10年後、アパレル業界に起きる7つの変化
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2019年4月1日 0時50分
既存のビジネスモデルが通用しなくなったアパレル業界。今後どのように生き残っていけば良いのだろうか、そもそも、どんなことが今後起こってくるのだろうか。事業再生を専門とするコンサルタントの河合拓氏は、10年後のアパレル業界を大胆予測する。
企業改革の最前線にいるから導ける7つの変化
本連載を書くにあたり少々私のご紹介を差し上げたい
私自身の経歴を申し上げると、繊維・アパレル系商社で9年実務をやり、その後、20年経営コンサルティングをやってきた。当然、繊維・アパレル系企業が中心で、経験だけでいえば50社を超える。私のスタイルはユニークで、何かを教えたり調査をしてレポートをまとめるというものでなく、クライアントとともに考え、実務を一緒にやりながら目標を達成するような仕事をやってきた。
そのような背景から、私が持っている情報やデータは業界全体を俯瞰したものでなく、特定企業の非公開情報が原則で、次週以降の内容も私の体験をベースにしたものばかりで、実データとなる根拠は原則的に開示ができない。したがって、本連載は産業論としては不十分であること、かつ、時に分かりやすくするため、あえて単純化していることはご容赦頂きたい。しかし、企業改革の最前線にいる身として、多くの企業経営者とのディスカッションを通して得た、私なりのヴィジョンや方向性を提示することで、各社が建設的な議論を行うそのネタとなればという思いで連載を引き受けた。
さて、第1回は、10年後の日本のアパレル業界がどうなっているかという7つの予言である。私はアナリストでもなければ、占い師でもないため下記に対する確証は持てないが、恐らく、こうなるのではという一つの見方として議論の対象となってくれれば幸いだ。
アパレル業界 10年後の7つの変化
変化1 企業数は半分以下に
日本にある企業数は半分以下となり、多くの企業が合併や統合をしながら事業規模を拡大。親会社は外資企業か日本の商社、あるいは親会社がいないネットワーク型の産業エコシステムが形成され、異業種を含む多くの会社間で業務連携がはじまる。
変化2 販売拠点は自販機かwebに代わる
リアル店舗のような販売拠点の多くは、自動販売機かwebに代わり、接客型リアル店舗はブランドの世界観を感じるコンセプトショップ、あるいはショールームとなり、ファッション好きな少数マーケットを対象にしたビジネスとなる。
変化3 従業員の多くはエンジニアとクリエイターに
アパレル業務の多くはロボットが自動処理し、従業員構成比率はそれほどファッションに興味のないエンジニアの構成比率が増加。加えて、クリエイター職と経営職の三層となる。
変化4 超大手と個人事業に二分される
いわゆる衣料品の専門店の多くが、雑貨や家具のような物販だけでなく、ジム、食品、旅行からリフォームまで、衣食住遊をトータルサービスで提供する複合業態となり、物販専門店は、極めて強いブランドを持った企業か、グローバルにビジネス展開する超低価巨大企業、あるいは後述する個人事業主群に二分化する。
変化5 個人間取引業者達が大きなシェア握る
こうした大企業とは別に、市場の大多数を多くの個人事業主のような零細企業が存在感を出し大きなシェアを構成する。例えば、会社員が副業でパソコンのアプリで服を簡単に生産できるようになり、PCやスマホで、まるで年賀状の自動印刷ができるようなサービスが主流となり、自分用とマーケットプレイスのようなプラットフォーマーを通した販売が中堅企業群の市場を食ってゆく
変化6 在庫を持たなくなる
市場は4分割され、高級ブランド品、低価格コモディティ品、二次流通品(中古品)、前述のC2Cとなる。さらに、多くの企業は在庫を持たなくなり受注生産が一般化。在庫販売は二次流通市場、あるいは、レンタル事業のみとなる
変化7 クラスターから個人へ
ある特定の共通嗜好をクラスタリングするマーケティングという概念も消滅。ビジネスは絶対単品と絶対個人の組み合わせで分析され、個人の購買動向を深く追いかけるパーソナル・コミュニケーションが主流となる。しかも、こうした特別待遇が、低価格帯ブランドまで降り、数百円の服でさえパーソナルコンシェルジェによる着こなし提案と、世界に一つしかない服を提供するカスタム・オーダーがスタンダードとなる
いかがだろうか? 信じられるものもあれば、信じたくない未来もあるかもしれない。次号以降、アパレル業界で起こっていることを順次解説していく。それらを読み進めていくにつれ、この7つの予言が皆さんの頭の中でいっそう真実味を増すことになる。
プロフィール
河合 拓(事業再生コンサルタント/ターンアラウンドマネージャー)
ブランド再生、マーケティング戦略など実績多数。国内外のプライベートエクイティファンドに対しての投資アドバイザリ業務、事業評価(ビジネスデューディリジェンス)、事業提携交渉支援、M&A戦略、製品市場戦略など経験豊富。百貨店向けプライベートブランド開発では同社のPBを最高益につなげ、大手レストランチェーン、GMS再生などの実績も多数。東証一部上場企業の社外取締役(~2016年5月まで)
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