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売り切れ続出!「ぽっちゃり女子」のための「ラ・ファーファ」ECモール好調の秘密とは?

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2022年11月13日 20時56分

ラ・ファーファ

「ぽっちゃり女子」のためのファッション情報誌「la farfa(ラ・ファーファ)」が20227月に開設したECモール「la farfa SHOP ONLINE」が好調だ。同誌の人気モデルたちが思い思いにプロデュースしたワンピース、ブラウスなどのアイテムは、軒並み売り切れが続出している。一般的なアパレルブランドが最大でもLLまでのところ、最大で「10L」までを取り揃えるサイズ展開も“大きな”特徴だ。

ニッチなマーケットを対象としたこのユニークなECモールは、同誌を発行する文友舎(東京都)と、アパレル大手ワールド(兵庫県/鈴木信輝社長の協業によって実現した。その協業にいたる経緯や、好調の秘密、今後の展開について、両社のキーマンに聞いた。

プラスサイズファッションの先駆者

「la farfa」のモデル
「la farfa」のモデル

 「プラスサイズ」というファッション用語をご存じだろうか。平均より大きなサイズの、いわゆる「ぽっちゃり女子」を対象としたファッションカテゴリーを指す。

 そのプラスサイズファッションの、日本におけるメディアの先駆者が、2013年発刊のラ・ファーファ。主に20代半ば~30代半ばのぽっちゃり女子が読者層のファッション情報誌だ。

 ラ・ファーファをめくると、ガーリー系、コンサバ系から最近の流行のY2K2000年頃に流行ったファッション)まで、バラエティ豊かなファッションスナップが誌面を飾る。特徴的なのが、そのスナップとともにモデルの身長、体重、スリーサイズを明記していること。また、アイテムのサイズ展開も「2L4L6L」などとくわしく表記されている。

 「一般的な女性ファッション誌が『ぷに子』『マシュマロ女子』などのフレーズとともに一時的にプラスサイズ特集を組むことはあるが、プラスサイズだけに振り切った雑誌は他にはない。また、他誌ではプラスサイズと言ってもLからLLくらいまでだが、本誌では最大10Lまで展開するアイテムを紹介している」

 そう語るのは、ラ・ファーファ編集長の高井淳氏。ぽっちゃり女子たちにとって女性ファッション誌のモデルは憧れの存在ではあるが、スリムな体型のモデルが着用する服はほとんどがサイズ展開もなく、とても着られない。そのぽっちゃり女子たちに「自分でもおしゃれを楽しめる」実用的なファッション情報を提供し続けてきたのがラ・ファーファだ。2022年で発刊から9年目を迎え、ぽっちゃり女子たちの声に応えながらニッチなマーケットを牽引し続けてきた。

ワールドとの偶然の出会いで実現したECモール

ワールド ネオエコノミー事業本部
ワールド ネオエコノミー事業本部 F3ディレクターの針貝泰子氏(左)と同グループの山下直輝氏(右)

 そのラ・ファーファを出版する文友舎と、アパレル大手・ワールドとの協業によって20227月に誕生したのが、プラスサイズ専門のECモール「la farfa SHOP ONLINE」だ。ラ・ファーファ専属のプラスサイズモデルたちが「自分が本当に着たい服」を自らプロデュースし、ワールドが商品化してオンラインで販売する。

 ワールドのネオエコノミー事業本部 F3ディレクターの針貝泰子氏は「あるインフルエンサーのファッションブランドを立ち上げたのがラ・ファーファと出会ったきっかけ」と、その経緯を振り返る。

 ワールドでは、個人のクリエイターやインフルエンサーのアパレルブランド立ち上げを支援する事業「ワールド・ファッション・クラウド」を展開している。

 その事業で立ち上げたブランドの撮影の際、アサインしたプラスサイズモデルがラ・ファーファ専属モデルだった。編集長の高井氏も撮影現場に同行しており、ここでワールドと文友舎の初めての接点が生まれる。

 実は、以前から高井氏は「いつかラ・ファーファのオンラインショップを開設したい」との構想を温めていた。

 「雑誌も発刊から9年が経ち、良くも悪くも“踊り場”に来ていたので、何か新しい展開を模索していた。そのなかで、周りから『オンラインショップをやってみたら?』という声を頂くことが多かった」(高井氏)

 ただ、出版社である自社にはリソースやノウハウがなく、一からECを立ち上げるのは難しい。そこに、たまたま目の前にワールドの人が現れた。高井氏にとっては「願ってもないチャンス」と、迷わず協業を申し出た。

 一方、ワールド側も別の悩みを抱えていた。

 「『ワールド・ファッション・クラウド』を進めるなかで、インフルエンサー個人との協業でブランドを立ち上げることの難しさを痛感していた」(針貝氏)

 そのようなタイミングでのラ・ファーファからの協業提案。社内に話してみたところ「やってみようよ!」と好反応が得られた。

 「プラスサイズというニッチなマーケットは、深掘りすればおもしろいビジネスモデルができるのではないか、との期待感が社内にあった」(ワールド・山下直輝氏)

 雑誌メディアとしてのラ・ファーファの安定した実績・ブランドに加え、インフルエンサー個人とでなくBtoBで進められる安心感も背中を押し、文友舎とワールドのタッグでラ・ファーファ初のECモールプロジェクトは船出した。

ポップアップショップで約1000人が来場! 

ポップアップショップ
2022年7月に開催されたポップアップショップ

 ラ・ファーファの人気モデルたちがプロデュースしたアイテムも揃い、いよいよ販売の態勢が整ったところで、プラスサイズブランド7社と協力し、オンラインショップの開設に先駆け20227月に3日間のポップアップショップを開催。すると、ラ・ファーファ誌面やモデルのSNSでの告知も奏功し、来場者は3日間で延べ1000人ほどの盛況ぶりとなった。

 「実際の来客と商品の動きを見て、一定の需要があると手応えを得ることができた」(針貝氏)

 同時に針貝氏たちが心強く感じたのは、ラ・ファーファのモデルとフォロワーとの「つながり」だ。彼女たちが会場に姿を見せると、来場者から大きな歓声が上がり、写真撮影に興じる光景があちこちで見られた。

 ラ・ファーファのモデルは、Instagramなどでのフォロワー数は12万人程度。インフルエンサーとは言えない規模だが、コメントにこまめに返信したり、フォロワーを名前で呼んだりするなど、日ごろからフォロワーとの密なコミュニケーションを心がけている。その努力がフォロワーとのエンゲージメントを高め、大きな訴求力・購買力を生んでいたのだ。

 このポップアップショップでスタートダッシュに成功した「la farfa SHOP ONLINE」。売れ行きは目下好調で、サイト上には「SOLD OUT」の表示が掲げられたアイテムが続出。ぽっちゃり女子たちの期待に着実に応えている。

 一方で、「ニッチなマーケットのため小ロットしか生産できないが、同時に一定のサイズ展開を揃えなければならない」(針貝氏)と、プラスサイズならではのMDの難しさもあるようだ。受注生産を採用したり、プロデュースを手がけるモデルの体形に合わせて個々にサイズ展開を変えるなど、工夫を凝らしている。

 また、ワンピースを一着作るにも、当然ながらプラスサイズだと「用尺が普通サイズの2倍ほどになる」(針貝氏)。それでもラ・ファーファのブランドを後ろ盾に、一定の利益率を確保した価格設定を行っている。それでも、ワンピースやパンツ、ブラウスなどのアイテムはどれもアンダー1万円と、ワールドの企業努力によって手ごろなプライスを実現している。

 「公式Instagramを見ると、海外からもコメントや問い合わせが寄せられている」(高井氏)と、アジア圏を中心とした海外からの反響も少なくない。ラ・ファーファブランドの海外展開への期待も高まるが、「まずは国内のニーズを拾ってから」(針貝氏)と、当面は国内におけるオンラインショップの認知獲得とマーケットの深耕に力を入れるかまえだ。

「おしゃれを楽しむ自由」を提供する

『la farfa』 編集長
文友舎「la farfa」編集長の高井淳氏

 近年ではルッキズム批判や「ボディポジティブ」などの言葉とともに「ありのままの体形を肯定する」ムーブメントが世界的に高まっている。その観点からラ・ファーファへの注目も集まっているようだが、編集長の高井氏は「別に『ぽっちゃり』を推奨しているわけでも、称賛しているわけでもない。シンプルにどんな体型の人にもファッションを楽しんでもらいたいだけ」と、このような気運とは一線を画していることを強調する。

 「発刊当初、読者の併読誌調査を実施したところ、女性ファッション誌の名前が挙がるかと思いきや、マンガ雑誌やマンガの単行本ばかり。それだけ、当時のぽっちゃり女子たちは、ファッションを楽しみたくても楽しめない環境に置かれていたのかもしれない」(高井氏)

 プラスサイズの服を買えるのはユニクロ、しまむらといったファストファッションや老舗の通販サイト、百貨店の大きいサイズ売場など、おしゃれを楽しめる選択肢がない。テレビを着ければダイエットジムのCMが流れ、「痩せれば明るい人生が待っている」とのメッセージを押し付けられる――そんな境遇にあったぽっちゃり女子に、「自由におしゃれを楽しんでほしい」とのシンプルなメッセージを9年間発信し続けてきたラ・ファーファ。多様性、ボディポジティブといった言葉はその後付けにすぎないのだろう。

 そして今、「la farfa SHOP ONLINE」が、ぽっちゃり女子のファッションの可能性をさらに広げている。これからも色とりどりのファッションアイテムが彼女たちに「おしゃれを楽しむ自由」を提供してくれることだろう。

 

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