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Woltが事業を本格的に拡大、処方薬の配送も 2022年は日本の「Qコマース元年」に

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2022年4月27日 20時55分

4月14日に開いたWolt Qコマース戦略説明会で。中央が高木慶太リテール事業本部長、右が配達専用スーパーを担当する福井優貴エクスパンションマネジャー

デリバリーサービス「Wolt(ウォルト)」を展開するWolt Japan(東京/野地春菜代表)は2022年を日本の「Qコマース(即時配達)元年」と位置付け、本格的な事業の拡大に乗り出す。小売業の商品を配送するリテール事業では4月から東北や東京を中心に新規加盟先を増やし、5月には名古屋にサービスエリアを拡大。流通取引総額で前年の15倍を目指す。法人向け即時配送プラットフォーム「Wolt Drive」の運用も始め、院内処方薬を即時配送する実証実験を始めた。配達専用スーパー「Wolt Market」は初夏には東北に進出する。

4月14日に開いたWolt Qコマース戦略説明会で。中央が高木慶太リテール事業本部長、右が配達専用スーパーを担当する福井優貴エクスパンションマネジャー

イオン東北などと新たに提携、エリアを拡大

 4月14日に都内で戦略説明会を開いた。ウォルトはフィンランド発で欧州とアジア23カ国でデリバリー事業を展開する企業で、日本には20年3月に上陸。現在22都道府県・38エリアでサービスを提供している。料理宅配にとどまらず、食料品や日用品、化粧品などの商品を注文から30分程度で届ける「Qコマース」に注力しており、アプリやウェブサイトから簡単に注文できることから、多忙な30代の子育て・共働き世代を中心に徐々に浸透している。

 主力のリテール事業では、現在北海道、東北、関東、関西、中国、四国で、スーパーマーケット(SM)やコンビニ、ドラッグストア、百貨店、専門店などと組み、小売店が扱う商品をお客の下に届けているが、4月から新たにイオン東北やSMの文化堂(東京)などと提携、サービス網をさらに拡充する。

 4月からサービスを始めた提携先企業と店舗は以下の通り。仙台三越(店舗名・仙台三越)、川徳(パルク・アベニュー・カワトク)、イオン東北(イオン仙台一番店、4月26日開始)、ゼオセボン・ジャポン(ビオセボン骨董通り店)、イオンサヴール(ピカール武蔵小山店)、文化堂(文化堂豊洲店、4月28日開始)、イオン九州(イオン南宮崎店)。

 これまでもアークスグループ、コストコ、ローソン、セイコーマート、ツルハドラッグ、ラッシュ、生活の木、ヨークベニマル、イケア、マックスバリュ西日本、ポプラ、広島三越、そごう広島、高松三越の特定店舗からの配送を請け負ってきた。

 同サービスは、お客がスマートフォンなどからアプリを使って注文し、提携先の小売店のスタッフが商品をピックアップ、組織化された配達パートナーが商品を店で引き取り、お客の下に配送する。最大配達距離は都市や店舗によって異なるが、4月からの提携先では店舗から半径4~6㎞程度、配送料は1㎞未満が50円、1~2㎞が150円、3~4㎞が250円とする店が多い。商品代金の10%(最大300円)のサービス料金が別途かかる。

 同社では「今後は都市部だけでなく、さまざまな規模の都市に広げていきたい」(Wolt Japan高木慶太リテール事業本部長)としている。5月末には初めて東海地方に進出、名古屋市で新たにサービスを始める。

院内処方薬の即時配送の実証実験も

 一方、同社は4月14日から法人向けに開発した即時配送プラットフォーム「ウォルトドライブ」の運用を開始した。これは30分程度で商品を配送したい企業が、ウォルトのアプリやウェブサイトに店舗ページを開設することなく配達システムが利用できる仕組みだ。連携方法は2種類。1つはウォルトの専用管理ポータルを利用する方法で、ウェブ上から簡単に配送サービスをウォルトに依頼できる。2つ目はウォルトのAPI(外部とデータ連携する仕組み)を利用する方法で、企業の自社サイトと継ぎ目なく連携できる。

 「ウォルトドライブ」を使って、医療機関にサービスを提供するベンチャー企業、メディカルノート(東京/梅田裕真CEO)と院内処方薬を即時配送する実証実験を4月14日からスタートした。メディカルノートが医療プラットフォームを提供する東京・新宿と銀座にある複数のクリニックで、オンライン診療を受けた患者が半径3㎞以内の場所に医療用医薬品の配送を希望すれば、クリニックが院内で調剤した医薬品をウォルトが30分程度で患者に届ける。

 実証実験の結果を見ながら、両社は配送エリアの拡大を検討する。オンライン診療はコロナ禍で特例的に認められていたが、政府は今春までに初診からのオンライン診療を恒久化した。しかし薬はこれまで院外の薬局で調剤し、薬局から郵便や宅配便で送ったり、患者が薬局に出向いたりする必要があった。

リテール事業で扱っている商品の一例。食品に限らず、日用品や一般用医薬品まで扱う。コストコのプライベートブランドやラッシュの商品も見える

配達専用スーパーも拠点を拡大へ

 このほか、ウォルトは店舗を構えず、自社で食品や日用品を仕入れて配送する配達専用スーパー「ウォルトマーケット」を札幌、函館、広島など8拠点(ダークストア)で展開しているが、初夏には東北に進出。その後、今年後半から全国各地に拡大する。

 世界ではフィンランドなど14カ国・58拠点で展開しているが、日本では昨年12月に札幌市でスタートした。生鮮品や日配品、飲料などの食品や日用品、ベビー用品、介護用品など約2000品目を扱い、倉庫となる拠点から半径5㎞以内に注文から30分程度で配送している。「日本(札幌)では30~45歳の女性や一人暮らしの人の利用が多い」と福井優貴エクスパンションマネジャーは明かす。

 こうしたさまざまな切り口でお客のニーズをすくい取り、同社はQコマースの市場を拡大する。「フードデリバリーはあくまで入り口。今は食品や日用品を拡大しており、その先にはライフスタイル商品や家電の扱いもイメージしている」と高木リテール事業本部長は話していた、

 なおアメリカのフードデリバリー大手のドアダッシュが昨年11月に同業で欧州に強みを持つウォルトを株式交換によって買収すると発表し、現在、買収手続きは完了していないが、同社では「アメリカの法令上、コメントができない」とした。ドアダッシュも昨年6月に日本に進出しており、買収手続きが完了すれば、日本市場における拡大戦略の進め方は若干変化する可能性がある。

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