イオンと資本業務提携したフジが トップバリュと距離を置く理由
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2019年4月21日 20時0分
愛媛県はじめ四国4県、さらに広島県、山口県の中四国6県で店舗展開するフジ(愛媛県/山口普社長)。商勢圏では競争が激化するなか、イオン(千葉県/岡田元也社長)と資本業務提携を締結したほか、経営破綻した地場食品スーパーを支援するなど、活発な動きを見せる。取り組みの現状、また今後の展望などを尾﨑英雄会長兼CEOに聞いた。
イオングループ各社と定期的に話し合い
地場SMの受け皿となる動きも
――イオンとの資本業務提携は、どこまで進んでいますか。
尾﨑 商品や物流面を協議しているところです。商品は、とくに生鮮食品をどこで、いかに加工し、どのように配送するのかが大きな議題となります。イオンと連携しながら、中四国にあるイオングループのマックスバリュ西日本(広島県/加栗章男社長)、マルナカ(香川県/平尾健一社長)、山陽マルナカ(岡山県/宮宇地剛社長)と、定期的に話し合いの場を持ち、スピーディに進めています。
当社は現在、プロセスセンター、物流センターの整備、拡充を進めています。今後、青果はセンターを建て替えるほか、総菜や鮮魚の施設も同様に、拡大や生産態勢の強化を図る計画です。そのなか、当社、そしてイオングループ各社を合わせた施設が、どれほどの生産能力があるかを評価しています。物流センターも各社の配送施設、能力を評価しているところで、中四国エリアでの効果的な協力関係をめざして協議しています。
――互いの経営資源をいかに活用するかが大きなテーマとなります。
尾﨑 その意味では、カードシステムも重要な議案のひとつ。各社が持つ顧客データをもとに、より精度が高く、お客さまの満足度を上げられるビジネスの実現を進めます。
――イオンは、各地にまとまった食品スーパーの連合体をつくる方針で、ローカルに密着した企業との連携を強めつつあります。その意味で、ローカルに根差したフジという企業は連合体の一員としてふさわしく感じます。
尾﨑 イオングループの食品スーパー、そして当社が持つ、技術、知恵、ノウハウ、アイデアが結集すれば、大きな力になります。ただそれらをうまく融合させるのは、決して容易ではありません。今後、丁寧に協議を重ねていく考えです。
――一方、御社は各地にある地場食品スーパーの受け皿となる動きも見られます。
尾﨑 経営破綻した愛媛県松山市の地場食品スーパー、サニーTSUBAKIの商品供給に関する支援を昨年6月より開始し、今年2月にはスポンサー契約を締結しました。また今年3月には、当社子会社のフジマート(広島県/徳田知浩社長)が、広島県呉市の三和ストアーから3店を譲り受けました。
地場食品スーパーの経営者は、われわれ以上に地域、お客さま、くらしのことを知っている方が多いものです。そういった企業と組むことで、フジもさらに変化できる可能性があります。競争激化により小規模食品スーパーを取り巻く経営環境は厳しさを増しており、今後もM&A(吸収合併)の事例が出てくるかも知れません。
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「トップバリュと当面は距離を置く考え」
トップバリュと距離を置き
「スタイルワン」を強化
――イオンとの提携のなか、商品政策、とくにPBについてはいかに考えていますか。
尾﨑 従来通り、「スタイルワン」を強化しようと考えています。スタイルワンは、ユニー(愛知県/大原孝治社長)、イズミヤ(大阪府/四條晴也社長)、フジの3社で09年に立ち上げたプライベートブランド(PB)。最近、サンリブ(福岡県/佐藤秀晴社長)が加わり、4社で共同開発しています。
ただ今年で丸10年を迎えますが、以前とは状況が大きく変化しています。というのも、当初メンバーであるユニーは、ドン・キホーテなどを展開するパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(東京都/大原孝治社長)の子会社、イズミヤもエイチ・ツー・オー リテイリング(大阪府/鈴木篤社長)グループとなっています。こうした状況もあり、今後は当社が中心となりスタイルワンの開発・育成を進めていく方針です。
――提携したイオンにはPB「トップバリュ」がありますが、そちらとの関係はどうなりますか
尾﨑 当面は距離を置く考えです。とはいえイオンのPBには気になる商品が多くあります。なかでも低価格が特徴の「ベストプライス」は、競争が激化する時代にあっては、とても魅力的です。あれだけの価格を出せる商品は他になく、スタイルワンの商品開発にも大いに参考にしたいですね。
――PB以外の商品政策はどうでしょう。
尾﨑 地域ブランドや競合店には並ばない商品を積極的に取り入れ、定期的に改廃するような品揃えを実現したい。ただそれを棚割りに組み込むことはバイヤーの大きな負担になるので、あらかじめ自由度の高いゴンドラを用意するなどの工夫で対応できればと思います。
定番売場については、いずれAIが人間以上の働きをする時代が来るでしょう。今後、バイヤーは全国を回り、競合店にはない独自商品やローカル商品を発掘し、また交渉するといった、本来、人間が得意な業務を強化できればと考えています。
リアル店舗の存在意義を追求
――出店政策を教えてください。
尾﨑 従来、郊外を中心に店舗網を拡大してきましたが、今後は“街中”でも出店を進めます。高齢化の進行に伴い、人々のくらしは、公的機関をはじめ都市機能が集まる都心部に回帰する傾向があります。そういったエリアは、買い物をする場所が少ないところも多く、日々、必要な商品を提供する食品スーパーが必要になると考えています。
重点エリアは松山市、広島市といった県庁所在地、さらに広島では呉市など、それに準じる都市も視野に入れています。ただ近年は適切な立地、物件が減っています。そのため1階は駐車場、エスカレーターで2階の売場で上がるといったピロティ型も検討中で、このタイプだと、これまでよりコンパクトな物件にも出店できます。
――高齢化の進行を背景に、食品スーパーの機能も変化しますか。
尾﨑 人口減少が進むと、ローカルエリアでは生活圏が各地に点在するような状態が増えます。そんな時代にあっては、小売業は単に商品を提供だけでなく、人々をつなぐ場を提供する責任があると感じています。そのため近年、新店や建て替えなどのタイミングでイートインコーナーも導入するほか、ラジオ体操などイベントを実施する店舗もあります。接客にも力を入れ、お客さまと従業員がコミュニケーションを図れる環境も意識しています。
同時に、店舗の魅力を上げることも必要です。ネット販売が脅威となるなか、楽しく買い物ができる、エンターテイメント性のある売場づくりを通じ、リアル店舗の存在意義を追求していきます。
環境が変化するなか、挑戦を続け、地域のお客さまの豊かなくらしづくりに貢献できればと考えています。
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