの業績停滞が見られる中で、全体業績への影響は小さくはなさそうだ。
ファーストリテイリングは、ウクライナにも20万点の衣料品を供給し(これは、世界一であるといわれている)、自らのビジネスに政治的イデオロギーは関係ないという信念をもっている。だがこの信念も、資本主義国家で不買運動が起きるなど、世界で巻き起こっている「アンチ・モスクワ」という感情には勝てなかった。注目すべきは、柳井氏が日経新聞誌上で発言した「当社がアップルのような米国企業であれば直ぐに営業活動をとめただろう」という言葉だ。
これは、「国家としてのスタンスが明確な米国では、企業はその国の方針に従うが…」という意味と類推する。
ここでも、本来国家間の対立が「企業」と「国」
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日本でファションビジネスが「オワコン」化していない理由
さて時事的な話を解説したところで、ここからは日本のアパレルをオワコン化させているのは「人災」であるということについて説明したい。
私は以前、拙著「生き残るアパレル、死ぬアパレル」で、イオン、
しかし、アマゾンの日本事業は、類推するに内部の複雑な意思決定構造のため、幾度もアマゾン・ファッションで失敗を繰り返している。現在は、得意のデジタルマーケティングが活用できる領域として、グロサリーやコンビニ分野を強化しようとしている。ちなみに、Amazonは米国とイギリスでAmazon Booksなどのリアル店舗を次々と閉鎖した。
一方、昨年末には楽天ファッションが渋谷スクランブルスクエアに、ZOZOはD2Cブランドを阪急梅田店に、21年末限定でポップアップストアを出した。
アパレル分野における地上戦の戦いは、今後、私が定義する競争力があるD2Cモデルをひっさげ、楽天ファッションとZOZOの2強の戦いになるだろうと私は見ている。
繊研新聞の報道によれば、空中戦で戦うプラットフォーマーの「アパレルビジネス」は40%以上の伸びを示し、「オワコン」どころか、最も成長が期待できる領域になっているようだ。こうした事実はクローズアップされず、「もはや高齢化した顧客をメーンターゲット」とする既存の老舗アパレルの不振だけが目立つため、世間では「アパレル=オワコン」というイメージが定着している。
だが、日本にはセレクトショップのベンチマークといわれる「クラシカルエルフ」など、感度の高いアパレルもある。中国Sheinの逆モデルができる可能性だってあるほどだ。私は、これらのモンスターが孵化し、正しい経営と大きな資金を集めれば産業の新陳代謝が起きるだろうと思う。
こうした中、今、売れているのは、「アウトドア(ゴルフ)」と「コンテンポラリーモード」と呼ばれる日本独自のシルエットの服ぐらいだ。これに対して、苦戦しているのが「イタリアンクラシコ」のドレスラインで、これは、どのアパレルも惨憺たるものになっている。人が外に出なくなったからだ、で片付ける分析が圧倒的だが、ならば、外にでれば、またクラシコが復活するのかと聞きたい。
ファッション業界復活には30代の活用が不可欠
本質的な分析でいえば、ファッションとは残酷なもので、サステナ
私は今、アパレル業界の次世代教育をやっているが、参加者の最大の悩みは「上司が、全く言うことを聞いてくれない、邪魔をする」だ。30代の人間は、中間管理職を通してしかトップにものを申せない。また、万一トップにリアルな話をすると、中間管理職から瞬殺で電話がかかってきて「俺はきいてないぞ」と怒られる。
内部にいる若手は、全く実力が発揮できず40代でようやく課長になれるかどうかの出世争いで社内政治に精を出すしかない。
企業戦略にも課題がある。今は、ネクタイ、ドレス系革靴、スーツ、ブラウスを販売している企業は相当苦しい経営の舵取りを強いられている。だが、「ファッションの残酷さ」「浮き沈み」を知っていれば、業態転換や再構築を行う時間はいくらでもあったはずだ。私は10年前、「ブランドで競争する技術」で「ファッションは分散せよ」とページを割いて書いているが、斜め読みして分かった気になるからこうなるのだ。
例えば、私ならZOZOに生息する恐竜の卵の孵化、そして、その後の世界化をしっかりロードマップを描き、正しい活用方法を考える(=戦略立案)だろう。
このように、「オワコン」といわれるアパレル産業のほとんどは「人災」が問題で引き起こされており、その多くは本質的にコロナではない。
「DXとD2CによるESG経営」研究会
応募/お問い合わせ先: Info@ifi.or.jp
TEL:03-5610-5701 担当:碓井
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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