落日のGMS終章 分社化にGMSの活路はあるか
ダイヤモンド・チェーンストア オンライン / 2019年7月7日 20時0分
総合スーパー(GMS)は今後、どんな姿に変わっていくのだろうか。今のところ、大手GMS各社は商品分野ごと、あるいは地域単位での分社化に動いており、新しいGMSの運営形態を模索している。果たしてGMSの“決定版”をみつけられる企業はどこか――。
「あれもこれもマネージしていくのはハンデ」
「衣料品や住居余暇については、商販一体型の専門会社を設立する準備をしていきたい」
イオン(千葉県)の岡田元也社長は、主力事業であるイオンリテール(千葉県/井出武美社長)の改革について、そのように説明する。
これまでもイオンは、自転車専門店の「イオンバイク」、靴専門店の「ジーフット」、ペット用品の専門店「イオンペット」などをそれぞれ分社化し、イオンリテールが運営するGMS内に出店してきた。
今後はこの戦略をより力強く推し進めていく考えで、2020年以降、20程度の商品分野の機能を分社化する。岡田社長は「一つの屋根(GMS)の中で、あれもこれもマネージしていくのはハンデがある」と指摘。イオンリテールからスピンアウトした「専門店集団」がGMS非食品売場の一角を形成するかたちに改める。
分社化した専門店企業は、収益管理から出店や退店の判断、商品開発までの責任を持つ。岡田社長がかねてより志向してきた、商品分野ごとの「製造小売業(SPA)化」に向けて動き出したことになる。
商品分野ごとの分社化に活路はあるか
イオンと同様に、商品部門を切り分けて分社化する方針を打ち出したのはイズミヤ(大阪府/四條晴也社長)である。親会社であるエイチ・ツー・オーリテイング(大阪府/鈴木篤社長)は、2020年度にイズミヤを食品部門・非食品部門・プロパティマネジメント部門に分割し、GMS事業モデルを転換する方針を発表している。
非食品部門の中でも購買頻度の高い日用品は、ドラッグストア大手のココカラファイン(神奈川県/塚本厚志社長)と合弁会社を立ち上げる。分割した事業会社の1つが運営する商業施設に、合弁会社がテナント出店する格好だ。中国・九州地盤のGMS企業であるイズミ(広島県/山西泰明社長)に近いモデルになるとみられている。
イオンとイズミヤの2社に共通するのは、総合を“再定義”しようとしている点だ。イオンは各商品分野の専門店を自前で育成し、「GMSを分けるという考え方」(岡田社長)を進める。イズミヤも自社でデベロッパー部門を持ち、非食品売場には地域に合ったテナントを導入する。
確かに、現在のように有力専門店が数多あり、垣根を超えた競争が激しくなるなかで、は、非食品カテゴリーすべてを本部でコントロールするのは非効率であり、競争力の確保も難しい。
次ページは
GMSはドミナントに回帰する?
GMSは「ドミナント回帰」に向かうか?
ただその一方で、6月27日に公開されたダイヤモンドオンラインの記事によれば、「イトーヨーカ堂(東京都/三枝富博社長)は地方にある店舗を分社化させ、それら地域会社と各地域の有力スーパーを資本提携させる計画が進んでいる」という。首都圏のドミナント(地域集中出店)体制を強化すべく、地方店の整理・見直しを進めるというわけだ。
GMS各社はかつて、出店競争のなかで全国へと店舗網を広げた。しかし、現在ではショッピングモールを全国展開するイオン以外の企業は、ドミナントへの回帰を進めているようにもみえる。一旦身を縮め、ドミナントの守りを固めた方が効率的という考え方だろうか。
しかし、「今流のGMS」(食品スーパー首脳)と言われるパン・パシフィック・インターナショナルホールディングス(東京都/大原孝治社長)傘下のドン・キホーテ(同)は、逆に店舗網を全国に広げている。大原孝治社長は「(ドン・キホーテは)まだまだ出店余地がある」と話しており、出店意欲は未だ旺盛だ。
大手GMSの改革はまだ模索状態だが、衣食住を扱うドンキの例をあげるまでもなく、消費者にとって“総合の品揃え”はまだ終わっていないのは確かだろう。本当の改革は、地域や器だけではなく、改めて消費者が求める商品や価格、売り方とは何かを突き詰めていくことにあるのではないだろうか。
外部リンク
この記事に関連するニュース
-
一番人気の「かつ重」は300円未満! スーパー・トライアルが物価高時代に「安さ」で勝負できるワケ
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月22日 6時10分
-
ダイエー、イトーヨーカ堂…日本の小売りを支えた都市型総合スーパーが衰退した理由
日刊ゲンダイDIGITAL / 2024年11月14日 9時26分
-
平和堂 「東南にドミナント拡大へ」平松社長 愛知・知多で中核店オープン
食品新聞 / 2024年11月8日 16時4分
-
「ビブレ」「サティ」はどこへ消えた?“愚策”だった「マイカルタウン」の新規出店攻勢
日刊SPA! / 2024年11月2日 8時53分
-
新業態を模索する近畿小売業 域外にも積極出店 オーケー進出で風雲急告げる
食品新聞 / 2024年10月30日 13時5分
ランキング
-
1サンリオ株、三菱UFJや三井住友銀などが売却 約1335億円
ロイター / 2024年11月26日 16時58分
-
2「牛丼500円時代」の幕開け なぜ吉野家は減速し、すき家が独走したのか
ITmedia ビジネスオンライン / 2024年11月26日 8時10分
-
3【新NISA】50~60代から投資を始めるのは遅い?…メガバンク出身YouTuberが月1,000円ずつ投資した3つの銘柄「たった2年」で驚きの結果
THE GOLD ONLINE(ゴールドオンライン) / 2024年11月26日 9時15分
-
4激混み国道23号と1号を“直結” 桑名の川沿いを行く新道開通 たった720mでも「かなり便利じゃないかコレ…!?」
乗りものニュース / 2024年11月25日 7時42分
-
5「会社がつらい」同期トップ入社の彼に起こった事 「発達障害グレーゾーン」の人たちの特徴とは?
東洋経済オンライン / 2024年11月26日 14時0分
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
記事ミッション中・・・
記事にリアクションする
エラーが発生しました
ページを再読み込みして
ください