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コロナ禍で好調のゴルフダイジェスト・オンライン ブームの先に見据える成長戦略とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2022年6月27日 20時55分

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長引くコロナ禍でフィットネス・スポーツ業界では多くの企業が打撃を受けたが、逆に好調を維持しているのがゴルフ業界だ。オープンエアで「密」を回避できるレジャーとあって、最近では20代、30代の女性ビギナー層が急増している。

その好調を追い風に、202112月期通期決算で前年のほぼ倍増の営業利益を上げたのがゴルフダイジェスト・オンライン(東京都/石坂信也CEO)だ。しかし、この活況の中でも「一時的なブームで終わらせたくない」と、リテールビジネスユニット ユニット長の坪井春樹氏は気を引き締める。ゴルフ場予約・メディア・ECの3事業を中核とするビジネスモデルでゴルフ市場に風穴を空け、20年以上にわたって業界を牽引してきた同社。今後のゴルフ市場をどう見すえているのだろうか。

「密を避けられるレジャー」で女性ビギナー層が増加

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 ゴルフダイジェスト・オンライン(以下「GDO」)の202112月期通期決算は、売上高が対前年比17.5%増の395億円、営業利益は同103.4%増の17.0億円。2020年の新型コロナウイルス禍による落ち込みから回復し、営業利益はほぼ倍増し過去最高益を記録した。

 好調の背景にあるのが、ゴルフ需要の高まりだ。経済産業省の「特定サービス産業動態統計」によると、2021年のゴルフ場利用者数は1026万人、ゴルフ練習場利用者数は2507万人。対前年比でそれぞれ15.1%、17.8%も増加しただけでなく、コロナ禍以前の2019年をも上回る伸びを示している。

ゴルフ場・ゴルフ練習場利用者数の推移(経済産業省「特定サービス産業動態統計調査」)

2019

2020

2021

ゴルフ場

9,296,106

8,912,524

10,257,560

ゴルフ練習場

19,502,580

21,281,859

25,068,816

 「室内での人混みを伴うアクティビティが敬遠される中、オープンエアでプレーでき、『密』を避けられるゴルフのメリットが広く認知された」と、リテールビジネスユニット ユニット長の坪井春樹氏はゴルフ人口の増加要因を語る。

 そして、このゴルフ人口を押し上げた“主役”が20代、30代の女性ビギナー層だ。同社が運営する「GDOクラブ」では、30代以下の女性会員数が1.83倍増加した。

 InstagramなどSNSでも、若い女性が思い思いのファッションでラウンドを楽しむ投稿が目立つ。もともとコロナ前まではやや減少傾向にあったゴルフ人口だが、コロナ禍を経て参入した女性ビギナー層が、ゴルフ人気を支える新たな主役になっている。

ゴルフクラブの在庫不足をアパレル・アクセサリー類がカバー

プライベートブランド
GDOのプライベートブランド

 GDOのゴルフ用品販売事業に目を向けると、2021年の売上高は182億円で、対前年度比で1.9%増加した。中国や東南アジアに製造拠点を置くゴルフクラブメーカーが軒並みコロナの影響を受け、さらにクラブの素材である鉄やカーボンの原料不足も重なって、ゴルフクラブの在庫が不足する事態に見舞われた。一方で、女性ビギナー層の増加によって相対的に利益率の高いゴルフウエアやキャディバッグなどのアクセサリー類が安定的に成長し、クラブの落ち込みをカバーした。

 2000年の創業以来、20年以上の実績を誇るGDOEC事業。その強みは、業界では群を抜く品ぞろえの多さにある。大手ECプラットフォームにも卸していないハイブランドも信頼を置き、GDOで商品を展開している。「ハイブランドはブランドイメージを大切にするので、そのブランドのよさを伝えられるサイトづくりにこだわっている。ショップinショップの形でブランドストアを設置し、ブランドが伝えたい商品や背景にあるストーリーを伝えられるよう意識している」(坪井氏)

 また、プライベートブランド「GDOオリジナル」のウエアも展開。ハイブランドに比べて2分の13分の1というリーズナブルな価格で、特に主力のパンツは、シンプルなデザインだが、股下の長さやウエストサイズを細かく設定したサイズバリエーションの豊富さと使い勝手にこだわった機能性で、安定した人気を集めている。利益率の高いプライベートブランドも同社の収益を支える。

 一方で、アパレルやアクセサリー類に比べてゴルフクラブは、実際に試してみたり、ショップ店員のアドバイスを受けながら購入したいもの。ECよりリアル店舗に分がある領域だが、そこに対しても、GDOでは独自のサービスを打ち出している。それが、低額でゴルフクラブのレンタルができるサービス「TRYSHOT」だ。月額2,980円からで、期間を選んで新作のクラブが試し放題、気に入ったら購入も可能だ。

データ連携で、他事業とのシナジーを生みだせるか

ユニット長
リテールビジネスユニット ユニット長の坪井春樹氏

 ビギナーユーザーの増加もあって好調を維持しているGDO。しかし、もともとゴルフ人口は人口動態に比例して推移しており、最大のボリュームゾーンだった「団塊の世代」が後期高齢者に差し掛かるなど、長く需要を支えてきた顧客が失われつつある。「その減少幅をカバーできるだけの新規需要は見込みにくい」と坪井氏は率直な課題を語る。「今回増加した女性ビギナー層も、コロナ禍で止まっていた旅行需要から一時的に流れてきたという観測もあり、景気が回復したら元に戻る可能性は大いにある」(同)

 目下、GDOが重視するのは「新規」より「継続」だ。コロナ禍を機にゴルフを始めたビギナー層に、いかに長くゴルフを続けてもらうかに力点を置いている。そのためのカギとなるのが、データの活用だ。2000年の創業以来、「インターネットを通じて、ゴルフの変革をリードする」との理念を掲げ、ゴルフ場予約・ゴルフメディア・ゴルフ用品販売の「トライシクルモデル」という唯一無二のビジネスモデルによって成長を遂げてきた。今後はその3事業間のシナジーをより高めていきながら、ネットとリアルを融合した新たな顧客体験を模索している。「ゴルフクラブもヘッドとシャフトの組み合わせをカスタムするなど、サービスがパーソナライズ化されつつある。データを活用しながら、ユーザーの特性やニーズに合わせてサービスをパーソナルに最適化していく必要がある」(同)

 また、「トップトレーサーレンジ」という弾道測定器の活用にも力を入れている。ゴルフ場に設置することで飛距離や弾道の角度、スイング軌道などのデータを測定することができる。このトップトレーサーレンジで取得したスイングのデータをもとに、ECサイトで最適なゴルフクラブを提案する、といったように、GDOが今後実現する顧客体験の可能性は広がる。

 「接待ゴルフ」「敷居が高い」「おじさんのスポーツ」といったイメージもいまだに根強いゴルフ業界。コロナ禍を機に“救世主”となった若年女性ビギナー層を囲い込み、長くゴルフを続けてもらうためにも、業界に革新を起こし続けてきたGDOの「次の一手」に期待が高まる。

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