アフターコロナの世界標準チェーン運営 ~国外の取り組みをいかに日本で応用するか~
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年2月28日 23時0分
株式会社ビッグ・エー
代表取締役社長
三浦 弘 氏
日本でまだ浸透しない独アルディ、リドルの戦略と単純化の実例
ビッグ・エーは、欧米ではハード・ディスカウントストアやリミテッド・アソートメント・ストアに分類できるだろう。ハード・ディスカウントストアは、もともとは独アルディが1952年に開設した150坪程度の小規模で高回転率の加工食品を中心に揃えた小売業態。リミテッド・アソートメント・ストアは、商品を絞り込んだ業態であり、低価格食品主力の小型総合店。幅広い客層に対し高購買頻度のベーシックアイテム700~1250品目、今は2000品目とも言われるが、品揃えを限定し、ショートタイムショッピングを狙うフォーマットだ。ストアブランドやプライベートブランドが主力で、売場面積は250~350坪。必要商圏人口は1万~2万人とされている。
世界の売上高ランキングで見ると独リドルを擁するシュワルツ・グループは4位、アルディ・アインカウフは8位で、14位のイオンや19位のセブン&アイHDに比べはるかに売上規模が大きい。22年11月にアルディやリドルがあるドイツを3年ぶりに視察に訪れた。ちょうどアルディの第1号店が改装オープンしたタイミングだった。
アルディ、リドルの店舗を見ると、一貫して「単純化」を追求していることがわかる。10年前にアルディを訪れた時もボックス陳列中心で単純化が進んでいたが、店舗入口近くは飲料や菓子などグロサリー食品が中心の陳列だった。現在は催事的なシーゾナル商品がボックス陳列されていた。
その横にある青果売場は、5年ほど前からアルディもリドルも日本のスーパーと同様に展開しており、大きな変化はなかった。今回訪問して大きく変わったのが、入口から通路の突き当たりの第2磁石売場だ。従来はお買い得コーナーだったが、そこがワインを中心とした売場になっていた。さらに日本でも同様だが、コロナ禍から冷凍食品の売場が1.5倍から2倍に広がり、商品もPB中心に充実していた。さらに大きく変わったのが、非食品の展開。自転車やテレビ、パソコン、クリスマス商品なども販売するようになっていたのが印象的だった。商品のラインロビングが進んでいることを実感した。
その他、数年前から牛乳や卵といった回転の早い商品は、専用の台車に陳列し台車ごと入れ替えることができるようにしており、ローコストオペレーションの徹底という点で勉強させてもらった。さらにチョコレートの箱はバーコードを多面に付け、レジで迷わずにチェックできるようにしていた。スキャンする時間は1秒にもならないが、全店舗で合わせれば相当な時間を節約できることになるだろう。
1円でも安く売るために「単純化、徹底化、標準化」を進める
アルディは非上場なので得られる情報が少ないが、その中でも有名なのが「Aldiべからず集」だ。ハイコストになることはやらないと徹底している。例えば経営コンサルタントを雇わないとか、外部に委託して市場調査を行わない、豪華なオフィスや高級な社有車を購入しないなど、細部までローコストを徹底している。
60年以上も前の理論だが、「小売の輪理論」の実効性は今もなお健在だと実感する。参入フェーズではローコストで入ってくるが、成熟段階では品揃え・サービスを拡充することで高コスト・高マージンになる。衰退期には、参入企業のローコスト攻撃の対象となり、市場から退場していくことになる。アルディ、リドルは創業以来、参入フェーズから新しいことにチャレンジし検証を繰り返すが、必ずローコストを守っている。EDLP(エブリデイ・ロウ・プライス)とラインロビングを徹底し、プライスレンジを狭く、プライスラインが少なく、プライスポイントを安い方に寄せ、販売量と陳列量の正比例化を図ることで、ローコストオペレーションを実践している。
ビッグ・エーでもこの20年間、アルディ、リドルのようなハード・ディスカウントストアを極めたいと考えてきた。ボックス陳列も段ボール製造会社と組みながら、従来の茶色の段ボールではなくカラーバリエーションを含めて工夫している。アルディの多面バーコードを参考にして、自社開発商品については、帯のようなバーコードを商品に巻き、レジで素早くスキャンできるようにしている。これにより年間2100万円くらいのコスト削減につなげている。レシートもアルディ、リドルはシンプルで短い。そこでビッグ・エーでも「パートさん募集」といったような情報を省いて短くすることで、ロール紙やインク代を節約し、年間450万円程度の削減を図っている。
公開情報が少ない中で、アルディとリドルを20年以上視察し、取り入れられることは仮説検証を繰り返して採用してきた。今回は単純化の事例を中心に紹介したが、単純化した作業を全店で徹底させるためには、わかりやすいマニュアルが必要となる。
作る側の「あれもこれも伝えたい」という考えをそのままマニュアルに落とし込むと、見る人が欲しい情報を見つけられない「マニュアルのGMS化」が起こってしまう。一方、渥美先生に紹介いただいたアメリカ企業のマニュアルは、見たい人が、タイムリーに、何をしなければならないかが、直感的にわかりやすく表現されている。
これは、当社で活用しているスタディストの画像・動画を活用したマニュアルツール「Teachme Biz(ティーチミー・ビズ)」の思想と通ずるものを感じた。導入当初から、16,000時間の教育時間の削減効果は生まれているが、渥美様にお見せいただいた海外事例から、さらに自社のマニュアルの使い方を改善できるヒントを得られた。
これからも、1円でも安く売れるサプライチェーンづくりのために、単純化、徹底化、標準化を進めることで、ハード・ディスカウントストア、リミテッド・アソートメント・ストアを日本で浸透させ、お客様に貢献していきたい。
ビジュアルベースでわかりやすく、業務標準化に導くマニュアル作成・共有システム「Teachme Biz」についてはこちらから
プログラムの詳細
下記画像リンクから、もうひとつのプログラムの詳細をご覧いただけます。
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