ポリエステル繊維で緑化?古着リサイクルの先行くPLUS∞GREEN PROJECTの未来像
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年3月19日 20時55分
繊維専門商社のスタイレム瀧定大阪(大阪府/瀧隆太社長)が推進するサステナビリティの取り組み「PLUS∞GREEN PROJECT(プラスグリーンプロジェクト)」が着実に広がりつつある。2021年2月にスタートした同プロジェクト。従来廃棄される衣類などのポリエステル繊維を培地としてリサイクルし、緑化につなげるという取り組みだ。古着や繊維リサイクルの上を行く、地球そのものの再生に貢献するアクション。同プロジェクトでマーケティング役を担う同社R&D部 R&D室の坂本和也氏に、現状や展望を聞いた。
古着リサイクルの先を行く、化繊から緑を生み出す取り組み
テキスタイル事業では国内市場でトップシェアを誇るスタイレム瀧定大阪にとって、廃材処理は重要なテーマの一つ。企業の責務としての廃材処理をより社会的な価値ともリンクさせ、社会を巻き込むムーブメントにできないものかーー。大量生産大量消費の時代が一区切りした昨今、このテーマを繊維専門商社の一営業社員として、考え続けていた一人がR&D部 R&D室の坂本和也氏だ。
「繊維専門商社として、社会的価値の創造と経済的価値の創造の両立を目指そうとする中で、特に取り扱いの多いポリエステル繊維に着目。サステナビリティの取り組みへ発展できないかと検討している際に、ポリエステル繊維リサイクル培地を開発製造している企業と出会い、プラスグリーンプロジェクトを立ち上げることになった」と同プロジェクトをけん引する坂本氏は発足のいきさつを説明する。
ポリエステルは、主に石油など化学的に合成された原料のみでつくられる合成繊維。ペットボトルの原料として知られるように、環境汚染につながる象徴といえる素材の一つだ。アパレルではフリースに活用されることでも知られ、リサイクルも積極的に行われている。
誰もが持続可能な社会の創生に関心が持てるように
同プロジェクトは、そうした状況下で、廃棄するポリエステル繊維の再利用に留まらず、緑を創出することでCo2削減も実現する、まさに地球環境をクリーンにする取り組みとなる。より深く環境問題に踏み込んだ理由を「普段着用している衣料品などを廃棄するという概念を捨て、循環させ、緑を増やすことで、環境に良い活動をより多くの人々が感じるきっかけになればという願いを込めている」と坂本氏は力説する。
古着の再利用に協力することが、地球の緑化につながる。もともと環境問題への意識が高い消費者はもちろん、自分の活動の結果が具体的でわかりやすいため、より多くの人が賛同しやすい。廃材利用にも真摯に取り組み、試行錯誤を繰り返してきた同社だからこその練り上げられたストーリーだ。そして、忘れてはならないのが、同プロジェクトで製造開発を担う、アースコンシャスとの出会い。
ポリエステルから“人工土”を生み出した企業との出会い
アースコンシャスは、ポリエステル繊維リサイクル培地の生みの親。屋上緑化や園芸用培地などの製造開発をしており、環境問題にも積極的に取り組んでいる。
ポリエステル繊維リサイクル培地は、リサイクル資源のポリエステル繊維に保肥性を高める人工ゼオライト、各種土壌改良材を特殊混合した人工培地。安全性に問題がないことは、同プロジェクトで研究を担う近畿大学が調査済みで、施設園芸ではイチゴ・トマト・豆などの果菜類や洋ラン・アンスリウム・バラなどの花卉類の培地として高い評価を得ている。
また近畿大学は、東日本大震災以降、福島県の土壌汚染の風評被害を払拭すべく、ポリエステル繊維リサイクル培地を用いた栽培法を共有してきた。
ポリエステルの再利用から環境にやさしい未来を
スタイレム瀧定大阪は、このポリエステル繊維リサイクル培地を「TUTTIⓇ」としてブランディング。プロジェクトの象徴的な存在として、市場に展開している。
「ブランド名は、オーケストラのメンバーが全員で合奏するという意味のTUTTI(トゥッティ)からつけた。ブランドロゴのリピート記号(:II)には、資源を大切に循環させていきたいという思いを込めている。オーケストラの合奏がすばらしい音楽を生み出すように、多くの人がこの循環に参加することで、環境にやさしい未来につながっていく」と坂本氏。
ポリエステル繊維リサイクル培地「TUTTIⓇ」のポテンシャル
土に代わるといっても、重さは約5分の一ほど。経年劣化しにくく、虫も発生しにくいため、室内栽培に適しており(無機肥料使用の場合)、扱いやすさにすぐれる。同製品は現在、自社ECのほか、竹中庭園緑化のショップや公式オンラインショップ、アパレル企業バロックジャパンリミテッドのショップ「SHEL’TTER GREEN」などでも販売されており、手軽に入手できる。
ただし、あくまでも無機的な人口土であり、微生物を含んだ自然の土とは異なる。「オーガニックではないという声もあるのは事実だが、リサイクルという別の視点で考えてほしい」と坂本氏は話す。
同プロジェクトでは、反毛と呼ばれる綿の状態に戻してから再利用されており、TUTTI販売の他、TUTTIを活用したレンタルグリーン、ポリエステル繊維を活用したボードの販売、TUTTIで育てた植物から製造した製品の販売などで横展開しつつ、ビジネス面での可能性も追求する。
持続可能な社会をより一般的に
「持続可能」をキーワードに、世の中の潮流もリサイクル推進へと傾きつつある。一方で、そうした取り組みが、一般消費者へまで広く、深く浸透するものになっているかというと、微妙なのが現状だ。
「このプロジェクトをきっかけに共働、共創が広まって欲しいし、そうでないと本当の意味の広がりにはなっていかない。すでにいくつかの企業との共働、共創も実現しており、問い合わせも増えている。そうした『点』がつながっていくことで世の中から廃材が減り、新たな価値が付いた製品が広がっていくことで一般消費者のマインドが底上げされてくれれば、プロジェクトの意義もある」と坂本氏。
古着や廃材から緑が生まれ、地球がクリーンになる。そんなロマンあふれるスト―リーに、一消費者や企業が登場人物として加わり、その輪がどんどん広がっていくーー。ハッピーエンドしか想像できない、サステナブルな取り組みとしては秀逸なシナリオだけに、しっかりと社会に根付いてほしいものだ。
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