業績回復も「100店舗閉鎖」を断行……すかいらーく再成長のための打ち手
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2022年11月13日 20時50分
すかいらーくホルディングスは12日、2020―2021年に約200店舗を閉店すると発表した。新規出店との差し引きで約120店舗の純減となる。従業員の雇用は維持するとしている。資料写真、2006年6月撮影(2020年 ロイター/Yuriko Nakao)
ファミリーレストラン大手のすかいらーくホールディングス(東京都:以下、すかいらーく)は2022年8月、2022年12月期の中間決算を発表すると同時に、ロードサイドを中心とした100店舗を閉鎖することを明らかにした。店舗閉鎖に伴い、店舗の減損損失を23億円計上する。ファミレスをはじめとした外食業界全体がコロナ不況から脱しきれていない、というのであれば話がわかるが、競合各社の業績はすでにコロナ前を上回っているだけに事態は深刻だ。
![すかいらーくホールディングスが展開するファミリーレストラン「ガスト」の看板](https://diamond-rm.imgix.net/wp-content/uploads/2022/06/20220608ds63_p.jpg?auto=format%2Ccompress&ixlib=php-3.3.0&s=5f64438d09fb82408c6845d66de4211b)
(時事通信社)
足元業績回復も店舗閉鎖を断行
「ガスト」「バーミヤン」「しゃぶ葉」「ジョナサン」などさまざまな外食業態を展開するすかいらーくグループ。閉鎖を発表した「100店舗」という数字は、これら系列店の閉鎖数合計だという(内訳は非公表)。
100店舗という数字はインパクトが大きかったもの、すかいらーくの閉店ラッシュは今に始まったことではなく、実は2021年も70店弱を閉店。2019年末に系列店合計で3256あった店舗数は、直近では3069にまで落ち込んでいる。3年足らずで200店舗が減っており、縮小均衡が続いていることになる。
確かにコロナ禍に苦しめられたすかいらーくだが、足元業績は回復基調にある。2022年4月以降、月次の既存店売上高は対前同月比2ケタ増となっており、とくに9月は同31.4 %増と大きな伸びを見せている。
ただしコロナ禍前の2019年と比べると、8月は22.4%減、9月は17.8%減と、「コロナ禍の苦境から脱した」と胸を張れる数字ではなく、むしろいまだ厳しい状況にあると言っていい。だからこそ、回復期にある中でも大量閉店を決断したのだろう。
ファミレス業界では圧倒的存在感
ただ、だからと言ってすかいらーくの100店舗閉鎖をネガティブにとらえるのは早計かもしれない。
業績が低迷しているとはいえ、すかいらーくの2021年12月期の売上高は2645億円(22年12月期の売上予想は対前期比17.9%増の3120億円)。同じファミレス業界2位のサイゼリヤ(埼玉県)は1442憶円(2022年8月期)、3位のロイヤルホールディングス(東京都)が839億円(2021年12月期実績)と、すかいらーくは2位以下を大きく引き離している。
圧倒的な売上高を稼ぐ原動力となっているのが、同社のマルチブランド戦略だ。
お手頃価格を重視する主力の「ガスト」、「街の中華屋さん」がコンセプトの「バーミヤン」、素材や鮮度、接客サービスにこだわる「ジョナサン」、和食に特化した「夢庵」、気軽にごちそうが楽しめる「ステーキガスト」など、25を超える業態を展開している。マルチブランドで店舗展開することで、幅広い顧客をカバーしようという戦略だ。
注目したい、ブランド育成力
対する競合は、ロイヤルホールディングスが、主力「ロイヤルホスト」のほか、「シェーキーズ」(ピザレストラン)、「てんや」(天丼専門店)、「シズラー」(サラダバー&グリルレストラン)など19のブランドを展開しているものの、その数はすかいらーくに及ばず、売上規模は全ブランドを合計してもすかいらーくが3倍以上だ。ブランドの育成力という点では、文句なしにすかいらーくに軍配が上がると言っていい。
売上規模の大きさは、食材の調達力やセントラルキッチンでの高い効率化につながり、コスト面で競合に差をつける。まさに、すかいらーくの強みといえよう。
では100店店舗の閉鎖は、肝心の売上規模に影響しないのだろうか。コロナ禍において、確かにリアル店舗の売上高は減少した。ただその一方で、デリバリーやテイクアウトがそれをカバーする伸びを見せている。仮に、店舗を減らして売上がそれほど落ちないのであれば、店舗閉鎖は効率向上の施策として評価できるのではなかろうか。
ファミレス誕生から半世紀……
すかいらーくは生き残れるか
1970年、東京府中市に日本初のファミリーレストラン「スカイラーク」の1号店が開店した。時代は高度成長期、ファミレスは洋食文化にあこがれる消費者に根づいていく。セントラルキッチンが実現する安定した味と手ごろな値段は、「安心感」を求めるファミリー層のニーズともマッチした。
あれから半世紀、創業者の横川兄弟はすでにすかいらーくを去り、消費者はファミレスに飽きて多様化した外食業態に目移りしている。同社の商号でありファミレスの代名詞ともいえる「すかいらーく」ももう無い。その名を冠した店舗は、2009年閉店の「川口新郷店」(埼玉県川口市)を最後に、姿を消した。
それでもすかいらーくは、さまざまな業態で移り気しやすい消費者を巧みにとらえつつ、規模に拡大によるサプライチェーンの効率化を徹底し、競合に打ち勝とうとしている。
よく知られていることだが、「すかいらーく」の語源は、「府中の鳥」であるヒバリの英語名である。ヒバリは晴れわたる空に独特のさえずりを鳴り響かせるところから、「日晴(ひはる)」と命名されたと言われている。すかいらーくはこの先、困難を乗り越え再び大空で舞い飛ぶことができるのだろうか。
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