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100万アイテムを揃えるホームデポが、SEO対策でキーワードを集めた画期的な方法とは

ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2023年3月5日 20時55分

(i-stock/phillyskater)

SEO対策で重要な「キーワード」の設定

ホームデポ
(i-stock/phillyskater)

 EC(電子商取引)を利用する多くのお客は、「Google」(グーグル)や「Yahoo!」(ヤフー)などの検索エンジンを使い、どこかのサイト(=企業、店舗、商品)にたどり着くという購買行動を取る。 

 そこで多くのサイトは、サーチエンジン・オプティマイゼーション(SEO)対策を実施している。SEO対策とは、お客が「キーワード」を打ち込んだ時に、検索エンジンの検索結果上位に自社のサイトが表示されるようにする、というものだ。

 SEO対策で大事なことは、「キーワード」の設定だ。自社と自社の店舗、自社で取り扱う商品(サービス)を連想させる「キーワード」をお客に打ちこんでもらえなければ、この機能自体が無意味になるからだ。

 この課題を解決するために、米国では2000年代後半から2010年代前半にかけて、多くの企業は、社内に辞書を抱えていった。

 どういう「キーワード」で自社が展開する商品(サービス)を探しに来てもらえるのかを予想して、まずはとにかく思いつくままに書き出していく。ポイントは単語を膨大に集めることだ。

「キーワード」は、自社の取扱商品(サービス)の増加や時間軸で変わっていく可能性があるから、随時、メンテナンスをしてアップデートしなければいけない。

 そしてメタタグにいろいろな「キーワード」を入れたり、URLを少し工夫したり、検索エンジン企業の算法(アルゴリズム)を予想しながら、サイトのアクセス数を上げることに専心した。 

 しかし、世界最大のホームセンター企業ホームデポは、2000年にECサイトを立ち上げ、周囲企業のSEO対策が本格化していく中でも、上記の「キーワード」収集方法を実践しなかった。

 その理由はなぜか、そして、代わりにどんな手法を使っただろうのか?

100万を超える品揃え、膨大なキーワード 

 なぜなのか、を説明する前に、少しホームデポについて記しておきたい。

 ホームデポは、全米(プエルトリコ、米領バージン諸島を含む)、カナダ、メキシコなどに約2300店舗を展開するホームセンター企業である。平均売場面積は、約9500㎡(+ガーデン売場約2000㎡)で、ここに4万アイテムを揃える。それに加えてネット販売では、約100万アイテムを展開すると言われている。 

 ホームデポが扱う商材は、家電(Appliances)、バス(Bath)、建築資材(Building Materials)、装飾(Decor)、ドアと窓(Doors & Windows)、電気(Electrical)、フローリング(Flooring)、キッチン(Kitchen)、照明&天井ファン(Lighting & Ceiling Fans)、木材&複合材(Lumber & Composites)、アウトドア(Outdoors)、ペンキ(Paint)、配管(Plumbing)、ストレージ&オーガニゼーション(Storage & Organization)道具&ハードウエア(Tools & Hardware)――と実に幅広い。 

 しかも、それらの商品をDIYDo it yourself:購入して自分で取り付け)はもちろん、BIYBuy it yourself:購入して取り付けは業者)やSIYSupervise it yourself:商品選択も取り付けも業者)など多岐にわたる手法で販売している。 

 つまり、これらを組み合わせた商品や工事を含むサービスがホームデポの売り物であり、それぞれのカテゴリーや商品を浮かび上がらせる「キーワード」は莫大な量に上り、それらを設定するには、大変な労力を要してしまうことがわかる。 

 たとえば、「自宅の床をタイルに張り替え、床暖房を入れる」という工事をしたいお客を想定した場合は、「床 タイル 床暖房」の「キーワード」くらいはすぐに思いつくかもしれない。しかし、実際のお客は、想定内に収まるほど単純ではない。

 逆に可能な限り、お客を先回りする「キーワード」を用意しておけば、ECでは同業他社に対して優位性を保てる。

 「赤壁の戦い」思い出させる、
ホームデポのキーワード収集方法

 ではホームデポはいったい、いかにして「キーワード」を集めたのか?

 実は、同社のホームページ(HP)内に検索エンジンを設けただけだった。いまとなっては当たり前のことかもしれない。

 HP内の検索エンジンの活用でお客は、自分が必要とする商品を比較的簡単に探し出すことができるようになる。

 一方のホームデポは、HP内の検索エンジンを「キーワード」の収集に使った。

 結果として、自動的に辞書ができ上がるという寸法だ。

 まさに一石二鳥である。

 そして、集めた単語集の中で、もっとも利用頻度の高いワードから順に並べ替え、「キーワード」に引っ掛かるようなURLサイトをつくり、それをグーグルやヤフーのような検索エンジンのSEOを活用することで上位に浮上させている。

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 たったこれだけのことで、ホームデポの社員は呻吟して「キーワード」を捻り出したり、上位に来るものを予想したりしなくてもよい、という仕組みをつくりあげていったのである。

 この話を書きながら、思い出したのは、『三国志演義』の中に登場する諸葛亮孔明(以下、孔明)にまつわる有名なエピソードである。

 当時、三国の中で優勢を誇った曹操の率いる「魏」に対抗すべく、劉備の「蜀」は、孫権の「呉」との合従連衡を模索する。

 その交渉のために「呉」を訪れることになった「蜀」の軍師、孔明に対して、「呉」の軍師周瑜は無理難題を吹っかけ、踏み絵をさせる。

 周瑜は、同盟を組むことを決めながらも、孔明の並外れた知力を恐れ、ことあるごとに暗殺を試みることになる。

 その最たるが「10日後までに10万本の矢を用意してくれ」という命令に近い要望だ。

 国民の安定した生活さえままならない貧国の「蜀」にとって、それらを用意する資金はなく、まして調達するまでには相当の時間がかかる。

 ところが孔明は、「3日以内に集めましょう」とこれを受諾してしまう。

 さて、孔明は何をしたのか?

 夜の深い霧に乗じて藁人形を乗せた軍船20隻を対峙する曹操軍に向け動かし、陰に隠れた兵士たちを騒がせ、大軍襲来を装った。

 これに慌てた曹操軍は、ただ闇雲に軍船目がけて矢を打ち放つ。

 孔明は曹操軍の矢が1隻当たり相当数当たった辺りを見計らって撤退を命じた。帰還後、藁人形に突き刺さった矢の数を数えると、その数は10万本超。なんと、孔明は、一夜にして10万本の矢を用意してしまったのである。

 相手(=お客)から武器(=情報)を奪い、自軍の武器(=情報)にするという孔明の策略――。

 そんな故事を知らずとも、同じことをいとも簡単にやってのけているホームデポ――。

  さてさて、同社についてさらに詳しく知りたい方は、2023111日発売の『史上最強のホームセンター 常識破りのホームデポ経営戦略』(電子書籍のみ:ダイヤモンド社刊、3080円〈税込〉)をお読みください!

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