EC絶対王者のアキレス腱!?アマゾンファッションが日本で存在感を出すために必要な戦略とは
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2022年8月22日 20時55分
無敵のAmazon(アマゾン)。すでに日本事業の売上高は、2021年度で2兆5000億円(Amazon.comアニュアルレポートより円換算)を超えEC専業企業として存在感を増している。しかし、ことファッションについては「それほどでもない」感じがするのはなぜだろうか。今回は、AmazonFashion(アマゾンファッション)が日本でいまだ大きな存在感を示せない要因を分析するとともに、成功するための戦略を提案したい。
米国で数々の名門アパレル を葬り去ったアマゾンファッションも…
私自身、2年前に、「ユニクロを追随しうる企業があるとすれば、それはアマゾンファッションだろう」と予測し、米国で数々の名門アパレルを葬り去った アマゾンファッションに注目していた。
実際、アマゾンジャパンは、明治通りに巨大な「Amazon fashion」の看板を掲げ、2017年には品川シーサイドに巨大なファッション撮影施設を設立。さらに「Amazon at Tokyo」と称するファッションショーも開催し、責任者のジェームス・ピータース氏は、「アマゾンファッションは、グローバルで最も伸びているカテゴリー」と、日本への積極投資を続けると述べていた。
当時、私を含む業界関係者、メディアも「いつ、アマゾンファッションが日本に登場するのか」と期待をしていた。とある事情で、アマゾンジャパンのカテゴリー責任者と話をする機会を得たとき、私は「いつ、アマゾンファッションは日本に登場するのか?」と聞いたところ、なんと、「我々はすでに、Amazon basic、Amazon Essentialというプライベートブランド(PB)を日本で販売し、また、日本の有力アパレルと組んで日本で販売し、事業を開始している」という回答だった。
要は、アバクロンビー&フィッチやForever21が日本に初登場したときのようなイメージを、我々は持っていたのだと思う。それほどアマゾンファッションに対する期待も大きかったわけだ。しかしアマゾンファッションは、内部成長率は不明だが、すくなくとも私たちが想像していたほどの存在感はでていないし、その気配はない。
海外コントロールのオフショア・ビジネスは失敗する
私が、まだ現役の商社マンで某米国ブランドのOEMの仕事をしていたときのことだった。その米国ブランドのビジネスは本国主導で、米国の展示会に各国のライセンスホルダーが集まる。本国の展示会で、使用する原材料や絵型などが公開され、出張したライセンスホルダーは、スワッチ(素材の切れ端)とコンセプチュアルなデザイン画を持って帰るのだが、なぜか、持ち帰る素材名や混率が間違いだらけだった。しかし、数千の原料の混率や名前を頭に入れていた私達の素材チームは、間違った情報でも見ただけで、ほぼ正確に素材を特定できた。そして、その仮ベースの素材でサンプルをつくり、現物生産を開始した後に米国にアプルーバル(承認)をもらう。こんな、危険なビジネスをやっていた。私はいつも「もし、アプーバルをもらえなければ、この量産品はどうなるのだろうか」と、いつも心配していた。
当時の担当者によれば、「米国のスピードでものづくりをやっていたら、生産を開始する時期になれば、もうシーズンは終わっている。スピード感が全く違うのだ。」とのこと。しかし、それならそれで、その事実をきちんと説明せず、アクロバティックな仕事をやり続けている商社の価値とはなんだろうかと、いつも疑問に思っていた。
ローカルへの権限委譲で売上が上がったGAPの事例
私がまだ30代だった頃、GAP(ギャップ)の日本法人であるギャップジャパンのVice Presidentと話す機会があった。曰く、「レディースについてはローカライズが基本。各国のファッション事情に合わせてMDに柔軟性を持たせる必要がある」と。また、「ただし、メンズ、キッズについては本国コントロールの方がうまくゆく」といったよ
実際彼らは、本国コントロールだったレディースファッションを、当時30%程度日本仕様にし、売上を上げながら全体のブランドの統一性と両立させたようだ。メンズとキッズは外国製がよいというのも理解できる。確かに、セレクトショップのような海外ブランドを日本に販売するビジネスモデルは、輸入品が多い(もちろん、寸法などをアジア人仕様にしているが)し、レディースの場合はSPAによるQR(クイックレスポンス)生産が一般的だ。
私自身、中国、韓国、日本でアジアでのブランド買収案件に携わったとき、同じブランドだからといって、国が違えば評価も違うということを思い知らされた。例えば、日本製のブランド服を韓国にもってゆくと「落ち着きすぎている」「全体に色のトーンが沈んでいる」などの評価で、韓国で同じブランドで売れている商品は、色使いもデザインも「派手」なものが多かった。
このように、国が違えば売れるものも違う。これは、外食でもそうだし衣料品もまたしかりなのだ。
AmazonベーシックとAmazon essentialsは日本仕様か
さて、そこでアマゾンファッションである。「宇宙一の品揃え」を標榜する同社だが、お約束のナショナルブランド (NB)を揃えている点では、楽天ファッション、ZOZOTOWNもしかり。特段、アマゾンファッションに特徴があるわけでもない。問題は、同社のPBであるAmazon ベーシック(日用品、食品、雑貨など幅広い) とAmazon Essentials(ベーシックな衣料品が中心)である。私は、無敵のアマゾンなら、Amazonベーシックを徹底的に高コスパで、ベーシック、
確かに最近のアマゾンジャパンは、以前ほどアパレル事業に積極的には見えない。むしろ最近の動きとしては、ライフコーポレーションなど食品スーパーとの提携によるグロサリー販売の強化、ルンバの開発元であるiRobotの買収による家中のロボット事業などが目立つ。ファッション商品のようにエリアごとに好みが分かれる複雑なデータ解析が必要なものより、生活に密着した必需品で、AI を利用し基本技術の標準化によるオペレーション効率向上に重きを置くビジネスが得意なように見える。
このような言い方は正しくないのかも知れないが、日本はアジアの中ではダントツに衣料品の質が高くファッション性も高い。そこに、
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アマゾンファッションがとるべき戦略とは
いくらファッション ECが伸びているからといって、とくに日本市場で並みいる競合を抑え、アマゾンがグローバル同一商品で勝てる、とは私は思わない。残念ながら、日本は「アジアのファッション・シティ」である。もっと正確にいえば、彼らのビジネスモデルは、日本での衣料品ビジネスは難しいということだ。彼らのモデルは、もっとAIを活用しデータに基づくMDの広がりで勝負すべきだから、結果的に、グロサリーやスマートホームに注力している戦略は正しいと思う。
もし、さらなる事業拡大を狙い、最も伸びているといわれる衣料品で日本市場を攻略したいのであれば、ファッション商品は諦めるべきで、徹底してユニクロの研究をすべきだと思う。また、ローカライズを推進するため、日本人のアパレルヘッドに事業を任せること。つまり、同社は、グローバル同一商品を展開するLOUIS VUITTONやGUCCIほどのプレミアム・ブランド力はないことを知るべきということになる。私であれば、ものづくりに長けた商社と組んで、日本のアパレルのマーチャンダイジングを導入し、そのままアジアの成長国に展開する「Tokyo showroom city 戦略」を推進すべきだろう。同社が人、金をつぎ込み、ノウハウを本気で内製化しようと考えるなら、私は十分可能だと思う。
戦略とは絞り込みである。最も危険なのは、両者を中途半端にやるということだ。やるなら徹底的にやる。やらないなら、ファッションは今のままにしておき、モンスター・ECスーパーとして日用雑貨や生活必需品などを徹底して売り抜くべきだ。同社のこれからに注目したい。
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プロフィール
河合 拓(経営コンサルタント)
ビジネスモデル改革、ブランド再生、DXなどから企業買収、
デジタルSPA、Tokyo city showroom 戦略など斬新な戦略コンセプトを産業界へ提言
筆者へのコンタクト
https://takukawai.com/contact/
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