食品スーパーから発信するSDGs、ロカボで誰もが健康に暮らせる社会をめざす
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年2月22日 0時30分
健康志向を背景に、「おいしく楽しく適正糖質」をモットーとする「ロカボ」の認知が進んでいる。そうしたなか、ロカボの普及に取り組む一般社団法人 食・楽・健康協会では、新たな切り口での取り組みもスタートさせた。めざすのは、誰もが健康に暮らせる社会。それは、スーパーから発信するSDGsだ。
「おいしく楽しく適正糖質」をモットーとするロカボ
血糖値を上げる原因といわれる糖質に着目し、適正な糖質摂取を心がけることで血糖値上昇を抑え、疾病のみならず未病の解決をもめざす食事法「ロカボ」。提唱するのは、北里研究所病院 副院長・糖尿病センター長の山田悟氏だ。
「1食当たりの糖質を20~40gに抑えたものを3食と、これとは別に1日10gの間食を楽しむ。つまり、1日当たりの糖質量を70~130gにコントロールする食事法です。やみくもに糖質をカットするのではなく、少ない糖質の中でどう食事を楽しむか。工夫をしながら、おいしく楽しく適正糖質をとることがロカボです」(山田氏)
こうしたロカボの考え方を広く普及させようと、山田氏が2013年に設立したのが一般社団法人 食・楽・健康協会(以下、食・楽・健康協会)だ。ロカボの考え方に賛同する企業はロカボパートナーとして同協会に加盟し、糖質をコントロールできるロカボ商品を次々と開発している。それらを認識して購入できるように、16年にはロカボマークが生まれ、21年には新基準としてロカボプラスマークも誕生した。
ロカボプラスマークとは、適正糖質と合わせて、人間が健康に生きるうえで必要な栄養素の補給もきちんと意識してもらいたいという思いから山田氏らが考案したものだ。従来のロカボマークで規定された糖質量の条件に加え、たんぱく質や食物繊維の含有量など、5つの条件のうち1つ以上を果たした商品のみに付与される。それゆえ、ロカボプラスマークの商品を選べば、糖質を抑えながら、不足しがちなたんぱく質や油脂、食物繊維も取れるというわけだ。
この新基準に認定された初の商品が、マツキヨココカラ&カンパニー(東京都/松本清雄社長)のオリジナルヘルスケアブランド「matsukiyo LAB」から展開する、持続可能な低糖質ライフをサポートする「サステナブルロカボライン」だ。おいしさと低糖質を両立させながら、さらにたんぱく質や食物繊維なども摂取できるため、21年9月の発売以来、着実にファンを増やしている。当初は、間食カテゴリーで展開していたが、22年秋には主食カテゴリーのオートミールやおかゆも登場。低糖質ライフでも炭水化物の欲求を満たせると好評だ。
多彩なカテゴリーで出現する
ロカボプラス認証の商品
現在、ロカボプラス認証の商品は、さまざまなカテゴリーで誕生している。たとえば、成城石井(神奈川県横浜市/原昭彦社長)が22年4月よりオンラインショップ限定で発売する冷凍弁当「成城石井やまだ式ロカボBento」もその一つ。主食・主菜・副菜2品をワンプレートディッシュのお弁当にしたもので、山田氏が1食当たりの糖質量とたんぱく質量を、味は同社のセントラルキッチンのシェフが監修している。低糖質でありながら、たんぱく質を20g以上含み、味も量も満足感のある仕上がりを実現。さらに、冷凍状態で宅配されるため、ストックしておいて食べたい時に電子レンジで温めるだけで喫食できる。それゆえ、健康志向のユーザーだけでなく、仕事や家事、子育てなどで忙しい生活者にも便利でおいしいと話題を呼んでいる。
また、すき家(東京都/笹川直樹社長)が展開する牛丼チェーン店「すき家」では、22年10月より外食業界初となるロカボプラス認証を受けた「お食事サラダ」2品を販売開始した。その名のとおり、食事になるサラダとして、ワンプレートで満足感と満腹感が得られる商品だ。レタスやブロッコリーなど6種類の野菜に、十六穀米や自家製ベーコンをトッピング。メーン食材は牛肉とチキンの2種類から選べる。いずれも糖質量を抑えながら、たんぱく質も摂取できるのが特長だ。
「健康増進のための食事というと、『おいしくない』『続かない』と思われがちですが、これらの商品は『おいしさと健康はトレードオフ』というイメージを覆しています。おいしいものを我慢せずに、糖質制限を楽しく続けてほしいというわれわれの願いを叶えたもので、ロカボライフを実践するうえで有効な商品といえるでしょう」(山田氏)
料理人とアスリート、新たな切り口でロカボを普及
ロカボの認知が進むなか、食・楽・健康協会ではよりいっそうロカボを普及させるために、新たな切り口での取り組みをスタートさせた。
まずは、料理人と医師が連携することで美食と健康を両立するレストランダイニングをめざすプロジェクト「レキペ アカデミア」だ。
「料理のレシピと医療の処方せんの語源は、実は同じラテン語の『調合』を意味する『レキペ』です。料理人と医師が協力して医食同源を進化させ、新たな美食の世界をつくりたい。そう考えて、『レキペ アカデミア』を立ち上げました」(山田氏)
山田氏の思いに賛同するのは、里山料理のジャンルを築いた第一人者として知られる北沢正和氏ら国内外で名を馳せる料理人たちだ。科学的根拠に基づいた美食を提供することで、料理をつくる人も食べる人も健康になり、医療費削減を実現していく。それがレストランの新たな社会貢献だと山田氏は力を込める。今後は、料理人を対象とした勉強会を開催するほか、旬のものを楽しみながら健康になるという取り組みを、地域と協業しながら実現し、ヘルシーツーリズムにもつなげていく考えだ。
また、アスリートやビジネスパーソンのパフォーマンス向上のために、食後高血糖の啓蒙活動にも積極的に取り組んでいく。
「さまざまな疾病の根底にあるのは食後高血糖です。血糖の上下動が大きければ大きいほど、脳にも筋肉にも悪影響を与えるので、食後高血糖を予防すれば、集中力が途切れることなく、パフォーマンスの最大化が期待できるのです」(山田氏)
ロカボで医療費削減、めざすのは三方よしの社会
ロカボを提唱する山田氏らがめざすのは、おいしく楽しく食べて健康になる社会だ。
「薬に頼るのではなく、食べることで健康になる。それは、ロカボライフを実践すれば可能なことです」(山田氏)
実際、図表①に示すように、白米のみの食事に比べ、白米のほかに木綿豆腐、ゆで卵、マヨネーズ、ほうれん草、ブロッコリーと多種多彩に食べたほうが食後の血糖値は上がらない。糖質さえ控えていれば、アルコールであろうと、デザートであろうと、カロリーを気にする必要はない。
食後血糖値を上げにくくする商品を企業がつくり、それを消費者にとって身近な食品スーパーで売ることで、食べた人が健康になっていく。それは医療費削減につながり、スーパーの売上拡大ももたらす。これぞ売り手も買い手も世の中も幸せになる、三方よしの社会と山田氏は言う。
「今、世界ではSDGsの達成に向けてさまざまな取り組みが加速していますが、ロカボもその一つだととらえています。ロカボライフを実践することで、SDGsの目標3である『誰もが健康で幸せな生活を送れる』ことを達成できる。そう考える私たちは、スーパーから健康な世の中をつくっていきたいと考えています」(山田氏)
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