過去最高業績更新のアスクル、さらなる飛躍に向けた打ち手は
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2022年8月3日 20時55分
法人向けオフィス用品の通販サービスや一般向けECサイト「LOHACO(ロハコ)」を展開するアスクル(東京都/吉岡晃社長)は年7月1日、22年度5月期通期決算を発表した。前期は過去最高業績を達成し、他業種との協業も積極的に展開。EVトラックや再生エネルギーの使用などサステナブルな経営にも力を入れる同社。最新決算の概要に加え、今後の戦略についてレポートする。
計画通りの着地で増収増益
アスクルの22年5月期業績は、売上高が対前期比1.5%増の4285億円、営業利益が同2.8%増の143億円、経常利益は同3.0%増の142億円、当期純利益が同18.7%増の92億円で、前期に続いて過去最高業績となった。
BtoB事業は新型コロナウイルス感染対策商品の特需の減少や、生活様式の変化によって文具などオフィス用品需要の減少があったものの、注力分野である飲料水などの生活用品、Eコマース需要の増加による工場や建設現場、倉庫などで使用される消耗品・補修用品などのMRO(Maintenance, Repair and Operationsの頭文字をとった略称)商材の売上高が伸長し、増収となった。
また、インターネット広告などの活用による顧客基盤の拡大や、医療・介護業種や製造業などを中心とした専門商材の品揃え拡大も奏功した。
BtoC事業では、国内売上における巣ごもり需要の反動などがある中、海外向け需要が増加したことや2021年6月に「LOHACO本店」をヤフー(東京都/小澤隆生社長)が提供するシステム基盤に移行しリニューアル、Zホールディングス(東京都/川邊健太郎社長Co-CEO)グループとの販促の連携強化により、計画通りの増収となった。
ロジスティクス事業では、物流業務受託の拡大などにより大幅に収益が改善し、下期において営業損失から営業利益への転換を達成した。
「売上成長カーブ」を変える!
アスクルは、2025年度の最終年度に連結売上高5500億円、連結営業利益率5%、連結株主資本利益率(ROE)20%の実現をめざす中期経営計画を掲げている。
2年目となる23年5月期は「売上成長カーブを変える年」と位置付け、4つの最重要戦略である、①BtoB最強ECサイトの構築、②戦略業種と品揃え拡大、③Zホールディングスとのシナジー、④プラットフォームの改革を今期も着実に実行していく。
各戦略を一つずつ見ていくと、①のECサイトの構築については、7月に新アスクルWebサイト機能の一部先行リリースとして、一括購買ソリューション「ソロエルアリーナ」サイトおよび中小事業所向けサイトをオープン化する。これにより、外部の検索エンジンからサイトへの直接訪問が可能になり、従来からの購買管理機能、ボリュームディスカウント、検索からの最速購入、パーソナライズドリコメンドを結集・強化し、テレワーク対応の新機能も追加することで、利便性向上や買い回りの拡大を見込む。
②では、戦略業種である製造業や医療・介護業種向け専門商材の認知を向上させるため、今期からYouTubeやネット広告などを活用しながらリブランディング施策を開始する。品揃えについては単に拡大するだけではなく、商品情報の充実やリスティング広告といった、購入を促す仕組みづくりを強化することで、現在の取扱商品数合計 1179 万アイテムを今期は1400万アイテムまで拡大する。とくに前述の2大業種向けオリジナル商品開発を強化し、現在の8700アイテムから1万アイテムをめざし、戦略業種の売上成長を加速させる。
広告ビジネスを強化!
③のZホールディングスとの連携では、BtoC事業「LOHACO」の収益事業化の実現するため、今期は広告ビジネスを強化する。21年6月にリニューアルした「LOHACO 本店」と「LOHACO PayPayモール店」両店の相乗効果を最大化し、LOHACO限定販促施策の継続や日用品ECに最適化されたUI/UXを展開することで売上高および収益性を改善していく。
④のプラットフォームについては、同社の強みである高速・高効率物流を進化させ、ロングテール商品の「明日来る」の実現をめざす。東日本フラッグシップセンターとなる「ASKUL東京DC」(東京都江戸川区)も2022年11月下旬に稼働を開始予定で、物流生産性の向上が見込まれる。
BtoBビジネスの新サービスについては、オフィス通販からのトランスフォーメーションに向けた新サービスの第1弾として、メーカー向け広告ビジネスの開始を予定している。また、ソフトバンクグループ各社との連携により「物販以外の領域へのサービス展開」として中小事業所向け新サービスについて検討を開始している。
これらの計画を実施することによって2023年5月期は利益水準を維持しながら成長カーブを変えることに注力し、売上高は対前期比6.3%増の4555 億円、営業利益は同1.3%増の145 億円、経常利益は同0.2%増の143億円、当期純利益は同2.1%増の 94 億円を見込み、さらなる飛躍をめざす。
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