プレナスが創業家によるTOBで上場廃止へ! 今後の上場オーナー企業の在り方を考察
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2022年12月18日 20時55分
「やよい軒」「ほっともっと」の運営元として知られるプレナス(福岡県)が上場廃止となる。株式公開買い付け(TOB)を経て創業家が全株式を取得する、いわゆるMBO(マネジメント・バイ・アウト)と呼ばれる手法により、2023年1月をめどに上場を廃止する見通しだ。
ちなみにプレナスは、創業家が会社の支配権を握る、いわゆるオーナー企業でもある。本稿では、プレナスの上場廃止からオーナー企業の特徴やメリット・デメリット、上場オーナー企業の今後の在り方について考えてみたい。
日本企業のほとんどはオーナー企業!
「同族会社」というと「オーナー企業」を想起することが多いかもしれないが、一般的にオーナー企業という概念は同族会社よりやや広いとされる。
「同族会社」とは、オーナーやその親族など上位3株主グループが株式の過半数を保有する企業のことを指す。国税庁の「会社標本調査(令和2年度分)」によると、国内にある280万ある法人のうち、非同族会社は10万社に満たない。資本金1億円以上の大法人約1万万8000社を見ても、8割近くが同族会社となっている。
一方、オーナーや親族の所有株式が過半数に満たなくても、実質的に経営権を握っている会社が「オーナー企業」とされる。上場企業の場合、純然たる同族会社は少ないが、オーナー企業と目される企業は多い。たとえば、金融機関と外国人投資家が株式の6割以上を所有するトヨタ自動車も、一般的には豊田家のオーナー企業とされている。
所有関係では、オーナー家が筆頭株主または10大株主である場合、または所有関係が弱くても役員を送り込んでいる場合はオーナー企業と定義され、上場約3800社のうち、実に半分以上がオーナー企業と言われている。
そして今回上場廃止を発表したプレナスも、オーナー企業の条件に当てはまる。オーナーの塩井辰男氏が代表取締役社長を務め、過半数には達してはいないものの、筆頭株主としてファミリーオフィスの塩井興産が4割近くの株式を握る。オーナー企業の中でも、オーナーによる支配関係は強い方と言っていい。親族間で株式所有を分散させていないため、“お家騒動”の心配もない。
プレナス上場廃止のねらいは?
会社を実質的に支配できているのであれば、わざわざ上場廃止にするのはなぜだろうか。
1つは経営権の強化だ。プレナスは2022年10月に公表したリリースで、上場廃止について「短期的な利益にとらわれずに、中長期的かつ持続的に当社グループの企業価値を向上させるためには、当社株式を可能な限り早く非公開化することが、(中略)有効な手段」との見解を示している。
オーナー社長だからといって、必ずしも枕を高くして眠れるとは限らない。少し前の話になるが、あるオーナー企業の社長解任劇は、資本主義社会における株主のパワーをまざまざとみせつけ、世のオーナー社長たちを震撼させた。
2018年6月に、シュークリームで有名な洋菓子のヒロタ(東京都)の運営元、21LADY(東京都)のオーナー社長だった広野道子氏が株主総会で解任された。当時、21LADY株式の3分の1を所有する筆頭株主だった広野氏だが、株式の17%を保有していた投資ファンド、サイアムインベストメントが経営陣の刷新を株主に提案。ほかの株主も賛同を得て、結果として広野氏は解任された。
上場廃止のメリットは
プレナスとて安心はできない。“お荷物”だった「ほっともっと」の大規模整理を2019~2020年にかけて実施し、多額の減損損失を計上しながらも営業損失を解消したものの、今度は「やよい軒」が苦しくなっている。2022年2月期のやよい軒事業の売上高は何とか前期を上回ったものの、コロナ禍前にはとても届かない。
フランチャイズへのシフトが見込めない中では、やよい軒の直営店舗を退店するしかない。プレナスの自己資本比率は6割強で、有利子負債比率もわずか3%にとどまる。財務基盤はきわめて強く、退店にも充分耐えられるが、一時的な業績悪化は避けられず、株主から経営責任を問われる可能性もぬぐい切れない。
だからこそMBOに踏み切り、株主からの声を遮断して、長期目線で大胆な経営改革に注力しようというわけだ。
経営権の強化以外にも、上場廃止のメリットはある。区分によって異なるが、上場会社を維持するためには流通株式数や株主数、流通株式時価総額金額などさまざまな基準をクリアしなければならない。決算開示を通じた株主・投資家との対話も求められる。
このように上場廃止は、上場企業に求められるわずらわしさから解放されるというメリットもあるのだ。
上場廃止にはデメリットも……
もちろん、上場廃止にはデメリットもある。懸念されるのが、株主からのチェック不全、そして経営者の暴走だ。上場企業の場合、経営陣は内部監査を通じたガバナンス(企業統治)をクリアしなければならないが、非上場企業にはそうした義務がない。
株式市場からの資金調達ができなくなるのもネックだ。ファンドの支援を受けているのであれば資金面での不安はないが、プレナスの場合は塩井興産単独でのMBOであるようだ。仮に将来、大きな資金需要が生じたときは、何かしらの手を打たなければならない。
プレナスは2023年1月に開催される臨時株主総会を経て、正式に上場廃止となる見通しだ。MBO後、同社は安定した経営を続けることができるのか。国内に数多く存在するオーナー企業の今後の占うという意味でも、今後の動向を注視したいところだ。
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