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マンション共有部で冷凍パン!販売 Store600 BAKERYと超小商圏の可能性

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2022年5月18日 20時55分

Store600

コロナ禍で生まれた、より「自宅から近い場所で」かつ「ちょっと良いものを食べたい」というニーズをうまく捉えたユニークなサービスがある。マンションの共用部に冷凍筐体を設置し、冷凍パンを無人販売する「Store600 BAKERY」だ。利用者の約9割に「一度利用したら手放せない」と言わしめるその魅力は何か。前身サービスである「Store600」の概要とともに、開発経緯やマイクロマーケットの秘める可能性について、サービスを提供する「600」社(東京都)の久保渓社長に話を聞いた。

マンション共有部で無人販売

 Store600は、主にマンションの共有部(ロビー、キッズスペース、コワーキングスペースなど)に幅50cm×奥行50cm×高さ150cmの常温筐体を設置、専用アプリを介したクレジットカード決済で中の品物を購入することができる無人販売システムだ。マンション居住者にとっての共用部での体験価値向上をめざし、デベロッパーの日鉄興和不動産(東京都)と共に開発を進めてきた。

 特徴は、商品内容が固定されておらず、設置場所のニーズに合わせて自由に変えられることだ。たとえば、ロビーなら併設されているコーヒーメーカー用のカプセル、キッズスペースなら玩具、コワーキングスペースならコピー機の使用カードなど幅の広い使い方ができる。

 常温保存可能なものに限るが、もちろん食品も販売可能だ。とくに、コロナ禍で遠出やショッピング目的の外出のハードルが上がったためか、通常であれば百貨店などで購入するような「ちょっと良いもの」が売れる傾向にあるという。

 現在の主な設置対象は、首都圏の戸数100戸以上の分譲マンションで、新築の際に合わせて設置するケースが多い。初期費用(筐体費、使用説明会などのオンボーディング費用)は50万円、月額管理費は5万円が目安だ。

 サービスを提供する「600」社は2017年創業。当初は、オフィス向けミニ無人コンビニから事業をスタートした。「600」社のサービスに共通するのは「徒歩1分・半径50m商圏のビジネス」だ。極小商圏向けに事業を展開しようという発想のきっかけになったのは、意外にも社長自身が経験した都内のコンビニの昼食時の混雑ぶりだったという。「そう特別なものを買うわけでもないのに、この混雑はいただけない、と感じた」(久保氏)。だったら、店がオフィスや自宅マンションなど、近くに来ればよい。これが「600」社のサービスすべてに共通する基本になっている。

冷凍パンを販売する「Store600 BAKERY」が好調

 いわば極小のセレクトショップであるStore600を展開する中で、「食事になるものを購入したい」「朝食用にパン屋さんのおいしいパンを買いたい」という声が聞かれたという。そこで新たに開発したのが、マンション共有部に冷凍筐体を置き、冷凍パンを1個から販売する「Store600 BAKERY」だ。取り扱うパンの種類は定番のクロワッサンや食パンのほか、イチゴパン、サツマイモパンなどの季節ものなど合わせて約20種類で、価格はどれも1個250円前後だ。

 正式リリース前の段階では東京23区内・100戸以上のマンションを対象に初期・月額費無料でトライアルを行い、「固定費用を頂かなくても、純粋にパンの売上だけで利益が出ている」(久保氏)ほどの売れ行きだという。3月18日からは正式サービスとして提供開始済みだ。

 この理由としては、冷凍パンの品質が向上し、レンジアップすることで焼きたてのような風味が楽しめるようになったことが挙げられる。さらに、1個から購入できることも大きな魅力になっているという。コロナ禍で冷凍食品全般に注目が集まる中で冷凍パンも一般認知が進んだが、通販などで購入すると一箱単位での購入になる場合が多く、家庭の冷凍庫では保管しきれない。その点、Store600 BAKERYであれば1個から、家族の好みに合わせて1個ずつ別々の種類のパンを購入することもできる。ユースケースとしては、夕方帰宅時に明日の朝食用のパンを家族分購入し、朝に温めて食べる場合が多いという。これも、マンションの共有部という必ず通過する場所に設置されているからこその使われ方だ。

 Store600 BAKERYに関してはコールドチェーンに強い物流会社とパートナーシップを結び、輸送・保管・補充を委託している。現在は不動産デベロッパーを中心にエントリーを募集しているところだ。

マイクロマーケットの秘める大きな可能性

600」社 久保渓社長

 現在のところ、マンション向けには常温もしくは冷凍のみで、冷蔵のサービスがないことについて久保氏は、「われわれがターゲットとしている徒歩1分・50m商圏のマイクロマーケットでは、冷蔵の食品に大きな需要はないと見ている。冷蔵の日配品や生鮮食品を購入したい場合、スーパーマーケットなどへ出向いて選んで購入する場合が多いのではないか」と話す。また、冷蔵品は賞味期限が短いという問題もあり、管理コストなどを考えるとあまり現実的ではないようだ。ただし、冷凍に関しては「今後パン以外にもラインアップの幅を広げていきたい」(久保氏)と意欲を見せた。

 マイクロマーケットの今後についても考えを聞いた。「現在はスーパーからコンビニ、そしてマイクロマーケットと商圏がどんどん小さくなっている時代。今後、マイクロマーケットはコンビニと同じくらいの2兆円市場に拡大していくと考えている。現在はマンションに焦点を合わせた開拓を行っているが、さまざまな場所で極小マーケットを開拓していきたい」(久保氏)。

 「1分あれば何でもできる!」をビジョンに掲げる「600」社。同社の展開する徒歩1分圏内での極小商圏ビジネスは大きな可能性を秘めていそうだ。
 

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