タニタと組んで体組成計でスーツサイズを提案 はるやまの「真のねらいはここにある!
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2022年5月9日 20時55分
紳士服チェーンのはるやま商事(岡山県/中村宏明社長)は計測器メーカーのタニタ(東京都/谷田千里社長)と協業し、体組成計に乗るだけで健康チェックができ、お薦めのスーツサイズと商品シルエット(型)を提案する新サービスを開発。4月28日から「はるやま吉祥寺店」(東京都武蔵野市)と「はるやま岡山大安寺店」(岡山県岡山市)の東西2店でトライアル展開を開始した。効果検証の後約30店に拡大し、将来的には全店展開をめざす。
体組成計に乗るだけでスーツサイズを推定
これはタニタが開発した体組成データから体形を推定する新技術とはるやまの商品情報を組み合わせたもので、利用するお客にフィットするお薦めの商品サイズと商品シルエットのスーツやフォーマル、パンツやスカートを自動で提案する。コロナ禍によって高まった購入時における店舗スタッフとの接触を減らしたいというニーズに応え、買物時間の短縮につなげる。
お客は店舗でメジャーを使って採寸してもらう必要がなく、店舗に設置された機器のタッチ画面に性別、年代、身長を入力し、靴下を脱ぎ2つのグリップを握って体組成計に乗れば、20~30秒で男性なら「A6号かA5号」、女性なら「9号か7号」といった具合にお薦めのサイズが表示される。併せてお薦めの商品シルエットのブランドが表示され、お客の商品選びを手助けする。
新サービスで使われるタニタの技術は、体組成計で計測した生体情報を基に、いったん体形全体を予測。それに15~20の変数を加えて、首回り、お腹回り、胸囲、ゆき丈、ヒップ、太もものサイズやBMI(肥満指数)、体脂肪率などを推定するもので、これがタッチ画面に表示される。同社がこれまで培ってきた体組成測定技術を応用した。この技術による男性スーツサイズの一致率は96.2%、女性スーツサイズの一致率は95.2%に上るという。
メンズスーツのサイズは体形によって40スタイル以上あって複雑で、来店するほとんどのお客が店舗スタッフによる採寸を受けている。お客が自分で素早くサイズ選択できるようにすることで、店舗スタッフに頼らずお客は自由に商品を選べる買い物の選択肢を持つ。また店舗業務を効率化し、余力を本来の接客の充実や店舗スタッフの教育に振り向ける。
「健康」を軸に差別化を進めるはるやま商事
はるやま商事は2015年に「スーツで日本を健康に」すると宣言し、ファッション分野からの健康サポートを進めてきた。その一環として、17年からタニタとの取引をスタート。共同で「歩きたくなるスーツ『i-Suit SUPPORTED BY TANITA』」を開発したり、「はるやま」の店舗内にタニタの業務用体組成計による健康チェックができる「健康チェックコーナー」を設置したりするなど、健康サポート施策に取り組んできた。
18年からは郊外店の一部に会員制の有料サービス「ほっとひと息ステーション」を導入(現在54店)。光を浴びて疲労回復に役立つカプセルやフットケアマシンなどの機器を設置し、ブック&カフェコーナーやクリーニングコーナーを設けるなど店舗を地域の健康拠点にしようとする取り組みを進めてきた。
はるやまの主力客層は30代~50代の働き盛りのビジネスパーソンであるため、健康に関心の高い世代が多い。「当社は地方店が多いので、これらのサービスによってエリアに住むお客さまの来店頻度を高め、地域でより必要としてもらえる店にしたい」と中村宏明社長は健康を軸としたユニークな差別化戦略を進めているねらいを説明する。
今回始めたサービスは、お客の利便性を高めるだけでなく、同時に体組成計測ができることから、既存の衣料品の販売と健康サポート施策を結び付け、「これまで接客動線上にあった距離感を縮められる」(はるやま商事神瀬桂営業部長)と期待している。
個人に向けた健康情報などの提供も
まずは2店での実証実験からスタートするが、今年10月以降にはサービスの導入店舗を数店に広げ、成功への確証を得られればタニタの健康チェックコーナーを設置している30店に早期に拡大、将来ははるやま全店(現在約240店)に波及させたい考えだ。なお今回のサービスは「はるやま」店舗を念頭に置いており、同社が都市部を中心に展開する20代~30代をターゲットとした「P.S.FA(パーフェクトスーツファクトリー)」は想定していない。
本格稼働時には、このサービスで得た健康情報をはるやまの顧客情報と結び付け、一人一人のお客に合わせた健康情報や商品情報の提供、食事・運動・休養といった生活習慣の提案など、サービス内容をさらに拡充することを検討する。はるやまの新商品開発にも生かす。
紳士服業界では少子高齢化によるスーツ着用人口の減少やコロナ禍におけるテレワークの進展などの影響によって市場が縮小しており、大手チェーン各社はネットカフェやカラオケ店、焼き肉店の展開などスーツに依存した経営からの脱却を進めている。一方で、本業のスーツ販売においては新たな付加価値による差別化戦略が迫られている。
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