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過去最高益のトリドールHDが打ち出す、中長期経営計画の全貌

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2022年6月7日 20時54分

トリドール(丸亀製麺)

「丸亀製麺」を主力とした飲食業を展開するトリドールホールディングス(東京都:以下、トリドールHD)は5月17日、2022年3月期の連結決算および新たな中長期経営計画を発表した。今年5月に策定したコーポレートスローガン「食の感動で、この星を満たせ。」を掲げ、国内のみならず海外でも積極的にビジネスを展開している同社の決算概要と今後の成長戦略についてレポートする。

トリドール(丸亀製麺)

丸亀製麺、海外事業好調で黒字転換!

 トリドールHDの2022年3月期の連結業績(IFRS)は、売上収益が対前期比13.8%増の1533億円。コロナ禍の影響を受け、前期は赤字だった事業利益は54億円の黒字に転換。事業利益の大幅増に加え、時短営業などによる政府の補助金128億円が加わり、営業利益は同215億円増の142億円、親会社の所有者に帰属する当期利益は同144億円増の89億円と、営業利益と当期利益は過去最高を更新した。

 社長兼CEOの粟田貴也氏は「コロナ禍の影響が残る中でも、本業がしっかり回復し、力強く成長した年であった」と評価する。

 セグメント別の売上収益の内訳をみると、主力の丸亀製麺事業は前期から111億円増の大幅増収。イートインの回復、および「うどん弁当」のヒット、テイクアウトが貢献。21年5月より本格的展開したテイクアウト事業では、専門窓口を店舗に増設したことが売上拡大につながった。イートインも伸長し、店内で飲食した顧客が家族にテイクアウトをする流れができたことにより、今後もテイクアウト窓口設置店の増設を計画する。

 海外事業もコロナ感染拡大の影響を受けながらも、同97億9700万円増と大幅増収を果たしている。期中は29店舗を出店。過去最高売上を更新したハワイ店を含む米国、シンガポールの「MONSTER CURRY」、ロンドンの「MARUGAME UDON」が大成功した英国が増収を牽引した。

 その他セグメントでも、ハワイアンカフェの「コナズ珈琲」、レストラン・グローサリー併合型の新業態である「肉のヤマキ商店」がそれぞれ増収を果たしている。

コスト高騰の中でも今期は増収増益を予測

 2023年3月期の業績計画では、売上収益が同15.5%増の1770億円、事業利益が同14.2%の62億円とした。営業利益は同71.9%減の40億円、当期利益は同80.5%減の13億円と大幅減益の予定だが、22年3月期の政府補助金の影響をのぞく営業利益は増益となる予定だ。

 国内不採算店舗の整理を多く行った前期から一転し、23年3月期は国内外ともに新規出店に注力し、丸亀製麺はロードサイドおよび都市型の立地モデルの強化に取り組む。

 海外事業では「Tam Jai」「MARUGAME UDON」など多数の業態において、直営店の新規出店およびフランチャイズ展開を強化し、期末には同144店舗増の1864店舗を見込む。

 原価高騰とエネルギー価格の上昇については、価格改定、商品ミックスの適正化、DXの推進および独自開発中のAIによる需要予測やワークシフトによる効率化、「エコ釜」の導入などによる原材料・廃棄ロスの圧縮など原価率コントロールを積極的に実施するとしている。

トリドールHDの中長期経営計画

 トリドールHDでは、名実共にグローバルフードカンパニーになることをめざし、今期を初年度とする新中長期経営計画を発表している。中長期経営計画では、22年3月期を初年度とする3か年計画を経て、毎年見直しを行い、最終年度とする28年3月期に「連結5500店舗超」「売上高3000億円」「事業利益率12%以上」「営業利益率10%程度」の達成をめざす。

最初の3か年計画の最終年度である25年3月期には現状の1.5倍の店舗数である2500店舗、売上高は1.4倍の2200億円、営業利益は120億円を計画している。営業利益は22年3月期の補助金を除いた値で見ると8.7倍という強気な目標設定だ。

これらの目標達成に向け、トリドールHDでは出店、改装、M&A(合併・買収)など大規模な投資も計画する。今後は成長性、収益性に加え、効率性と健全性も経営指標として加え、ROEは25年3月期に10%以上、28年3月期には12%以上を見込む。

“二律両立”と感動体験によって拡大をめざす

 トリドールHDでは、中長期経営計画の中で “二律両立”こそ、同社の強みの源泉であると定義している。この“二律両立”とは「手間暇かけてこだわって展開することをスピーディに効率的に展開する」「そこでしかできない体験を世界中どこでもできる体験にする」という、本来であれば“二律背反”となる活動を両立し、拡大することである。

 そして基本戦略として、前述の“二律両立”および、同社の経営の根幹にある「食の感動体験」によって来店動機を生み出し、予測不能な水準で成長し、事業を世界中に広げるという「KANDOトレードオン戦略」を打ち出す。「感動体験があれば、必ず需要の開拓、顧客創造ができ、食の感動体験を世界で共有・推進したい」という想いが込められている。

 成長戦略の基点・価値観である感動体験を体現するブランド群を指す「ダイバースブランド」が、世界各地の特別な知識・ノウハウ・ネットワークを持つ現地パートナー「ローカルバディ」とともに、世界中で多様な業態によって網目状に張り巡らされた「ノーボーダーネットワーク」を構築し、世界各地で同時に出店していく。これらを戦略の主体である「感動進化ドライバーズ」を中心に展開するという枠組みだ。

 具体的な戦略は4つの重点テーマと11の取組みによって構成される。重点テーマの1つ目は中食、ハラル、ヴィ―ガンなど新たな食文化やシーンでの感動体験を創出し続ける「感動体験の追求」、2つ目は国内外のバラエティ豊かなブランド群を活かし、よりバランスの取れた成長をめざす「事業ポートフォリオの量・質拡充」

 3つ目は各地のパートナーを第二のヘッドクオーターと位置づけ、強力なパートナーシップのもと各地で複数業態を同時並行的に進める「バディ布陣の確立」、加えて世界的な「グローバルアドバイザリー」を迎え事業推進力を一層高めていく。4つ目は本社機能が縦横無尽に世界各地でネットワークとして機能し、事業の急展開を実現する「N×N(ノーボーダーネットワーク)展開を支える基盤構築」である。

 これら重点テーマごとに「麺職人」など「人材の育成と定着化」、「ブランドインキュベーション」、「グループ機能のグローバル化」など11の取組みを定義し、グローバルマーケットでの飛躍をめざす考えだ。

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