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すべて逆張り!?「感動接客」のノジマが仕掛ける、家電不毛地帯への出店戦略の勝算

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2022年10月12日 20時55分

ノジマの小型店に位置付けられるノジマ三鷹東八店

デジタル家電専門店のノジマが、強みを最大化する出店戦略でさらなる拡大を推し進める。低成長時代にあって堅調に業績を伸ばし続ける同社。強みはファンができるほどに磨き上げられた接客力だ。あらゆる業界で利便性と価格競争力で圧倒するEC化が加速する中、あえて、「うちの強みの源泉は支店経営」と店舗人材による差別化を鮮明にする。ノジマ の野島廣司社長に、ECシフトが主流の時代に、あえてリアル店舗にこだわる逆張りの出店戦略の勝算とは──。

ノジマの小型店に位置付けられるノジマ三鷹東八店
ノジマの小型店に位置付けられるノジマ三鷹東八店

「一等地」の意味が変質する中での出店戦略

 コロナ禍を経て、各業界で出店戦略の潮目が変わった。在宅ワークが定着し、都市部への人出が減少。人の流れが様変わりしたことで、一等地への大規模店舗出店の意味合いが変わり、ロードサイド、住宅地への出店など、人の流れや商品特長に合わせた場所選びが販売力を高めるより重要な要素となった。

 そうした中、ノジマが着目するのが、首都圏の住宅街やその周辺のショッピングセンターだ。「首都圏にはまだ家電店がない“隙間”がある。出店戦略は、ニーズを見極めながら、そうした空間を埋める形で進めていきたい」と野島社長は語る。

 “隙間”とは、外出が減り、人が滞留するようになった消費者の生活圏だ。野島社長は「お客さまの近くへ行って、便利に使ってもらえたらいいと思っている」と売場をより生活圏へ近づける出店戦略の意図を明かす。

 ノジマは総投資額600億円程度を投じて、2028年までに小型店を中心に100店舗ほどの大量出店を計画する。22年3月末時点の店数が205店なので、約1.5倍に増えることになる。特に集中出店を見込むのが、まだまだ店舗網が手薄な東京23区などを中心とする東京エリアだ。こうしたエリアへのスムーズなデリバリー体制を構築するため、22年9月、埼玉県三郷市に物流センターを開設した。 

空間だけでなく、“失われた役割”も補完する

ノジマ三鷹東八店の店内(写真はオープン当初のものです)
ノジマ三鷹東八店の店内(写真はオープン当初のものです)

 都心の住宅街も視野に入れる出店戦略では、単に隙間を埋めるだけに止まらない。かつては住宅街にも浸透していた「街の電気屋さん」。その衰退によって失われた、困りごとにも耳を傾ける“よろず屋”的役割も担うことで、地域住民のサポーターとして根付くことも視野に入れる。

「街の電気屋さんがどんどんなくなっている。それに代わる役割も担えたらと思っている。電球を換えたり、よろず屋的に住民の困っていることにできるだけ対応できるような」と野島社長は、消費者のよりきめ細かくすくい取り、距離を縮めることで地域に根づいて密度の濃い関係性を構築するイメージを思い描く。

肝は店長に裁量を委ねる支店経営

 キーワードとなるのが「支店経営」だ。マニュアル対応で、どこでも同じように運営、営業、接客するチェーンストア経営とは一線を画し、各店舗の店長に裁量を委ねる支店経営で地域特性に合わせたサービスを提供する。同社が磨き上げてきた独自のノウハウが、“隙間エリア”への出店ではより活かされることになる。

「どこに出店したいかではなく、ニーズに合わせて出店する。店舗規模もしかりだ。そうやって地域の需要に合わせて最適なサービスを提供できるのが支店経営のうちの強み。品揃えや内装なども、支店ごとにそれぞれ違う」と野島社長。一等地や巨大モールなど、集客力をベースに出店戦略を練る他社に対し、需要に応じ、人材でニーズに対応するのが同社の出店エリアの考え方。接客力に勝る同社だからこその出店ロジックだ。

 結果的に、売場面積も1500㎡未満の中小規模店舗の割合が高くなっており、1000㎡未満は約30店舗ある。あくまでニーズ次第というものの、今後も中小規模の出店は継続していくという。

ネットの利便性より、きめ細かな接客力

ノジマの野島廣司社長
ノジマの野島廣司社長

 物理的にも接客密度が濃くなることで、これまで以上に接客力が重要になる。そこで同社は研修施設の購入を検討するなど、真骨頂の接客力をさらに強化すべく、水面下で人材育成の体制強化も進めている。

「店舗スペースが小型化すれば、店舗スタッフが1、2人ということもある。そうなると一人ひとりがより多くの知識を蓄えておく必要がある。これまで以上に人材育成は重要になる」と、野島社長はよりきめの細かい接客力が、隙間エリアへの出店戦略のカギを握ると力を込める。

 昨今は、実店舗とオンラインを有機的につなぎ、販売を最大化するOMO(=Online Merges with Offline、オンラインとオフラインの融合)も浸透しつつある。少数精鋭を補完する戦略としても有効な一手になりうるが、野島社長は「ウチでは基本的に行わない」とあくまでもリアル店舗での接客力で、顧客ニーズと満足度を満たす方針にブレはない。

「変な会社でしょ」と笑う野島社長。だが、ネットで何でも買える環境が整備されたことと引き換えに失われたものもある。商品を選ぶ際の豊富な知識を持つ店員からの情報収集や使い方がわからない時のサポートや故障時の対応などだ。

 豊富な品揃えで便利に安く買える。ネットで家電を購入するメリットを集約すればこの3つにだろう。一方、同社で家電を買えば、価格はリーズナブルに、丁寧な接客とアフターフォローが付いてくる。どちらが良いかは、ユーザーの価値観にもよるが、同社の今後の出店戦略では、後者を欲するユーザーが多いエリアがターゲットとなる。

製品購入に「安心」を付加し、差別化

 出店強化を図る首都圏の住宅街は高齢化が進んでおり、製品購入に「安心」を求める層も少なくない。かつての街の電気屋さんのように、住民との密なつながりを持って、よりきめ細かくニーズをすくい取ることで、「固定化」にもつながる。

 時代の流れに逆行しているようでいて、実は新しい──。常に変化を続け、より良い販売スタイルに磨き上げていく同社だけに、他社の常識や想像を超えることは真骨頂だ。景気は後退基調にあり、世の中は沈みがちだが、だからこそ同社の「感動接客」が、“買い場”として、そのポテンシャルをより発揮する潮流になりつつあるのかもしれない。

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