27期連続増収のバローHD!好業績牽引する「デスティネーション・ストア」とは何か
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2022年6月19日 20時55分
2022年5月12日、バローホールディングス(岐阜県:以下、バローHD)は22年3月期の決算を発表した。同日、6月30日付けで28年間の長きに渡り同社を率いた田代正美会長兼社長は会長兼CEOに、横山悟取締役副社長が社長に就任することが発表された。一つの大きな節目となった22年3月期決算の概要と今後の成長戦略についてレポートする。
27期連続の増収を達成!
バローHDの22年3月期連結決算は、営業収益が7325億円となり27期連続の増収、過去最高益を更新した(バローHDでは22年3月期より「収益認識に関する会計基準」を適用しているが、適用後との比較においても増収となった)。
好調な推移を見せたスーパーマーケット事業において、来店動機となる商品・カテゴリーを有する「デスティネーション・ストア」への転換が進み、既存店が伸長したことや、M&A(合併・買収)およびドラッグストア事業の新店における売上高増加が寄与した。
営業利益は212億万円、経常利益は241億円、当期純利益が90億円といずれも計画数値に対して未達で着地した(収益認識基準等適用のため前期増減率はなし)。
セグメント別の営業収益を見ると、スーパーマーケット事業は生鮮部門の寄与により既存店が伸長したことやM&Aの影響によって、前期から92億円増の4055億円だった。ドラッグストア事業は調剤事業の下支えによって前期から18億円増の1524億円となった。
ホームセンター事業は同72億円減の1229億円であった。前期のコロナ特需による反動減があったものの、客単価のアップによって部分的にカバーした。新型コロナウィルスの影響によって厳しい環境下にあったスポーツクラブ事業は同7億円増の98億円となった。
コストアップの環境でも積極投資を実施
23年3月期の業績予想では、営業収益が同2.4%増の7500億円、営業利益が同7.0%増の227億円、経常利益が同3.6%増の250億円、当期純利益が同27.6%増の115億円を見込む。
世界的な食料品相場の上昇や原油価格高騰など外部環境の変化に伴う物流費および原材料価格の値上がりがコスト増加の要因になっているが、主力のスーパーマーケット事業においては、商品力の向上と既存店の改造を引き続き実施し、今期は8店舗(うち、バローは5店舗)の出店を計画している。また、子会社化した八百鮮、ヤマタの業績への寄与も想定している。
ドラッグストア事業においては調剤事業の強化を加速し、20店舗の新設を予定している。そのほかPB外販、EC、BtoBなどのノンストア事業を22年5月にVソリューションに統合し、給食・配食事業や行政との提携なども拡大し、本格的始動する。
全体では、新規出店61店舗、閉鎖8店舗を計画しており、23年3月期末のグループ合計の店舗数は1347店舗となる見通しだ。
「デスティネーション・ストア」への転換で新たな需要を喚起
バローHDの掲げる「バローグループ・ビジョン2030」の大きな柱は、地盤となる東海エリアにおいて豊かさと利便性を追求した「バロー経済圏」の構築と、展開全地域において、商品力によって顧客に選ばれる企業である「デスティネーション・カンパニー」の構築である。
昨今のドラッグストア・コンビニエンスストアなど小売他社の食料品強化やAmazonを代表としたECにおける食料品購入の増加など、スーパーマーケット業界は大きな転換が迫られている。商圏の近さによる優位性が失われていく中、同社は目的来店性を向上させる「デスティネーション・ストア」化をさらに加速していく。
具体的には、製造機能を強化することによってPB商品の比率を向上させ、新鮮な果物や丸魚を見せる臨場感のある水産売場などを設計し、生鮮食品を強化する。
郊外店を中心行ってきたこれまでの店舗改装の効果としては、客単価の上昇が見られ、客数が増加した店舗では相乗的な売上増加につながっている。今期は店舗改装を28店で実施する予定であり、改装による収益向上を見込む。また、これら店舗においてカットフルーツによる果物比率の上昇や丸魚を見せる売場展開など「商品力の強化によって顧客に選ばれる店」づくりを進める。
一方で、駅前や商店街など店舗坪数の大きくない都心部での店舗展開においては、2005年に買収した「タチヤ」および21年に買収した「八百鮮」などの経営資源を活かしながら、生鮮部門に特化した業種店(専門店)を拡張していく。業種店では、前述した店舗において堅調な利益貢献があったことから、新鮮さで顧客から選ばれる店づくりを継続していく。
また、LuVit(ルビット)カードの会員数は現在376万人、アプリ会員数は53万人おり、順調に推移している。今後もカードやアプリなどを通じた顧客との接点も強化していく。
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